二週間ご無沙汰しておりました。先ずはこのニュース、避けては通れない、先日の令和8年熊本地震で被害に遭われ、今も余震などで不憫な生活を強いられている皆様へ、遠くから祈ることしかできませんが、心よりお見舞い申し上げます。
熊本地震 災害関連死の疑い含めて39人死亡 避難所に6332人避難
本編に戻り、このブログでは、発達特性と生活ログの関係を軸に記録しています。
発達特性と生活ログについて(このブログの趣旨説明)
現状の方針として、継続性(体力面など)を今まで以上に最優先、意識して書く意向です。
文字数を減らすなど見せ方の工夫で、体調などと相談しながらなるべく週1目標(今回みたいな多忙期は隔週位)で投稿の意向。
今回は発達特性者の大半がぶち当たるであろう永遠のテーマ「ワーキングメモリ」について。
今回も早速本編へ!
1.ワーキングメモリとは
皆様は「ワーキングメモリ」という言葉を聞いたことあるでしょうか?
簡単に言うと、頭(脳)の中にある「小さなメモ帳(作業台)」のことです。
私たちは「人の話を聞きながらメモを取る」、「段取りを考えながら料理をする」などで、このワーキングメモリをフル活用しています。
しかし、このメモ帳は驚くほど小さく、すぐに文字で溢れ返ってしまいます。
今回は、ワーキングメモリの脆弱さによる困り事、脳に負担をかけない具体的な工夫をまとめました。
2.定型発達者と発達特性者のワーキングメモリの違い
定型発達者と発達特性者のワーキングメモリの違いを以下の表にまとめました。
※ここで示すのは、あくまで筆者自身の経験や発達特性者に見られる傾向を整理した一例であり、すべての人に当てはまるものではありません。
定型発達者
- 長い話を理解できる … 話が長くなっても最後まで聞ける
- 考えながら聞ける … 話の最中に受け応えできる
- 雑音が気にならない … 必要な話に集中し続けられる
発達特性者
- 話が長いと理解できない … 一度に沢山の情報を整理できない
- 気になると思考停止 … 気になったことに気を持っていかれる
- 雑音で聴き取れない … 雑音の方に意識が逸れてしまう
画像の最後の二行については、単純に「聴く力」や「集中力が足りない」という問題ではなく、情報の入り方や処理の仕方にも違いがあります。
環境調整や、伝え方の工夫次第で、聴き取りやすさは大きく変わります。
3.発達特性者にとっての困り事具体例
(1) 真実を知ってしまった衝撃
2017年の初診やWAIS-IV検査の頃、「あなたの脳年齢は80代半ば~後半くらい」と説明されることが繰り返しありました。
(2)日常生活でワーキングメモリがやらなければならないこと
- 聞いたことを一時的に保持しておく
- 複数の指示を頭に置いて順番に処理する
- 割込みが入ったあと元の作業に戻る
- 探し物をしながら別のことを忘れない
- 相手から言われたことを保持したまま別の作業をする
といった場面で、本人の努力だけでは埋めにくい負荷として現れてくる。
そして、それを本人が一番長い時間、毎日の生活の中で経験する。
だから定型発達者から、下記のような心無い言葉を浴びせられることがあります。
- 覚えておけばいい … 物の置き位置が変わった場合、それを覚えておく。
これは「覚える努力をしているかどうか」だけの問題ではない。
例えば、物の置き場所が変わったとする。
定型発達者なら、「いつもと違う場所にあるけど、次からはここに置かれたことを覚えておこう」で済むかもしれない。
ところが、発達特性がある場合、「いつもと違う」という変化そのものが負荷になることがある。
さらに、その日に別の用事や予定変更、家族からの声掛け、探し物などが重なれば、「物の置き場所を覚える」という一つの作業だけに集中できるとは限らない。
「覚えておけばいい」と言われても、覚えるためのワーキングメモリには限界がある。
- 忘れないようにすればいい … いちいち事象ごとにメモせず、流れで覚える。
そうは言われても、流れそのものを保持することが難しい場合がある。
だからこそメモを使うが、何でもメモすればいいわけでもない。
重要な情報と、そうでない情報を区別すること自体が難しいこともある。
つまり、「メモを取るから覚えられなくなる」のではなく、メモを使わなければ保持することが難しいからメモを使っている。」というケースもある。
- 不得意だから逃げるな … 作業を外注したり外食に頼ったりせず、極力DIYや自炊でやる。
自炊、DIY、家事などを経験すること自体が悪いわけではない。
ただ、不得意な作業を限られた時間の中で自力で抱え込むことで、他のことに使えるエネルギーまで消耗してしまう場合がある。
外注や外食、便利な道具を使うことは、必ずしも「逃げ」ではなく、自分の苦手な部分を補い、生活を維持するための手段でもある。
- 記憶力を自分で悪くしている … 何でもメモすると、何が重要なのか埋もれるし、覚える努力をしない。脳が錆びつく。
こうした現実を経験していない人には、その言葉がどれだけ残酷に響くか分かりにくい。
経験していない人からすると、
- 覚えておけばいい
- 忘れないようにすればいい
- 努力すればできる
- 自分でやればいい
という言葉は、もっともな助言に聞こえるかもしれない。
でも、それが難しい側からすると、「できない理由を理解してもらえないまま、できることを前提に努力を求められている」
ように感じることがある。
そうは言われても、発達特性による困りごとは、単純な「努力不足」や「覚える気がない」という話ではない。
「本人なりに努力して、それでも難しいことがある。」
そこを理解してもらえるだけでも、当事者にとっては大きな違いになるのではないでしょうか。
「苦手だから何もしなくていい」という話ではない。
でも、「苦手があることを認めず、努力だけで普通に処理できるはずだと扱う」のも違う。
必要なのは、補助・手順化・物の定位置化・割込みを減らす・余白を確保するなど、苦手があることを前提にし、事故や損失を減らす工夫である。
次の章では、そのための具体的な対策を考えていく。
4.ワーキングメモリの負荷を減らすための対策
ここまで、ワーキングメモリが日常生活の中でどのように使われ、どんな場面で負荷がかかるのかを見てきた。
こうした負荷を少しでも減らすにはどうすればいいのか。
重要なのは、「もっと頑張って覚える」ことだけを対策にしないことだと思う。
ワーキングメモリそのものを努力だけで大きく変えることが難しいのであれば、最初から、
ことを前提に、環境や手順を変える。
(1) 物の定位置を決める
「使った物を元の場所に戻す」というルールを作るだけではなく、そもそも置く場所を固定する。例えば、
- 鍵は必ずここ
- 財布はここ
- 薬はここ
- 書類はここ
- よく使う道具はここ
というように、考えなくても戻せる場所を作る。
「どこに置いたかを覚える」のではなく、「置き場所そのものを変えない」ことで記憶への負荷を減らす。
(2) メモを「記憶の代わり」に使う
忘れないために、すべてを頭の中だけで保持しようとしない。
予定、やること、頼まれたこと、確認事項などは、必要に応じてメモやスマートフォンなどに残す。
ここで大切なのは、メモを「記憶力が悪い人のためのもの」と考えないこと。
頭の中に置いておく情報を外に出すことで、ワーキングメモリを別の作業に使えるようにする。
ただし、何でも記録すると情報が埋もれてしまう。そのため、
- 今すぐやること
- 今日中にやること
- 後で確認すること
など、ある程度分類することも有効になる。
(3) 手順を決めて、毎回同じ流れにする
毎回「次は何をするんだっけ?」と考えること自体が負荷になる。
そこで、よく行う作業は手順を固定する。
例えば家事なら、「洗濯物を集める → 洗濯機を回す → 干す → 取り込む」というように、できるだけ順番を固定する。
仕事でも、同じ種類の作業についてチェックリストや手順書を作っておけば、毎回ゼロから考える必要がなくなる。
覚えることを減らすために、手順を決める。
(4) 割込みを減らす
ワーキングメモリにとって、作業そのものだけでなく、途中で別の情報を入れられることも大きな負荷になる。
そのため、可能であれば、
- 作業中の声掛けを減らす
- 通知を切る
- 一度に複数のことを頼まない
- 急ぎでないことは後回しにする
- 中断した場合は、再開地点をメモする
など、割込みによる「どこまでやっていたか分からない」を減らす工夫をする。
特に最後の「再開地点を残す」は重要である。
割込みが入っても、戻る場所が分かれば、最初から記憶をたどり直す必要がない。
(5) 苦手な作業は「やらない」のではなく「負荷を下げる」
自炊やDIYなど、苦手だからといってすべて避ければいいという話ではない。
しかし、毎回すべてを自力でやる必要もない。
- 便利な道具を使う
- 簡単な方法に変える
- 外食や惣菜を利用する
- 家族や周囲に協力を頼む
- 必要であれば外注する
こうした方法も、生活を維持するための立派な対策である。
「全部自分でやる」ことより、「無理なく継続できる」ことを優先する。
(6) 余白を確保する
そして、個人的に重要なのが「余白」である。
予定をぎっしり詰め込んでしまうと、突然の予定変更や割込みが入っただけで、その後の処理が一気に難しくなる。
だからこそ、「何も起こらない時間」も予定の一部として確保する。
余白があれば、予定変更や探し物、突然の依頼などが発生した場合でも、すべてが連鎖的に崩れることを防ぎやすくなる。
ワーキングメモリの負荷を減らす対策は、「本人がもっと頑張る」だけではない。
- 覚えなくても済むようにする。
- 考えなくても済むようにする。
- 途中で抜けても戻れるようにする。
- 割込みが入っても崩れにくくする。
そうやって、本人が使える認知資源をなるべく守ることも、対策の一つである。
5.まとめ
3章の困り事に対し、4章で対策したとしても、その場ではそれを生かせず終わってしまうことや、最悪の場合、忘れてしまうこともある。
実際、平素の私は、特に日常生活の中で何度も同じミスを繰り返しては注意され、怒られ、削られ続けている。
環境を整えても、突発の依頼や設備の故障、物の紛失など、思いがけない割込みは起きてしまう。
工夫しても、急な予定変更や疲労、睡眠不足などによって処理能力が落ちてしまう場合もある。
現実問題は、思うようにはいかない。それもまた、ありのままの姿である。
結局今回の4章の施策も、決して「万能薬」ではないが、それでも、負荷を少しでも減らしていくことに意味はあると考えています。
「20~30」を「40~50」に、一歩でも近づけるよう、これからも少しずつでも精進していきたいと思います。
それではまた!