これまでにつくった間取りを語るシリーズ、その第32回です。今回も敷地の持ち味を取り込んで色々と考えておりますので、最後までお付き合いのほどを。敷地は約75坪、床面積が約45坪、2階建ての木の家になっております。

 

間取りをご覧になって、まずどこに眼が行きましたでしょうか?おそらく一番右側に描かれた駐車場か、一番左側に描かれたグランドピアノではないかと推察いたしますが、これらは共にこの敷地、この家の大きな特徴ですね。

 

まず車の方から。道路から玄関までに長い階段が見えているように、この敷地は道路との段差が2.4mほどもあるんですね。なので駐車場2台分を掘り込み、建物の基礎と一体化したコンクリート構造物で駐車場をつくりました。

 

もちろん駐車場の上に建物を載せることも可能ですが、今回は敷地面積に余裕があるし、建物がそんな道路際に無い方がよいと考えました。また、駐車場からは直に家の中、玄関の土間へと続くエレベータを設置しております。

 

音楽室の方はご家族のご希望によって設置したものですが、先に玄関から間取りをご説明していきましょう。玄関は先述の長い階段をあがって建物の一番北東の角あたり。玄関を入った先の動線は、2方向に別れて進むかたち。

 

正面からはそのままリビングへ、側面からは家族用のシューズクロークをへてトイレ+手洗いの前を通り、キッチン横へ出てきます。このルートがあることで、トイレをLDKから見えないようにする意味合いも兼ねていますよ。

 

駐車場の上に建物は載せない、と書きましたが、その代わりここは広いウッドデッキにしています。リビングは、北東にこのウッドデッキ、南西には樹々の茂るお庭、斜めの方向で2つの屋外スペースとつながる空間なんです。

 

ご家族のご希望は「リビングとダイニングは分ける」、そして「リビングの隣に和室」でした。なので和室は同じデッキへに面しつつ、南側で小さな専用庭ともつながる建物南東角の位置へ。ダイニングはお庭に面する位置へ。

 

リビングとダイニングを分けつつキッチンがその2つの間をつなぐ感じの位置関係、なのがおわかりでしょうか。キッチンは対面ではなく壁向きのご要望でしたので、対面側は収納カウンターとし、一部座って食事への対応も。

 

キッチンの真横には勉強や趣味のスペースも用意しており、その西側に防音対応の音楽室。どちらもご家族の暮らし方に合わせた設えですね。さらにペットのワンちゃん用の専用スペースも用意し、屋外へとつなげていますよ。

 

今回、かなり1階を余裕ある使い方が出来ていると思いますが、これは奥さまからのご要望で「洗濯物の動線は全て2階で済ませる」とあったのも大きいのです。洗面脱衣室+浴室、そこから続く物干場も2階にしましたから。

 

そして階段をあがった部分は広い共用スペースとし、ここを室内物干場として活用できるようにしました。共働きのご夫妻にはこういう場所が重要ですね。2階には、お子さん達の個室とご夫妻の寝室、それに付随する納戸も。

 

この納戸、2階の南東角で少し勿体ないようにも見えますが、立体的に考えるとそうでもないんですよ。リビング南側から和室にかけての下屋は屋根なりの勾配天井、ここの高さを確保すると2階南側は隠れてしまいますから。

 

私の間取りはいつもそうですが、極力「廊下がない」ように考えています。面積を無駄にしないという意味もありますが、部屋が多方向で窓をもつことで風通しがよくなり、屋外と多面的につながれるという利点もあるんです。

 

ちなみにこの地域では風は南北方向に吹き、日中は南から、夜は北からというのが多い傾向です。光を取り入れ、眺めを楽しみ、かつ上手く風を取り込む。「窓」を鍵として間取りを見る、というのもまた面白いものですよ。

 

via やまぐち空間計画
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