その昔、国営放送でたしか日曜日だったかにブックレビューの番組がありましてほとんど必ず見ていたのです。

書評ゲストが3人出て、それぞれおすすめの本を紹介して、ほかのふたりもそれを事前に読んでいて批評をかわりばんこに行うという流れの番組で、ある回のとき滅多に小説を読まない私がなぜか読んでみたいという衝動に駆られた本があって、面白い本のページをめくるみたいな速さでネット注文したのが👇

谷崎潤一郎賞受賞作品

奇想天外な物語展開もさることながら、なんやけったいな文体のおもろい小説の世界に引きずり込まれ、気づくと大阪弁か河内弁かわかりゃしませんが、そうしたことばづかいに感化されて一時的に別人になったことがありました。

こんな今まで見たことも聞いたこともないけったいな文を書く小説家っておもろいなと思い、重ね重ね小説などほとんど読まない私がまたまたネット注文したのが👇

野間文芸賞受賞作品

それで最近そのけったいな小説家、町田康ていうんですが、の書いたエッセイが出たちゅうんで本屋さんに出向いて手に入れたのが👇


2022年 8月第一刷


どんな小説家というと、まあ変わり種なんですが、この本の巻末にあった紹介文によると

面倒なんでコピーさせて貰いました


作家の経歴・実績からすると文豪ですよね。

それからミュージシャン(本人は俺はミュージシャンやないでと言っているが)としてはパンクロックを自称してまして、わたしなりに一言で表現するなら、町田康は「自分が楽しむ希代のエンターテナー」と評したいところですね。

本の副題から町田康ってどんな人物なのかは、人生熟達のみなさんならおおよそ察しがつくと思われます。

人間の趣味嗜好性格志向思想信条などは幼少期の経験によって刷り込まれ育まれることが多々ありますから、こんなおもろい文章を書く人物もおそらく幼少期に何か特別な体験があったのかと想像できるわけで、さっそく読んでみると意外や意外のインドア派だったようで、本の虫というか本ばかり読んで過ごしていたようなふしが見受けられ、はじめにその遊び心を刺激されたのが小学生のときに足繁く通った近所の本屋で見つけた「物語日本史2」という真面目な本だったと言います。毎月の小遣いの500円をやや上回る価格のこの本に魅せられたのは、歴史上の人物の背景やら功績やら性向などが物語調に書かれていたかららしく、町田康さん曰く“人間が出てくるからおもしろい”と弁明しておられ、教科書のようなつまらない書き方になっていなかったことがえらく気に入ったようで、そこら辺が町田康の町田康たる人間形成に一役かったのかもしれなく、だからその後親に頼んで「物語日本史」全巻をそろえてもらったということにつながるのでしょう。

それで中学生になると、部活(なぜかワンダーフォーゲル部という中学校にはあり得ないような)の先輩らに薫陶を受けて出会ったのが北杜夫と筒井康隆の小説だったということです。それらの作家の作品は、物語そのものは何ら変哲もないありふれたスジの話なのだがその語り口がおもろかったと言うのです。

私もかつて筒井康隆作品に傾倒していた時期がありまして、たしかに筒井康隆作品はブラックユーモアやらジョークが散りばめられてその文体も可笑しくてとても人ごみの電車内などではよめないしろものでしたから、うんうん分かる分かると唸ってしまいました。


具体的に言いますとそのココロはたとえばこうです…


柿の木のそばに男が立っていたとしよう─まともな小説なら、たわわに実った赤い柿の実や色づき落ちた柿の葉を見て男は季節感を味わっていたとかなんとか文学的な味付けを施して高尚な物語に仕立てたりするが、

おもろい文体で書いていくと、男は柿の木に隠れて用を足すとか柿泥棒を企てるとかのおもろい話にもっていったりしてしまう─

というような、文体が必然的にハナシの流れを決めてしまうようなそんな感じ

デス


氏は、言語には本音の言語と建前の言語があるというてますから、↑の例示で言いますと前者の表現が建前の文学で後者が本音の文学という解釈になります(上の文はわたくしの創作ですよ)。

エッセイにしても、同じこと書くのに歯に衣着せた言い方、つまり難しいことば使ったり、わざと遠回しの表現にしてみたりと高尚な感じに仕立てたりしますけど、そういうものが建前の言語だちゅうのやというとる気がしています。このエッセイ本はそうした信念からでしょうか、インタビュアーに語るような話し言葉で全編書かれています。だから全然気取っている気がしないのですね。ほんとに本音なんだなあと思いますよ。それで数々の文学賞をゲットしているのですからすごいです。選考委員の好き嫌いもあるのでしょうけど…



そういうわけで(何のこっちゃ!)

かつて仕事関係の集まりで、高校の校内新聞程度の軽い広報誌の中で、それぞれ好きなタレント(または有名人?)を挙げてもらって自己紹介の一部にするみたいな企画がありまして、わたくしはその中で作家町田康を推挙したのでした(質問の意図が分からなかったのでほかにスポーツ選手として松田丈志、俳優の村上弘明、ミュージシャンとして岡林信康、あと漫画家のジャンルから白土三平を書いたと思う)。

これも建前で答えるなら、好きな芸能人ベストテンとか上司にしたいタレントベストテンの中に入っていそうな人、あるいは小学校のセンセイに語るようにシュバイツアー博士とかを書いて無難におさめればいいのでしょうが、ある意味町田康式に本音を書いたのだと思われます。

そういゃ中学生のとき、 知っている国を挙げよと社会の先生からあって、みんなひとりずつ答えていったのですが、あろうことかトリニダード・トバゴと答えたやつがおりまして、まあかっこつけなんでしょうけどほかの小学校からきたやつで、面白いやつだなあと思ったことがありましたのを思い出しました。



長くなりましたので、尻切れのトンボみたいですがここらで終わりにしておきます。