湖東三山 金剛輪寺本堂(国宝)

 

木造建築の設計を生業とする私。その多くは木造住宅ですが、時には少し違うタイプのものもありまして、このところ2つの寺院建築に携わっています。寺院でありかつ住宅でもある「庫裏(くり)」のリフォーム設計ですね。

 

ひとつは滋賀県、ひとつは奈良県にあり、どちらも古い建物です。新築の木の家も良いですが、長い時の流れを経た木造建築には格別の味わいがあり、古いもの好きの私にはとてもありがたい志事と感謝しつつ勤しんでいます。

 

そんな古い建物の改修を設計する中、建築とは別の興味も出てきていて、今日はその話なんです。それは「仏教宗派」のこと。私が携わる滋賀のお寺は浄土真宗、奈良の方は浄土宗。それら宗派の成り立ちに興味が湧いてきた。

 

学生時代に日本史で習ったこと、そしてNHK大河ドラマで観たこと、仏教に関する私の知識はその程度でした。でもこの何年か時代小説を読むようになり、そして志事で関わったことで遂に好奇心の炎が燃え始めたわけですね。

 

冒頭の写真は、先日滋賀で立ち寄った名刹・金剛輪寺ご本堂です。湖東三山と呼ばれる3つの寺院は全て天台宗らしい。ちなみに我が家は「融通念仏宗」なる宗派なのですが、それについてもほぼ無知に等しいという体たらく。

 

 『一冊でまるごとわかる 日本の13大仏教』   瓜生中 著   だいわ文庫

 

で、こんな本を入手し読み耽っている次第。日本の仏教には「十三宗五十六派」あると言われ、実際にはさらに多く100以上の派があるらしい。そのことにまず驚きました。また、融通念仏宗が13大仏教に入っていたことにも。

 

平安末期に良忍上人が開いたもので、浄土真宗などよりも古い宗派だったんです。大阪に本山があるとは聞いていましたが、大阪市平野区の大念佛寺でした。なので大阪に末寺が多い。滋賀に天台宗の寺が多いのと同じですね。

 

聖応大師の号を授かったという良忍という僧侶、そして彼が提唱した「融通念仏」なる概念にも更に興味が湧いてきたので、今後もっと文献を漁ることになる予感。ただ本書によって「分派」の理由や意味はわかってきました。

 

この本、まず仏教の起こりから筆を起こします。そして奈良時代に起こり今に残る宗派、平安時代に起こったもの、鎌倉時代のものと順に説明されて非常にわかりやすい。開祖が別の宗派へと分かれていく様も見えてきます。

 

まだ読了はしていませんが、読み進めながら「仏教」なるもののイメージが変容していくのを感じました。冒頭の写真を撮った金剛輪寺の本堂前でも、青葉を揺らす清々しい風に吹かれながら、そんな思索に耽っていたんです。

 

イメージが変わると言っても、元々そんな明確な像も私には無かった。でも現代人の多くはいわゆる「葬式仏教」的なものを頭に描いているのではないでしょうか。死んだ人が極楽に行けるように念仏を唱える、というような。

 

でも今回宗派のことを学ぶ中で、それは哲学思想に似たもの?と思うようになりました。大元に釈尊の教えがあるとは言え、要は「人間」や「生き方」を見出すための杖なのかと。だから色んな方法が学派として生まれてくる。

 

若い頃、よく理解は出来ないながらもフッサールやフロイトやユングやソシュールの思想に強く惹かれたように、いま漸く空海や法然や親鸞、そして鑑真や明恵や空也や一遍が私の前に立ち現れてきたように感じているんです。

 

わかる方々には当然のことなのかもしれません。でも私はこれまでそういう見方をしてこなかった。ずいぶん遠回りして自国の思想家たちに出会う、何とも勿体ないことですが、まあ55歳で出会っただけましと考えましょうw。

 

この歳で、かつて無いほどの大きな「学び」の山塊が眼前に聳え立っています。ちょっと身震いするような気分ではありますが、でも知的好奇心こそ生きるエネルギーだと思っている私には、感謝の気持ちの方が大きいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

via やまぐち空間計画
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