昨年12月から施工をしておりました、水彩画家あべまりえ先生の「スタジオ小屋」、本日ついに完了検査を終えることが出来ました。まだ竣工には至っておりませんが、建築確認に関する手続きを無事に済ませホッと一息です。

 

 

ここにも何度か書いた通り、お施主さまがお住まいの主屋は築百年を数える登録文化財です。その同じ敷地に「離れ」を建てる計画を最初にお聞きした時、「それは建築確認が降りないのでは?」というのが正直な感想でした。

 

それは、建築基準法の成立前からある家のため、当然その基準に則っていないから。その建物に離れの「増築」が可能なのか、私にも経験が無くわかりませんでした。でも色々と調べ尋ねしていると、どうも方法はあるらしい。

 

いわゆる「既存不適格建築物」であるからこそ可能な「離れという増築」、今回はその結構難しい手続きをクリアし、何とか建築確認にこぎつけた建物だったんです。なので今日の完了検査に合格した感動もひとしおでしたね。

 

 

建物の外壁は杉無垢板の「鎧張り」。大工さんが一枚ずつ張っていくこの手作り感あふれる仕上材も、その下地に不燃面材を使うなどしてちゃんと基準法をクリアしているんですよ。このあたり、私には手慣れた手法なんです。

 

 

これは棟木を受けるトラス梁。最初にお客様から見せていただいたイメージ写真は、池田市にあった「ヤコブセンハウス」でした。その空間の雰囲気をここでも実現すべく同じ屋根架構を採用しましたが、これは私にも初施工。

 

また、いつもの職人さんによる手作り術に加え、お施主さまによるDIY的手作りもこの建物の大きな特徴です。それらもふまえた上で工事の進捗を調整し、また法的にもクリアするよう作り方を相談しながらつくってきました。

 

 

これはロフトを見上げたところ。構造材や天井面の塗装や壁面の漆喰塗り(現在進行形)は全て「施主施工」。事前に塗っておくもの、施工してから塗るもの、そんな調整もふくめ職方と施主、力を合わせてつくられています。

 

 

内部の床、メインは「足場板」。これもお施主さんと奈良の業者さんへ下見に行って決めてきたものです。新品の板には無いこの独特の風合いが良いですね。出入口や水廻りの床はタイルになる予定で、きっと馴染みも良い筈。

 

「予定」と書きましたが、今日の完了検査を終えて、我々施工者の仕事はほぼ終わりなんです。建築基準法上は竣工となり、あとは手作り作業のメインをお手渡しして、引続きDIYを愉しんでいただくフェーズに移行します。

 

私も、工事完了の時点で「どう仕上がるかわからない」という建物はあまり経験がありません。それだけに今後がすごく楽しみ。無論お施主様からのご相談にも乗りつつ、仕上工事の進捗を見守っていければと思っております。

 

このように、小規模ながら建築確認、トラス、手作り作業分担と、私にとっても初めての経験を色々と積ませてもらった思い出深い建物になりました。いつも以上に、引渡し後さらに「育っていく」建築であってほしいですね。

 

via やまぐち空間計画
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