『シン・仮面ライダー』   庵野秀明 監督   2022年日本

 

漸くAmazonプライムビデオに登場、鑑賞した本作。『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に続く往年の名作リメイクもの(?)第3弾ですね。ちなみに『シン・エヴァンゲリオン』なるアニメ作品はよく知りませんw。

 

私は1967(昭和42)年の生まれで、3作品のオリジナルを知る世代です。ゴジラは、1954年封切の怖い第1作でなく、私が観ていたのはその後の「人類の味方・ゴジラ」が活躍する子供向け映画。毎年両親と観に行きました。

 

ウルトラマンのTV放映開始は1966年ですが、おそらく再放送を観ていたのでしょう。その後のセブンや新マン、エース、タロウ、レオと全てを観ています。そして仮面ライダーの放映開始は1971年で、最もよく記憶する作品。

 

「およげ!たいやきくん」の子門真人さん歌う主題歌や挿入歌も全て空で歌えるくらいのめりこんだ仮面ライダーシリーズ、今の男の子たちで言う「スーパー戦隊シリーズ」に相当するのかな。とてもとても好きな作品でした。

 

なのでこれら「シン」シリーズの制作が発表された時には、胸躍る心地がしたものです。実際拝見して、どの作品もなかなか良かったと思いますが、正直それはかなり強いノスタルジーに支配された感覚のようにも思われます。

 

『シン・ゴジラ』は、私が子供時代に観ていない第一作、即ち「ゴジラ現る」を練り直したものだと思いますが、これは素直に感動できた。国家への脅威に立ち向かう政府の精鋭たちの姿がリアルに描かれて好感がもてました。

 

『シン・ウルトラマン』は、「外星人(宇宙人)」のヒーロー、そして外星人のヒール(悪役)が操る禍威獣(怪獣)の猛威に抗う政府機関の活躍を描いた作品でした。面白く鑑賞しながらしかし、小さな疑問も生じましたね。

 

そして本作。前作で感じた疑問というか違和感がさらに広がるのを感じました。その「?」の中身を一言で表すのは難しいのですが、庵野秀明監督がおもちの筈のオリジナルへの強すぎるリスペクトが生む「?」ではないかと。

 

ここからかなりマニアックになるので、ご興味お有りの方のみどうぞw。ウルトラマンが放つスペシウム光線の表現や、空へと飛んでいく彼のフォルム、ザラブ星人との戦い方。それらの表現は、オリジナルTV作品とほぼ同じ。

 

本作も同様かそれ以上に「オリジナルと同じ画面」をつくるという意図が強く見えました。円谷プロや東映が生んだ傑作へのリスペクトは大いにわかりますが、それが一方で令和の映像作品で違和感というノイズになっている。

 

仮面ライダーはその名の通りバッタの仮面を被っていて、放映初期のライダーは仮面の後ろに髪の毛が見えていた。V3以降それが見えなくなったので、当時はそれが改善だったのでしょうね。でも本作でも髪はなびいていた。

 

時代劇の時代考証と同じく、こういうSF的技術の面での「設定考証」をもって、本作では仮面の後ろに髪が見えるのが「正しい事」になっています。でも私にはちょっとそこが「弱い」気がしたんですね。それでええの?と。

 

無論、こんな素人が考えるようなことは制作者の方々も当然ご承知のことだと思います。そして、また一方でその「オリジナルと同じ画面」に嬉しくなっている己、即ち制作者のリスペクトに共感する自分もそこに居るんです。

 

そう、だから私のような者は、この新作映画を「それそのものの価値」で正しく評価することが出来ないんだな、そう強く感じました。違和感を感じる自分と、オリジナルへのオマージュに喜ぶ自分との狭間で揺れているから。

 

本作が興行的に振るわなかった、というのも理解できます。オリジナルへのリスペクトが強過ぎる監督の思い入れ目一杯の作品は、我々「ジイさん」達に響くものはあっても、他の多くの方々にはリアルでなかったのでしょう。

 

ではどんな『シン・仮面ライダー』なら良かったのか。それはわかりません。ちなみにAmazonプライムビデオのオリジナル作品に『仮面ライダーBLACK SUN』というのがあって、それはまた本作とは全然違うタイプらしい。

 

子供の頃大好きだった作品は、その想い出だけを持っておくのが一番よい、そんな気がしました。想い出は時に、ありのままの眼を曇らせてしまう。これは映画に限らず、ノスタルジーに潜む怖い一面、なのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

via やまぐち空間計画
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