高野 秀行
ミャンマーの柳生一族
彼女さんが好きな高野氏の最新刊。先日U氏と待ち合わせしているときに買った。
すぐさま読み終える。今回は文体がいつになく軽い気がする。

前回のビルマ・アヘン王国潜入記では、名前がタ・パンとかサイ・パオとか
ややこしくて誰が誰だかわからないという自体が発生した。

ミャンマーの軍事政権を江戸時代の徳川幕府にたとえ、
憲兵+情報機関を柳生、裏柳生にたとえている。
それに伴い、各登場人物も「家康」だとか「千姫」だとかあだ名がつく。
一気に身近になり、なるほどなるほど、と読めてしまう。
なぜか登場人物の想像図がちょんまげ頭になってしまうのが難点だ。

椎名誠も「ワニ眼」だとか「陰気な」とか登場人物にあだ名をつけることで
登場人物の個性の中心が一気に固まる。また、あだ名のつけ方もうまい。
その椎名誠が解説を書いているのもおもしろい。

内容面での感想は、軍事政権だからといって、必ずしも悲惨な暮らしをしているわけではない
のを感じた。江戸時代を例えに出しているから類推してしまったということも多少はある。

 今までは軍事独裁政権というと、生活物資はいきわたらず、教育も受けられず、町は失業者にあふれ、軍部の乱暴に市民は恐怖するというような悲惨悲惨というイメージがあった。しかし、本の中では何か牧歌的な空気が流れている。
 もちろん緊迫した側面もあるのだが、政府にかかわらず、市民は市民で元気に生きているのだな、という空気を感じた。

 読んでよかったと思える本だった。