生物学的な性と性自認の乖離やそのものの問題、あるいは、それをめぐっての問題が複雑に絡み合っている社会の現状

それを強く意識する昨今である。


ウェルビーイング

身体的・精神的・社会的に良好な状態にあるという概念

肉体的、精神的、社会的に満たされた状態にあるときこそ本当の意味で「健康である」といえるのであろう。

もし男性と女性を比べたのなら、ウェルビーイングから遠いところにおかれているのは女性の方に違いない。

 


 

新作朝ドラ「虎に翼」のヒロインの台詞が胸に刺さったというネット記事があった。

「私の話を遮らないできいてくれた」という場面から、「女は黙っていろ」「女の話は長い」などの暴言を吐く老害政治家を連想したのは私だけではないと思う。

 

新聞記事から

3/8の「国際女性デー」を前にした英紙エコノミストが発表した『女性の働きやすさ』の総合ランキングでは、日本はOECD加盟29カ国中27位だったという。

 

同じく新聞記事から(小説家角田光代さんのエッセイより)

角田光代さんが飲み屋に一人で入ったところ、席がほとんどうまっていて、店主が席を詰めてもらうよう促したら、客のひとりから「美人なら詰めてやってもいい」と言われ、「美人ではないので、じゃあやめておきます」と店を出ようと思ったのだが、店主に悪いと思いその席に座り料理などを食したというエピソード。

その後、店の前を通るたび“あのときの嫌なこと”が思い出されるから、その店にはいかないようにしていたというが、あるとき、客に言われたことを黙認したのは店主に悪いからとか店の雰囲気を壊したくなかったという理由づけによるものと考えていたのが、時空のゆがんだ(昭和空間)に対して私はそれを黙殺していたことに気づいたという。そんなことはよくあることとして若い頃から黙認にしてきたことに気づき、それを後悔しているという旨の話だったと私は解釈した。

 

同じく新聞記事から

医療関係者の書いた「女性活躍へピル再評価を」という見出し

賃金格差やキャリア構築の観点で女性は今なお職場などで弱い立場におかれているケースが多いという社会状況から見て、23年ノーベル経済学賞が米クラウディア・ゴールディン教授に贈られたことは大変意義深いことだと評価している。

ゴールディン教授の研究分析で筆者が着目するのは、「経口避妊薬(ピル)の普及で女性が結婚や出産のタイミングを制御することが可能になり自身のキャリアへの投資チャンスが広がって所得が上昇した」という点だそうだ。(以下省略)

 


 

ウェルビーイングを妨げているものの根底にあるのが、ヴィクトリア朝から続いている家父長制というシステムだと言及するのは、ケンブリッジで博士号を取得した英国女性社会学者マリーケ・ビッグである。

 

 23年9月27日第一刷発行 本文315ページ

性的に中立性がうたわれている医学医療や、客観性が重視されている科学の欺瞞を暴きつつ、男性中心に構築されてきた文化や社会にあるさまざまな不平等を、自分の経験(肉体的・精神的痛みなど)を交えながら、医療科学や社会学の観点から幅広く論じている。
 
(参考)
SRHR(性と生殖に関する健康と権利):セクシュアルヘルス・ライツ、リプロダクティブヘルス・ライツ

セクシュアル・ヘルス
自分の性に関することについて、心身共に満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。
セクシュアル・ライツ
セクシュアリティ「性」を自分で決められる権利のこと。
リプロダクティブヘルス
妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人問わず、心身共に満たされ健康でいられること。
リプロダクティブライツ
産むか産まないか、いつ・何人子どもをもつかを自分で決める権利