ここ数日教授に関する話をしてきましたが、今日は、さらに教授の終身雇用についての話をしたいと思います。おそらく日本でも同じだと思いますが、ひょっとしたら違うかもしれないので・・・。


まず、教授にも様々なランクがあることは、大学関係者なら知っているかと思います。アメリカでは、一番上のランクが「Professor」、full-professor, とも呼ばれます。次のランクが、「Associate」、そしてその下に「Assistant」が来ます。大学によっては、その下のランクとして「lecturer」というポジションもあります。そして、ランク外に位置するのは非常勤講師としての、Adjunt Facultyです。


終身雇用のことをテニュア(Tenure)」というのですが、このテニュアがもらえるのは、2番目のランクのAssociate Professor になった時です。故に、その一つしたのランクのAssistant Professor である間は、実は終身雇用ではありません。


Ph.Dをとり終えた人が、仕事をうまく見つけて、最初に就任するのがAssistant Professorなわけですが、その時にまずそのポジションが Tenure-track か、Non-tenure Track かによって分かれてきます。Non-tenure Trackのポジションの場合は、その後の昇進はありません。


うまく、Tenure-track の Assistant professor に就任した場合、大体契約は3年から7年になります。そして契約が切れる直前に上司から、契約を更新するかどうかを言い渡されるのですが、ここが天国と地獄の分かれ目になります。もし、契約更新となったら、無事Associateに就任で、テニュア獲得です。しかし、契約更新されなかった場合、それはAssociateになれないだけでなく、今後Facultyとしての道が絶たれることを意味します。というのは、テニュア取得に失敗したというのは、今度どこへ行こうが付きまとうわけだし、まずその人が再び Assistant Professor として別の大学に採用されるなんて言うことはまずありえないわけです。


契約更新するための基準は、大学によって様々です。コミュニティカレッジの場合は、Teachingのみで判断されますが、これがいわゆる有名大学、特に研究大学になると、Assistant Professorは、さらに様々なことを要求されます。


例えば、これは僕のいたミネソタ大学のCollege of Educationの話ですが、Assistant Professorは、5年間の契約期間内に、15の論文が、その分野で権威のある雑誌に掲載されないといけないという暗黙のルールがあるそうです。そして、それにプラスTeaching、そしてアメリカの大学は教授に社会貢献ということも要求します。もっともこの社会貢献というのは、定義が曖昧であり、実際そこまで重視はされてませんが。


この15の論文掲載、理系の人から見ると大したことないかもしれませんが、教育系の論文というのは、理系と違って小刻みに論文を発表し続けるということが難しい分野です。博士論文15個分を5年間で、といった方が分かりやすいかもしれません。もっとも、共著もありだし、様々抜け道はありますが。学生が大学院で教授を選ぶ時、Assistant Professor を自分の担当教員に選ばないほうがいい、といわれるのは、Assistant Professorは、自分の実績を残すのに必死で、そのあまり、自分の学生の成果まで奪ってしまう、という話が少なからずあるからです。


ところで、アメリカの大学で契約更新をするという決定権は、学科長、や学部長が握っているわけですが、それと同時に、学生の評価、そして同僚の評価が加わります(もちろん職員はありませんが)。様々な角度から評価を受けるわけなので、Assistant Professor はそれは必死なわけです。人生かかってますから。たまに、理系以外の分野でも日本人の方で、アメリカの大学で教授をやられている方がいらっしゃいますが、本当にすごいと思います。


日本では一体どうなのでしょうか?もし知っていらっしゃる方がいるようであれば、教えていただきたいと思います。



・・・ランキング を見る。