この日、月、火曜日にかけて、カンファレンスに参加してきました。カンファレンスの内容はHigher Educationにおける Data Warehouseに関するカンファレンスで、非常に勉強になりました。


Data Warehouseとは一言で言えば、Decision-makingに役立つデータベース、みたいな意味が一番近いと思うのですが、今、アメリカの、とくに日本でも名前が知られているような大学がこのData Warehouseをここ数年で持ち始めてきました。


これだけだと意味がつかみにくいかもしれないので、例を出しますと、


例えばあなたが入試課で働いているとします。入試が迫って来ている時期だとします。学長から次の質問が来ました。あなたは以下の質問のうち、どれだけ答えられますか?


1.今現在、大学全体として、どれだけ出願書が届いているか?学部別、学科別では?出身の県、高校別では?性別、年齢は?高校3年間の成績別では?複数の学部を出願している人は何人いるか?等々


2.1の質問に関連して、去年と比べて、今年は何か変化が見られているか?


3.1の質問に関連して、過去5年間で、今年は変化は見られているか?


4.過去5年間の同じ日と比較して、何か変化が見られているか?


5.1の質問に関連して、入試日まで30日間の出願状況の推移に関して、過去5年間で何か変化は見られるか?


さて、ここで問題となるのが、これらの疑問にどれだけ答えられるか、ではなく、どれだけ早く答えられるかがポイントです。


① 5つの問いに答えることが出来ない


もし、これらの質問に答えられない場合、その大学はアメリカではまずやっていけません。いわゆる論外の範疇に入ります。


② 5つの問いに答えるのに1週間かそれ以上かかる


この場合は、アメリカの大学でもあまりいけていない大学の部類になります。


③ 5つの問いに答えるのに1日ー2日かかる


この場合は、まあ普通の、そこそこの大学かなという感じです。


④ 5つの問いに対してすぐに答えられる


この場合は、Administrationが結構しっかりしている大学かな、という気がします。ちなみにコミュニティカレッジで働いていた時、毎朝これを首脳陣に報告するのが僕のオフィスの役割の一つでした。


アメリカの大学には大抵 Institutional Research という部署があります。この部署では、大学のデータを管理していて、大学に関するデータを調査します。だからアメリカだと、上記のような質問は入試課ではなく、Institutional Researchにいきます。アメリカのほとんどの大学はInstitutional Research を持っています。


それで、肝心のData Warehosueですが、これが何を意味するかというと、


⑤ 学長が質問をする必要がない


つまり、学長が上記の質問に対して、自分でインターネットでData warehouseにアクセスして、一瞬にしてすぐわかる、ということです。いわゆる業界用語でこのシステムをDashboardといいます。


つまりData Warehouseとは、ただのデータを集積したデータベースではなく、首脳陣が知りたいような最新の情報を瞬時に取得できることを目的にカスタマイズされたデータベースのことです。そしてData Warehouseのユーザーは、首脳陣に限る必要はありません。例えば、入試課で働く人たちも、入試関連の情報、例えば上記のような質問に対しても、Data Warehouseによって、瞬時に答えられる、なんてことも可能なわけです。


Data Warehouseの概念は、ビジネスの世界から来たものです。Business Inteligenceという言葉を聞いたことがあるかも知りませんが、それをHigher Educationが模倣しはじめたのが90年代の中ごろくらいからになります。


Data Warehouseは、確実に意思決定の速度を加速し、また学内における情報公開度が一気に高める可能性を秘めています。大学のアドミニストレーションの質が大学の質を決める、といいますが、今後は、いかに各大学が質の高いData Warehouseを持つかが、今後の大学界の展開の鍵を握っていくような気がします。そのためには、IT部門をアウトソーシングするのではなく、やはり大学内に強力なIT部門を持つ必要があるように個人的に思います。特に世界的な大学を目指すのであれば、IT部門を強化することは必須です。


アメリカの強い大学というのはこのIT部門が非常に強いと思います。例えば学生規模が約1万人のある私立大学には、IT部門だけで約500人のスタッフがいるとのことでした。もちろん、多ければいいというわけではないし、とにかくお金がかかるのがIT部門なので、難しい問題です。


ともあれ、Data Warehouse、奥が深そうです。まだまだ素人なので、沢山勉強することがありますが、今後の展開に目が離せません。