私は主に「住まい」の設計を生業としております。設計には大きく分けて3つのフェースがありまして、まず最初が基本設計(=間取りづくり)、次に実施設計(=建設用の図面作成)、そして建設現場での設計内容調整です。

 

基本設計でつくった間取りを、実施設計で更に細かい部分までお客さまと検討して決め、それを図面化していきます。その検討範囲はかなり広いですが、中でも私が特に楽しむ作業は照明計画、即ち「灯りの設計」でしょうか。

 

昨年から数えて5つほどの建物で灯りの設計をし、2つが竣工しました。今は3つが設計中・施工中で、灯りも徐々にかたちになる段階。今日はそんな「灯りのつくり方」について書いてみようか、という次第でございます。

 

私が今までの経験から痛感していること、それは「間取りをつくった人が灯りを考えましょう」です。何故なら、その空間のボリュームや、そこでの動線計画を完全に理解している人でないと、照明計画は出来ないと思うから。

 

それくらい、灯りの検討には多くのファクターが絡みます。それらを順に書いていきますと、まず「どこに照明器具が必要か」が最初に来ます。これ即ち「夜にどこで何をするか」を満足できる照明配置を、ということですね。

 

その場所や位置で必要な照度を得たいわけですが、これにも個人差があり、好みがあります。眩しいのが苦手な人もいれば、白(昼白色)と橙色(電球色)の向き不向き、好き嫌いもある。さらに天井や壁と照明の位置関係も。

 

照明って、家の内部全体が均一に明るければよい、というものではありませんよね。不便無く、かつ灯りのメリハリを効かせたいところ。昨今は「調光・調色」といって、光の強弱も色合いも調整できる器具があって有り難い。

 

そしてファクターその2は「どこでその灯りを点けるのか」です。スイッチの位置ですね。これを考えるには、家の中でどう動くかという「動線」をシミュレーションしていくしかない。これも非常に厄介な、難しい作業です。

 

ただ、それらは結局のところ図面では体感できない。なので設計段階での提案は提案として、現場での再確認がとても重要。実際の配線工事の前に「ここでこんな光になります」という現場打合せは必須と言っていいでしょう。

 

また、さらにイメージを把握するために有効なのは、ショールームで実際の器具を確認することです。照明計画を図面で説明、器具写真を使って打合せをした後、器具が実際に設置されるまでの間のどこかで、現物を見ておく。

 

 

ただ、照明のショールームとは例えばこんな感じの場所。器具の形や光の具合はわかっても、実際の住まいに設置・点灯した時にどういう灯りになるか、まではイメージ出来ず、だからこそ設計者の腕の見せ所なんですね。

 

そしてもうひとつ大事なファクターは「時間」、将来対応・メンテナンスです。LEDも電球タイプは切れますから、その時の交換しやすさも考慮すべきでしょう。また家族が高齢になった時、照度アップが必要になることも。

 

そうでなくても、照明器具の変更によるイメージチェンジというのも全然ありだと私は思います。ですから全てを固定器具にするのではなくて、例えば食卓上のペンダントはいずれ替える前提で、という選び方も良いでしょう。

 

細かいファクターを挙げればまだありますが、まあ大きくはその3つかな。でも言葉では簡単でも、実際には毎回違う空間を違うお客さまと話し合いをしながら、どう灯すのかを探り続ける、なかなか困難な作業だと思います。

 

設計するたび毎回思いますが、灯りの具合だけは、建物が出来上った最後の最後までどうなるか見ることが出来ません。夜の道具なので、お客さまも引渡し後に初めて目にするというのが普通です。考えればなかなか怖いこと。

 

なので先述の通り、照明計画には空間・動線の把握が必須だし、将来への時間を想定できて、更にある程度のフレキシビリティをそこに盛り込むのも大いに大切。奥深くて、だからこそ面白く楽しい設計屋のお志事なんですよ。

 

 

 

 

 

 

via やまぐち空間計画
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