大阪・兵庫・京都の緊急事態宣言は延期となり、私もなるべく不要不急の外出は避けるようにしています。また、これも昨年からですが、出来るだけ在宅勤務で済むようにし、事務所へ行く日は週の半分もないくらいですね。

 

今年は観測史上最も早い梅雨入りでしたが、「通勤がない」というのはこの時期とても助かりますよね。なので更に在宅勤務の日が増えている感じですが、実は私の自宅にはそれ以上に、この時期ありがたいことがあるんです。

 

それは、家の空気がジメジメしないこと。写真は私の家の壁を撮ったものですが、この白い面は全て漆喰塗りで仕上げたもの。柱・梁を含め大量に使われた木材とこの漆喰が「呼吸」をし、空気をサラサラにしてくれています。

 

専門的には「吸放湿性」と言いますが、要するに湿気を吸ったり吐いたりすることです。特に漆喰は「多孔質」といって目に見えないくらいの小さな穴がたくさん空いており、そこに空気中の湿気を吸着する性質をもっている。

 

そして、漆喰内部の水分量と空気中の水分量の差によってそれは起こります。空気中の湿気が多くなれば吸着するし、空気が乾燥する冬には、逆に吸着していた水分が放出されます。それを「呼吸」にたとえているわけですね。

 

正直言って、このような「木と漆喰の家」に住んでいる有り難みを一番感じるのが今、この梅雨の時期。そう思えるほどにこの「家がおこなう呼吸」の効果は大きいです。言葉ではお伝えしづらいですが、サラサラで心地いい。

 

世間一般で言えば、壁や天井に最も多く使われている仕上材料は、おそらくビニールクロスでしょう。これは例えばコーヒーをこぼした、なんて時に拭いたりしやすい素材です。このコロナ禍で、壁を拭いている人も多いかも。

 

壁を拭けるということは、湿気を吸わないのとほぼイコールです。ですから漆喰の壁は拭くことが出来ません。コーヒーが付いたら、放っておけば吸い込んでしまいます。吸放湿性能というのはそういう意味でもあるんですね。

 

でも、だからといって家の壁すべてがビニールクロスを始めとした「拭ける素材」である必要はないと私は思います。水汚れが出やすいのはおそらくキッチンや食卓周りで、そのあたりに気をつければいいだけのことですから。

 

思うに家というものは、同じ間取りで2つ並べて建てて「住み比べる」ことは出来ません。もしそれが出来たら一目瞭然というか一触瞭然でしょうが、仕上材料が人の五感に与える影響は、非常に大きいのではないでしょうか。

 

それは視覚に、そして触覚に関わる話でしょう。そして触覚の中には、その名の通り手触りや肌触りとして優しく温かみがある、という点の他に、今日のテーマである「空気の感じ」というのも強く人間の感覚に響いてくる筈。

 

私はずっと写真のような木の家づくりをやってきていますが、その最も大きな理由はこうした家が「人の五感を癒す」からだと自分で思います。それは、家とは環境から、そして社会から家族を守るシェルターであるからです。

 

自然環境と対峙するシェルターは、まず頑丈であってほしい。でも、この厳しい現代社会と対峙するシェルターに求められることは、なんといっても「癒やし」だと思うんですね。ホッとして自分を取り戻せる、そんな居場所。

 

私はそんな家をつくりたいので、この「空気の肌触り」というファクターはとても重要なんですね。呼吸する素材が生み出す空気、その癒やし効果は住めばわかります。築17年のこの家で、私はずっとそれを感じていますから。

 

via やまぐち空間計画
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