これまでにつくった間取りを語るシリーズ、第31回です。今回は東西に長い80坪ほどの敷地、図面を描いたのがA3の用紙なので、紙面に収まっておりませんがご容赦の程を。道路は西側、家も自ずと東西に長めとなります。

 

周辺環境はと言いますと、北側と南側には同じような宅地が並んでいます。なので双方とも隣家が近い位置にある。それに比べると東側は隣家までの距離が割と遠く、この敷地では東南東の方角がひらけている印象でした。

 

そこで土地利用計画は、西側に駐車場、敷地中央に建物、そして南東にお庭を設けて、それを楽しめるような建物形状を、というイメージになります。またここでは「北側に水廻り・南側に居室」のセオリーもそのままでOK。

 

次にお客さまのことを。ご夫妻とまだ小さいお子さんが2人、いずれは3人をご希望。部屋はLDK+来客用の和室、そしてLDK内に「勉強コーナー」も。畳が好きでご夫妻の寝室も和室がよく、子供部屋は将来仕切るつもり。

 

では間取りを玄関から見て参りましょう。玄関の土間部分は下屋(2階が載らない平屋部分)になっていて、その屋根がそのまま伸びて駐車場の屋根になっています。さらに下屋であるのを利用し、玄関には天窓を設けました。

 

玄関にはご希望の「土間収納」が付属しています。また玄関から客間たる和室に直接入れるようにし、奥へ進むとLDK(家族の間)に出ます。客間には床の間と収納、そして専用の庭があり、南東側よりも落ち着いた雰囲気に。

 

リビングは南側に出っ張ったかたちで、そこを大きな吹抜けにしました。出っ張ることで東と西両方の庭に抜けることを意図したものです。上の客間とも建具開放でつながりますね。TV・ピアノ・薪ストーブがここにあります。

 

TVについて割とよく承るのが「食事の時はTVが観られない間取り」です。これは最初の段階から意識すればそう難しくはなく、今回はさらに「LとDも一体でなく別のコーナーがいい」とのご要望もあったので、こんな位置に。

 

ここで私なりの重要なポイントは、キッチンからはリビングもダイニングもよく見えるということです。キッチンは家の司令塔というか、扇の要の位置にあるべきと思っているので、別コーナーのLとD双方につながる関係です。

 

そしてご要望の「勉強コーナー」は、キッチンとダイニングの横に。床に段差をつけ、いっそここも畳にしては?という提案です。カウンターのところには足を入れられるようにし、勉強にも寛ぐのにも使える場所のイメージ。

 

さて水廻りにいきましょう。キッチンからの家事動線は一直線になっていて、途中に勝手口、食品庫、トイレ。洗面と脱衣はご要望により別の部屋、洗面へは2方向出入りで回遊動線ですね。浴室には専用バスコート付ですよ。

 

2階は階段あがったところが広いフリースペースで吹抜けとつながっており、将来は点線の位置で3つに仕切ります。あとは当面ご家族全員で使う畳敷き寝室8帖とWIC、洗面とトイレ、そして家全体の納戸も設けられています。

 

2階では吹抜けが南側に出っ張っており、ここは南向きの屋根がそのまま下がってきて、南端部では1.5階くらいの高さになります。屋根勾配をそのまま現したダイナミックな吹抜空間もこの間取りの大きな魅力となるでしょう。

 

今回は逆さの「凸」字形の間取りでした。やはり単なる長方形よりも、出っ張りや引っ込みがあることで間取りには変化が生まれ、そこから光や風が家へ舞い込んでくる。それが私がつくる間取りの最大の「売り」なのかもw。

 

via やまぐち空間計画
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