新年早々に母の入院のことを書きました。で、今日もある意味その続きで、山口家にとって今年から始まった新しい生活のあり方である「介護」について。初めて尽くしのこの経験がもし読まれた方のお役に立てれば幸いです。

 

心臓大動脈解離の手術を経て年末に退院した母、特に大きな後遺症は無いものの、やはり以前のように元気に動き回ることは出来ません。最初はゆっくり歩くことから少しずつ少しずつ、リハビリを兼ねた生活が始まりました。

 

そこでまずすぐに必要とされたのが「手摺」。実家はいわゆる回り階段、勾配もきつく非常に危険で、しかしずっと手摺はありませんでした。なので今回、階段・浴室・玄関・物干場出入口に手摺を設置することにしたんです。

 

私自身が建築の志事で大工さんともつながりがあるので、母の退院前に手摺を設けるべく声をかけようとして、でも思いとどまりました。それは、ある業者さんのことを思い出したからです。高齢者向けのそういう業種の方を。

 

と言うのは、私の知人がそこへ勤めていると聞いていたから。その時はまだ「介護サービス事業所」という言葉も知りませんでしたが、でもきっとその業種ならではのノウハウがある筈と思ったんですね。で、早速知人に連絡。

 

結果的にこれは大正解でした。手摺の工事を快諾してくれただけでなく、介護保険制度の活用という未経験の動きについて詳しく教えてもらうことが出来たからです。母は74歳かつ入院中でしたし、そりゃ保険使うべきよ、と。

 

そこで早速行動開始、まずは介護保険サービス対象者の認定を受けるべく区役所へ。申請はあっさり出来ましたが、認定まで1~1.5ヶ月かかるとのお達し。嗚呼これで手摺が遠のいたと落胆、でも実はさにあらずなんですよ。

 

介護保険サービス適用の工事は、対象者認定申請の最中でも可能なのです。申請して本人との面談・確認が出来ていれば、申請中にサービス適用工事の申請も出来ます。これはおそらく「急を要する」人が多いからでしょうね。

 

ということで工事の方の申請も、そのサービス事業者さんがすぐにやってくれました。昨年末24日に申請をして新年早々の5日にはもう工事の許可が出るというスピード感で、これも専門事業者さんならでは、と感心した次第。

 

さらに、許可が出た翌日にはもう工事に来てくださいました。冒頭の写真は階段への手摺設置風景、保険適用工事は事前の計画書が綿密に作成されている必要があり、全くその通りに施工されていないと保険が効かないのです。

 

そして昨日8日には計画書通り工事も完了し、これから完了届を提出する手筈。今回は対象者認定申請の方が未済なので、一旦は工事費全額をお支払いし、認定完了後に指定の口座に保険適用分がバックされることになります。

 

母の退院までに、という最初の想いは叶いませんでしたが、しかし今後父母共にお世話になるであろう「介護保険サービス」を、我が事として知ることが出来たのは大きな収穫。建築に詳しくても介護には素人の私でしたから。

 

両親とも新しく出来た手摺が大いに役立っていて、私たち家族も心配の種が減って嬉しい限り。今後はまた段差解消などの介護補助用具の購入も必要になってくるでしょうから、引続き同じ業者さんとお付き合いしていきます。

 

これまで高齢者グループホームやデイサービスセンターの設計に携わってきて、その建築的側面は理解しているつもりです。しかし「介護サービス」というソフト、そして介護保険制度というシステムについては無知でしたね。

 

両親を通して我が事としてその一端に触れることができ、「介護サービス」という世界の多様性にも思いを致すようになりました。「暮らし」を形にする設計屋としても非常に学ぶことの多い、貴重な体験ができた気がします。

 

via やまぐち空間計画
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