小六の長男が、学校行事の一環として、二泊三日で戸隠へキャンプに行った。


あれもこれも準備しなければと、ひと月近く前から焦る私を横目に、二日前になっても、何も用意する気配のない長男。

夫は、放っておけばいいというが、本当に放っておくと、何も持たずに身一つで行って、3日間着たきりすずめで、出発時の服のまま帰宅してもおかしくない人間だと思っている。


ついにしびれをきらして、私が荷造りを始めた。

山だから、朝晩冷え込むだろうと、かなり厚手の 着替えを準備していたのだが、ここ数日の暑さを考えると、いくら高所とはいえ、やはり、薄着のものも必要かもしれない。鞄にフリースだけが入っていたら、何も考えずにそれを着て、どんなに暑くてもそのまま寝る人間だと思っている。そして脱水にでもなったらどうしようと心配になり、追加で薄着も準備し、熊対策のすずと防犯ベルと、ダニ対策の虫除けも入れて、肌着も半袖と長袖と両方詰め込んだ。


さらに、夜に友達と遊ぶためのカードゲームを見繕う。

六年生にとって難しすぎず、簡単すぎず、盛り上がってかつ、気まずくならないもの。

私のカードゲームコレクションの中から、実際に子供たちにやらせてみて、シミュレーションを重ね、熟考の末、二種類を選び出した。

どこまで過保護なのかと自分でも呆れるが、基本マイペースで一匹オオカミな長男が、夜に友達とゲームをして夜更かしすることを楽しみにしている様子だったので、嬉しくなって張り切ってしまったのだ。


こうして、本人はハンカチ一枚自分で準備することなく出かけていった。



そして、3日後。



帰ってきた長男に感想を聞くと

「楽しかった」とひと言。


「なにが楽しかったの?」

「どんなことをしたの?」

「ゲームは盛り上がった?」

「熊は出なかった?危ないことはなかった?」


何もかもが一問一答式なので、聞きたいことをすべて聞き出すまでが大変である。

私だったら、時系列を追って、楽しかったこと、そうでなかったこと、ハプニングや会話内容など、あいてが飽きるまで具体的にいきいきと話す自信があるのに等と、もどかしく思うが、思春期の男の子なんて、多かれ少なかれ似たようなものかもしれない。

それでも、楽しかったら「楽しかった」、そうでなかったら「そうでなかった」と、はっきり言う子なので、「楽しかった」のひと言が聞けたから、よしとしよう。


その後、果たして、いつまでたっても片付けない長男にしびれをきらし、私が片付けを始めるのだが、あれほど入念にあれこれ(私が)準備したにもかかわらず、着替えもパジャマも袖を通した形跡がなく、問い詰めると、初日着ていった服で3日間を過ごし、お風呂に入ったにもかかわらず、パンツも交換せず、靴下も替えず、パジャマにも着替えずに寝て、ハンカチも使わなかったと。


「でも、ウインドブレーカーは一回だけ羽織ったよ」というので、

「寒かったの?」と聞くと

「ううん、寒くなかったけど気分で」とのこと。


そうですか。そうですね。

あなたはそういう人でしたね。


それを聞いた夫は、

「いやだ、こいつの洗濯物と一緒に洗濯されたくない!絶対俺のと別にして洗って!」

と叫んだ。


娘に、洗濯を嫌がられる父親はよく聞くが、父親に洗濯を嫌がられる息子って、どうなの!?