ダイナミズム
自己鍛錬の賜物を全力プレーで発揮するスポーツアスリート
その姿を間近で見るにつけ感動を覚える。

代表クラスのスイマー達の泳ぎをリアルライブで観戦したことがなかったので、急遽チケットを購入し、辰巳のアクアティクスセンターに馳せ参じた。


こちらは競泳のパリ五輪代表選考会会場

駆けつけたのはその最終日で、男子100mバタフライと1500m自由形、女子50m自由形に200m個人メドレーと800m自由形のそれぞれ決勝が行われた。
そのうち男子100mバタフライと女子200m個人メドレーで、それぞれ2人が代表の高いハードルをクリアした。

100mバタフライ
松元克央選手(200m自由形でも代表入り~右手)と水沼尚輝選手(この種目の日本記録保持者)

200m個人メドレー
大橋悠依選手(東京五輪で2種目金メダルだが400mでは代表入りを逃す~左手)と松本信歩選手(代表入りは初めて)


以前ブログにも書いたように、日本水連が独自に設定する「派遣標準記録」は極めてレベルが高い。基準は直近の世界大会の記録で、決勝に残れるだけのタイムを出し、なおかつ2位までに入ることが条件となる厳しいものである。特に、日本が世界のレベルに後れを取っている自由形種目は、男女ともに日本記録を上回るものがほとんどである。

だから残念ながら、 池江璃花子選手が出た50m自由形、女子800m自由形、男子1500m自由形では代表内定選手が出なかった。

長距離自由形は世界から大きく水をあけられているのが現状であるが、そんな中でも男子1500m自由形で2位以下を大きく引き離してゴールした高校1年生、今福和志選手の活躍(高校新記録)には目が光った。まさに水泳界の光明だと思う。



限界まで自分を追い込み、試合ではその成果をタイムや順位という結果で評価を受けるスポーツアスリートは、身体パフォーマンスというかたちで表現するスポーツ哲学者、という感じが私はする。

東京五輪で二種目で金メダルを獲得した大橋悠依選手は、その後スイマーとしての目標やモチベーションが定まらず、精神的にも肉体的にも苦悩を重ねてきたと思う。

そんなことを想像しながら聞く大橋選手の喜びのインタビューについうるうるときてしまった。


またこの日には登場しなかった平泳ぎの鈴木聡美選手(パリ行きのチケットを2枚獲得)は、33歳にして現役を続け、しかもなおかつ自己記録を更新続ける凄腕のスイマーで、かつては女子水泳選手のピークは10代までといわれた時代があったことも考慮すると、スポーツアスリートとして実に尊敬に値する。

特に今回の200m平泳ぎ決勝は圧巻だった。最後の折り返しまで他の選手を引き離す圧倒的なレースぶりだったが、あと残り30mを切ったあたりから五輪代表経験者の渡部香生子選手と今井月選手が徐々に追い上げ、水泳のレースではこのパターンでは間違いなく逆転されるだろうと見ていて想像したが、そこからが彼女の勝負師としての真骨頂で、一段とパワーアップして逆に差をつけてゴール板に先着してしまった。彼女の勝負根性というか勝負強さをあらためて思い知るレースぶりだった。ここのところの鈴木聡美選手は、大舞台でも本領発揮、むしろそれ以上の泳ぎを見せる活躍ぶりで、水泳ファンとしては頼もしい限りである。



試合前には、日本代表でパラアスリートの勇姿を披露するデモンストレーションがあった。

腕や脚に障害がある身体機能クラスのスイマー、知的障害クラスのスイマーの泳ぎも目を見張るものがあった。

あるスイマーはスタート台に座りこんでいて、どのように水に入るのかなと思っていたら、見事な軌跡を描いて飛び込む迫力ある姿で、会場内からも賞賛の歓声が上がった。

片手片脚が不自由なのにもかかわらずまっすぐに、しかも想像できないくらい高速で泳いでいたのには本当に驚いた。

東京パラ五輪の金メダルをはじめ、いくつものメダルを獲得している木村敬一選手も世界レベルの泳ぎ(他に世界記録保持者の選手も登場した)を披露してくれた。そして、木村敬一選手は大橋選手や松本選手に「パリへの航空チケット」を渡すパフォーマンスを披露した。



パリ五輪、パリパラ五輪では、センターポールに日の丸を掲げられる複数のスイマーが出ることをお祈りしたい。