川と人類の文明史


はじめての雨が降ったとき

世界のあり方は永遠に変わった……


「川」に視点をあてて論じた希有な文明史


川は所有できない……

川の機能を分割して制御することはできない


行く川のながれは絶えずして

しかも本の水にあらず…   (鴨長明)


ああ 川の流れのように

ゆるやかにいくつも時代は過ぎて…   (秋元康)



川と文明

たとえば

カイロのローダ島にあるナイロメーター(ナイル川の年に一度の氾濫状況を把握することでファラオは農作物の生産高や民からの税収を最大化していた~豊作のときは蓄え不作の年は蓄えを取り崩すような持続可能な備えとして)は861年~1887年まで運用されてきた。



国境の川

たとえば

テキサス州エルパソに沿って流れるリオ・グランデは、テキサス州とニューメキシコ州の政治的境界線として、さらには米国とメキシコの政治的境界線として使用されている(米国とメキシコの国境にはリオ・グランデと並行してアメリカ運河の急な流れがあり不法入国をしようとする移民の多くが命を落としている)


メコン川は中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れ、東南アジアの食文化や経済(稲作農業やタンパク源となる魚やそれらの輸送手段として)を支えている。



戦争の話

たとえば

ユリウス・カエサルは、地方の政治的境界線だったルビコン川渡河の禁を犯し(当時は反逆行為だが今は英断(賽は投げられた)という評価)、そのあとの彼の政治改革によってローマ共和国からローマ帝国へ変貌を遂げた。


アメリカ独立戦争において、ジョージ・ワシントンが氷の浮かぶデラウェア川を渡るという決死の覚悟の奇襲作戦を決行し、その結果、アメリカ合衆国の建国につながった。



破壊と復興

たとえば

05年にニューオリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」によってミシシッピ川のあちこちが氾濫し、1883人の命を奪うなどの甚大な被害をもたらした。

そのあとの保険会社や政府の災害支援プロジェクトが機能したことにより、経済成長が促され、人口動態が保たれた(災害前より逆に人口が増えた)。


ペンシルベニア州にあったサウスフォーク・ダムは完成後その役目を終え、民間人に売却された(サウスフォーク・クラブという裕福な上流階級の人々が釣りを楽しむ施設として)が、彼らが犯した重大な過失によってダムが決壊し、ジョンズタウンという当時発展しつつあった都市が壊滅した。

ところがクラブは罪を免れ、被害の人々はこれに反発し、それがきっかけとなって「厳格責任」という法原理が導入され、アメリカ法学上の大転換が起きた(たとえばあついコーヒーを膝にこぼして大やけどを負った客に270 万ドルの損害賠償金が支払われたなどの驚くべき裁判の数々)。



巨大プロジェクト

たとえば

エジプトは数千年にわたりナイル川に依存してきた。ナイル川の源流は11の主権国家にまたがり、その水の大部分はエチオピア高原に源を発している。そのエチオピアは、エジプトや世界銀行に逆らって、ナイル川の主要支流である青ナイル川に大エチオピア・ルネサンスダムを建設している。これは(ナイル川の最後尾国である)エジプト政府にとって大きな悩みの種となっている。



豚骨スープ 

※上海の水道水に対するブラックジョーク(2013年上海の主要水源である黄浦江で、腐敗した数千頭の豚の死骸が流された …からきている)

たとえば

70年、共和党のリチャード・ニクソン大統領は、就任後初の一般教書演説で、費用のかかる包括的な計画を発表した。それは、アメリカの水質汚染と闘うこと、そして公害についての国家基準を科学的根拠に基づいて決定・施行する連邦機関を新設することだった(オハイオ州カヤホガ川の石油に汚染された水面が自然発火した事件やレイチェル・カーソンの『沈黙の春』の出版に端を発する)。



新たな挑戦

たとえば

カンボジアで取り入れられている「水田漁業」。

季節ごとの洪水のサイクルを利用して作物とともに魚を育てるという、農村部の貧しい人々が採り入れられるユニークで持続可能な養殖方法である(雨季になると水田は水であふれ誕生した魚でいっぱいになる)。



川とビッグデータ

たとえば

アメリカ、フランス、カナダ、イギリスの共同ミッションであるSHOT(表層水観測衛星) 計画は、地球上に無数ある川、湖、貯水池の水位変化を追跡し、地球上の淡水資源に対する監視能力を大幅に向上させるという。



再発見される川

私たち地球人は、都市に住む種であるだけでなく、川に住む種でもある(世界人口の2/3が大河川から20キロメートル以内に住み、世界の大都市(人口100万人以上1000万人未満)の約84%が大河川沿いにあり、世界のメガシティ(1000万人以上)ではその割合が93%にのぼるという)。

たとえば

ロウアー・マンハッタンのハドソン川沿いのハドソンヤードは、米国史上最も費用をかけた都市再開発プロジェクトで、11万平方メートルに及ぶ鉄道車両用地に複合的な住宅、店舗、公共緑地の建設が進められている。




👴

利根川は茨城県と千葉県の県境になってるんだがよ、ときどき利根川が暴れてその境があいまいになっちゃうときがあんのね、でもってそのあたりのところを「ちばらき県」なんて呼ぶんだべさ


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そういえばね、1984年の夏の甲子園のときね、あの真紅の大優勝旗が「初めて利根川を渡りました」とか言ってたよね


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川と聞くと私は日本一長い川とか世界一広い川は何?なんてことしか記憶ないんだけど、この本読んで川のいろんなことが知れてよかったわ


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今年は河川の氾濫や土砂災害などの大雨被害が起きなければいいね

……SHOTのシステムが洪水を予測して事前に知らせてくれるようになるといいよね