これまでにつくった間取りを語るシリーズ、第46回です。今回は52坪ほどの長方形の敷地、そこに4人家族とご両親の計6人で住まわれる木の家。いわゆる二世帯住宅で、玄関や水廻りの分離をしない「共住型」の住まいです。

 

敷地は西側が6m道路で東側が隣家。そして南側が月極駐車場で大きく開けているという、日当たり良好な土地でした。また住まい手さんもその駐車場を借りているので、敷地内に駐車場は不要、それよりも庭を、とのご希望。

 

当初からお客さまも、二世帯住宅+駐車場だと家が狭くなるのでは、と考えておられた様子。それは確かにその通りで、そのご判断によって必要な諸室全てきっちりと確保できましたし、明るいお庭も実現出来たと思いますね。

 

さて、間取り巡りを玄関から始めましょう。このご家族は門や板塀の無い「オープン外構」をご希望でしたから、道路に面した小庭は街と共有する緑です。そこからポーチに上がると、そこは上に載った2階が庇になった場所。

 

玄関へ入ると奥まで長い土間があり、一番奥は自転車置場。オープン外構の場合は駐輪場の位置も考えどころですが、こうして屋内に置ければ維持管理の点でもベストですね。そしてその手前からシューズクロークへ入ります。

 

なお、来客は更に手前の入口から廊下へ進みます。玄関ドアを開けた時には奥のシューズクローク側入口は見えないので、間違うことはありません。知っている家族だけが奥へ進むようになっている。これも間取りの工夫です。

 

さて、この家の平面形は大きくは長方形なのですが、一部南側へ張り出した部分と、一部北側が凹んでいる部分がありますね。無論これにも理由がありまして、まず1階南側張出し部は玄関のすぐそば、ここはお母さんの寝室。

 

ここが出っ張っていることで、道路側から奥のお庭が見えなくなり、お庭に落ち着きが生まれています。オープン外構は敷地内が丸見えになるので、それを防ぐ工夫ですね。そして寝室からはお庭が違った見え方になりますよ。

 

WIC付の寝室を過ぎるとLDKです。また寝室の北側、階段の裏に隠れる感じで水廻りが。トイレはLDKから見えにくく、かつ寝室に近い場所に確保しました。単なる通路を極力減らしたい間取りでは、水廻りの位置は重要です。

 

LDKはその全体がお庭に面した場所。大きな窓の間に薪ストーブが鎮座していますね。TVはサイドに配置し、何よりも外とのつながりを重視した位置関係。東側にはちょっとしたカウンターもあり、お子さんの宿題の場所にも。

 

そしてキッチン北側も充実させています。先述の「凹んだ部分」はサービスヤードなのでした。共働きのご夫妻には、大きな食品庫とこの裏庭的な場所がとても便利でしょうね。オープン外構だと尚更、ゴミの仮置き等ですね。

 

2階へ上がると北西は収納エリア。寝室につながるWICに加え、お母さん所有の沢山の着物のクロゼットも確保しました。西にはゲストルーム的な予備室、南に張り出した部分はお父さんの居場所、書斎兼寝室になっています。

 

LDKにある吹抜けの廻りは共用スペース+フリースペース。共用スペースには共有本棚を作り、ピアノも置いて使える場所に。室内物干・洗濯物を畳む場所にもなりますね。フリースペースは将来子供部屋2つになる予定です。

 

二世帯住宅の場合、親世帯と子世帯の「暮らしの時間差」にも配慮したほうが良いと思います。ここではご両親の居場所も別々ですが、それらを上下階で重ねています。ご夫妻の寝室や子供部屋とは場所を離す方がいいですね。

 

人が増えればそれだけ配慮すべき点も増えていく、それはあたり前のことです。今回はオープン外構という条件も加味しつつ、同居の二世帯住宅としてこの敷地であるべき間取りを追求しました。さあ、如何だったでしょうか。

 

via やまぐち空間計画
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