この2月から工事を進めてきた「角度を振ったスキップフロアの家」が、いよいよ竣工の佳き日を迎えることになりました。今日はブログ上での「完成見学会」のつもりで、写真多めでこの家をご紹介して参りたいと存じます。

 

冒頭の写真はこの敷地が面する前面道路から撮った一枚です。この見上げる角度でもわかる通り、敷地は道路から4m近く上で、手前にドーンと聳え立つのは石積みの擁壁。敷地面積は93坪、道路は敷地の西側にあるんですね。

 

4m段差で「段々畑」状の街並み、とくればご想像がつくと思いますが、この高台からは西方向への眺望が素晴らしい。この家はそれを最大限に取り込むべくこんな形、即ち45度振ったスキップフロアになっているという次第。

 

 

奥の方はほぼ正方形の敷地各辺に沿って建っているんですが、途中から45度にカクンと折れ曲がって、西側の道路には折れた部分が角で面するようになっている。そしてまた、この折れ曲がった部分は奥より半階高いんですね。

 

この最も高い部分がリビングで、道路に面した角の部分に大きな窓が設けてあります。またバルコニーはその窓からずらして設置。高台から見下げる形の眺望なので、バルコニーが前にあると逆に眺めが見えなくなるからです。

 

さて内部へと進みましょう。この家の床面積は27坪もなくて、所謂狭小住宅の部類ですが、実は内部はとても広いんです。それは「廊下が無い」から。スキップフロアにより空間が階段で繋がれ、面積を最大限使いきる間取り。

 

 

特注の木製玄関ドアを入ると、すぐにもう階段が見えています。ドアから続く土間の向こうには0.5階分の高さの納戸。ここでスキップの段差をつくっているんですね。階段の向こうには個室が1つあってその手前がトイレです。

 

納戸の上、いわゆる「中二階」(1.5階)はもうひとつの個室。玄関から階段を半分上がったところにあります。そして折り返してあと半分を上がるとダイニングキッチン、ここが玄関の上の2階、洗面所と浴室もこの階ですね。

 

 

階段を上がると、

2階ダイニングキッチンと2.5階リビングが一体となった空間に上がってきます。

 

スキップフロアの良い点は、何と言っても「半階のずれ」で空間が連続するところでしょう。一般的な1階と2階をつなぐには「吹抜」という装置が必要ですが、スキップだとごく普通に空間が連続し、しかも変化が生まれる。

 

リビングからキッチンを見るとこんな感じ。

そしてリビングの角に広がる素晴らしい眺望。窓に近づくほど眺めの角度が広がります。

 

リビングには、DKの方を向いて薪ストーブが設置されています。この一体空間のLDK全体を暖める意味で、輻射熱が効率良く届く向きになっているというわけ。そして、ストーブ横(南東方向)の掃出窓から、バルコニーへ。

 

 

バルコニーデッキは全て無垢の板で設えられていて、手摺も風を通すよう「目透かし張り」になっています。こちらもまた素晴らしい眺め、今の季節はともかく、春や秋の気候の良い頃には、ここでまったりと寛ぎたいなあw。

 

寛ぐと言えば、キッチン横にある浴室も寛ぎと癒やしのスペースになっていますね。2階なのでユニットバスですが「ハーフユニット」という下半分のユニットとし、壁と天井は全て桧の無垢板張り。ドアも無垢の桧材ですよ。

 

 

さあ、一番上まで登りましたのでブログ上見学会はこのへんでお開き。最後に、この建物の外壁素材と、外構での「遊び心」の部分をご紹介しましょう。外壁は「焼杉板」、その名の通り杉板の表面を焼いて炭化させた板です。

 

 

炭化した木材は非常に耐久性が高く長持ちします。無論触ると手が真っ黒けになりますが、家の外壁を撫で回して暮らすわけではありませんし。それ以上にこの素晴らしい味わい、風合いは、ちょっと他に代えがたい素材です。

 

そしてこの外壁の「凹み」部分、これは「濡縁」なんですが、先述の0.5階高さの納戸をあえて縮め、壁を凹ませました。低い天井と「籠もり感」が楽しいわけですね。座っても背中が焼杉板に触れない深い奥行にしていますよ。

 

以上、敷地の良さを最大限に取り込み、かつ廊下を無くして床面積を最大限に活かす、そんな角度を振ったスキップフロアの家のご紹介でした。これからどんな暮らしがここで営まれるか、私も引続き見守っていくつもりです。

 

 

 

via やまぐち空間計画
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