~「画家の婦人」~ポール・セザンヌ 1886年デトロイト美術館所蔵~
美しい話。。。
大好きな作家「原田マハ」さんの小説「デトロイト美術館の奇跡」という作品。
小説のキャプション
「ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。
市の財政破綻の為だった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。
全米で論争が過熱する中、一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えていく・・・」
これだけでワクワクしませんか?
短編小説なので一気に読み進んでいった。
この小説の面白さは実際に読んでいただけると分かるはずだけど、
僕が伝えたいのはそこではなくて、次の一節の「言葉の美しさ」なんだ。
「その日、デトロイト市内は雨に包まれていた。
連日の熱帯夜を少しでも冷ましてくれればいいと、信号待ちをしながら、
ジェフリーはぼんやりと考えていた。
車のワイパーで三秒おきに拭われる街の風景。
通りを走る車はまばらで、舗道を歩く人影もない。」
熱帯夜の夜にむさくるしい雨が降っていたんだね。(うっとうしいよね)
ぼんやり見つめていた街の風景。(かったるく、ぼんやりと外を見つめていたんだろうね)
通りは人影もまばらだった。
といえばそれまでだが、僕が心を奪われたのは、次。
「車のワイパーで三秒おきに拭われる街の風景」といううフレーズ。
めっちゃ、センスある表現だと思う。
三秒おきに街の風景が刻々と刻まれる。
拭われる・・ワイパーだからというより街の風景が刻々と変化しているように思える。
まるでフイルムの一シーンの様に、切り取った街の風景を印象させる。
多分、視覚から入る風景は変わらないが、心の目で見た風景は、三秒おきに刻々と変化している。
と感じた。
原田さんの言葉の力には吸い込まれてしまった。
言葉の一節でも気に入ったら、もうすべてがOK!なんだ。
改めて言葉の力って凄いもんです。
間違いなく芸術には人を感動させる力がある。
加えて、人間は芸術無しでは生きていられない生き物と感じる。
小説から絵画を鑑賞した気分に浸りました。
本作は史実に基づいたフィクションです。
~終わり~