これまでに私がつくった間取りを語るシリーズ、その第18回目です。今回は2階リビングの家、そして特徴的なこととして「屋外の考え方が家のかたちを決めている」、そんな間取りをご紹介してまいりましょう。

 

まず、そもそも2階にLDKをもってくるというのはどんな時か。まず考えられるのは1階だと日照条件が悪い場合。周囲を建物に囲まれているといった状況ですね。そして、2階からだと何らかの眺望が良い場合もあります。

 

以前も書きましたが、建築の構造面では、木造住宅の重要な耐震要素である「耐力壁」は、2階よりも地面に近い1階に多く必要になります。即ち、家の中で最も大きい部屋であるLDKが2階にある方が合理的、とも言える。

 

無論敷地次第、お住まいになるご家族の考え方次第ですが、2階リビングというのも状況によってはとても良いものだと私は思っております。ただ、残念ながら1階にあって2階に無いものがある。それは「お庭」ですね。

 

屋内と屋外のつながりを考える時、2階リビングではお庭の代わりを何か考えないといけない。そこで登場するのが「バルコニーデッキ」です。出来ることならこれをなるべく大きく確保して外とのつながりを演出したい。

 

今回の間取りでも、南側に大きなバルコニーデッキを設けました。そして1階ではその下が駐車場になるようにしてあります。そう、広いバルコニーデッキをつくる場合、その「下の利用法」も併せて考えるべきでしょう。

 

さらに、下階の使い方を想定したとしてもまた別の難点があります。バルコニーデッキは出来れば日照を充分に得られる南側に設置したいモノですが、そうすると必ずその下が日陰になるんですね。お庭が暗くなってしまう。

 

今回の間取りは、その「日陰」問題を解決すべく色々と考えたものです。まず、バルコニーデッキの幅は建物横幅の半分ほどに抑え、日陰にならない場所をつくる。日陰は駐車場まわりで、1階予備室には明るいお庭を確保。

 

そしてもう一点、建物の平面形を「凹」を逆さにした形にしています。そしてこの凹んだ部分でバルコニーデッキに穴が空いているのがご覧いただけますでしょうか。この穴から下のお庭に陽が落ちる、そんな仕掛けなんです。

 

建物の南側壁面が一直線だと、こういう「穴」はつくりにくいですね。穴があるとバルコニーデッキに出にくくなりますから。でも「逆凹形」平面にすることで、出入口は2ヶ所確保しつつ1階ホール前の「光庭」が出来る。

 

この光庭は玄関を入ってすぐ正面に見えるようになっています。ここがデッキの日陰であるのと、穴からの陽が差し込む場所であるのと、その雰囲気は全く違ってくるはず。バルコニーデッキに穴を開ける効果は大きいですね。

 

冒頭に「屋外の考え方が家のかたちを決めている」と書いたのはこのことでした。2階で穴に面しているのはダイニング、テーブルを壁に付けるのでここは掃出窓でない方が良い、あえてそういう配置にしてあるんですね。

 

他の部分も、無理に逆凹形にはめ込んだ不自然さは無いよう工夫しました。あくまでも形ありきの間取りでなく、間取りありきの形であるべきですから。しかし「やりたい形」ありきで考えないとそうならないのもまた事実。

 

思うに、これこそが設計屋の間取りづくりの醍醐味ではないでしょうか。2階リビングという大きな方針があり、その際の問題点を解決したいという想いがあり、その策となり得る「形」に向けて全てを収斂させていく過程が。

 

その意味で、この間取りは私にはとても思い出深いもの。その時々の個別解を検討しながら、常に一般的な問題点についても「より良く」という思考をもって臨むこと。そこにこそ良い家への突破口があると信じるものです。

 

via やまぐち空間計画
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