皆さま、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

年末年始に予約していた家族旅行もやむを得ず取り止め、新年は自宅で静かにスタートです。伊勢方面への旅も楽しみにしていたのですが、まあ家族五人が久々に顔を揃えたのですから、それだけで幸せと思わないと、ですね。

 

さて、今回の新年のお祝いに初登場の器がありました。もう一年以上前にヤフオクでゲットしていたものですが、昨年のお正月は私一人でしたので、初のお目見え。写真がそれ「越前塗羊歯文沈金吸物椀」で、五客揃いです。

 

お正月のお雑煮をこれでいただこうという算段で、年末に事務所から持って帰ってきました。羊歯(しだ)の文様が「沈金」で描かれた、なかなかに優美なもの。沈金というのは、漆を彫って痕に金箔を入れる技法を言います。

 

この吸物椀、このような箱に入っていました。

ヤフオクでの紹介もこの箱の表面と器の写真だけだったのですが、落札し手元に届いた箱を開けてみてちょっとびっくり。蓋の裏面はこうなっていたんです。

「昭和六十二年 五月吉日 結婚祝 梅田家・斉藤家」とあり、沈金師と塗師の名前が入れてあります。昭和62年と言えば今から34年前、私が20歳になった年。後に「バブル」と称されるようになる、一大好景気の時代でした。

 

きっと両家のご結婚お祝いにと誂えられたものなのでしょう。あくまでも推測ですが、その時代ですから結構なコスト、即ち手間暇をかけてつくられたお椀ではないか、そう思えるほど塗りも沈金も非常に美しく出来ています。

 

箱の様子から、そう古いものではないと考えていましたが、何とバブル期のものだったとは。しかも、ご結婚のお祝いにつくられた器だったとは。私の器集めも3年目を迎えましたが、こうした出自の器に出会ったのは初めて。

 

結婚祝いがどういう経緯でオークションに出品されることになったのか、ともすれば良からぬ想像もはたらきそうですが、それはやめておきましょう。正直なところ、この裏書きを見た私の印象は全く悪くなかったのですから。

 

あ、「おめでとう」の心、めでたさを寿ぐ心、そんな心を込めてつくられた器なんやなあ。そう素直に思えたし、これはちょっと説明がし難いですが、そういう雰囲気を纏っているように見えた。上の写真でもそう見えますね。

 

オークションに入札している時からお正月のお雑煮を入れることを想定していたので、まさにぴったりやん、というわけです。バブル期の塗り物ながら綺羅びやかさ、派手さはあまりなく、じんわりと美しいのもお気に入り。

 

そしてこんな感じでお祝いの膳に登場しました。

気に入った器で食事をするのはとても気持ちの良いものですが、特にその出自から「祝」「寿」の記憶をもった器というのを知りそれに相応しい舞台を用意してあげられたことも、私としてはちょっと誇らしいような気分です。

 

こういうことを書くとまた器バカと思われることでしょうw。しかし、やはり器も嬉しいだろうなあ、と思うんですよね。そんなことで正月恒例の白味噌のお雑煮は例年以上に美味しくいただき、まさに寿ぎ満喫の元日でした。

 

via やまぐち空間計画
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