菊蔵時代の「日誌」(年間・行事記録)が残されている。戦後間もないころ、戦前を踏襲していた時代の貴重な記録、である。年場である大津浜や磯原における旧暦正月からの御神楽廻りの詳細な記録で、例えば大津西町は水戸藩時代からの名家・西丸家(佐竹公時代にさかのぼる旧家)より始まり実に十数日を過ごしている。今日(こんにち)の伝統の、原点をうかがい知ることが可能な実録であろう。旧水戸藩徳川家御用神楽家元たる足黒神楽を、名実ともに継承してきたことを雄弁に物語る史料に他ならない。