目次
ちょうどいい老後
―退職してから、本当の人生が始まった
- はじめに
- 第1話
最後の出勤日
- 第2話
減っていく通帳
- 第3話
妻には妻の人生があった
- 第4話
思ったより身体は若くない
- 第5話
年金だけで暮らせますか
- 第6話
もう一度、働く
- 第7話
お金より怖かったもの
- 最終話
ちょうどいい老後
- あとがき

ちょうどいい老後
―退職してから、本当の人生が始まった
はじめに
「定年退職」と聞くと、どんな人生を思い浮かべますか。
長年勤めた会社を離れ、毎日が自由になる。
旅行に出かけたり、趣味を楽しんだり、ゆっくり過ごしたり……。
私も若いころは、そんな穏やかな老後を思い描いていました。
ところが実際には、退職した多くの人が、思いもよらない現実に戸惑います。
給料が入らなくなる不安。
少しずつ減っていく預金。
年金だけで暮らせるのだろうかという心配。
身体の衰え。
そして、毎朝起きても行く場所がない寂しさ。
定年退職は、仕事を辞める日であると同時に、
それまで当たり前だった生活が大きく変わる日でもあります。
本書に登場する健一も、その一人です。
退職したばかりの健一は、「自由になった」と喜びながらも、
お金の不安、夫婦のすれ違い、身体の変化、
そして自分の居場所を失ったような寂しさに向き合うことになります。
しかし、その経験を通して少しずつ気づいていきます。
老後に必要なのは、お金だけではないこと。
健康だけでもないこと。
毎日やることがあり、誰かに必要とされ、笑い合える人がそばにいること。
そんな何気ない日常こそが、本当の豊かさなのだということです。
この物語に登場する出来事は、決して特別なものではありません。
退職した多くの夫婦が経験する、ごく普通の日常です。
だからこそ、「これは自分たちの話かもしれない」
と感じながら読んでいただけるのではないでしょうか。
老後は、若いころのように何かを競う人生ではありません。
豪華な暮らしを目指す人生でもありません。
自分たちらしい「ちょうどいい暮らし」を見つける人生です。
もし今、退職を控えている方や、すでに定年後の生活を送っている方が、
この本を読んで少しでも心が軽くなり、
「こんな老後も悪くないな」と思っていただけたなら、
これほど嬉しいことはありません。
人生は、会社を辞めた日で終わるのではありません。
そこから、もう一度始まります。
どうぞ健一と幸子と一緒に、「ちょうどいい老後」を歩いてみてください。
学舟