これまでにつくった間取りを語るシリーズ、第16回です。今回はインナーガレージが設けられた2階リビングのお宅を採り上げてみましょう。

 

敷地は約63坪、北側に道路がある土地です。となれば建物は極力北側に寄せ、東西の間口が広い家にした方が日照条件はよくなるはず。私の経験では、北側接道の場合その考え方と駐車場の取り方の間で悩むことが多いですね。

 

今回は当初からインナーガレージのご要望があり、2階リビングにもご理解があったので、車庫の上に居室を確保することにしました。そして来客用駐車場はいわゆる「横付け」として、建物をなるべく北側に寄せています。

 

室構成は1階が玄関、水廻り、ゲスト用の和室とご夫妻の寝室。2階がLDKと子供達のスペース。トイレと洗面台は上下階2箇所。そして今回、間取りをご覧になってパッと目につくのは多分2階の和室ではないでしょうか。

 

ここは、私がつくった間取りの中でもかなり珍しい「畳に掘り炬燵のダイニング」なんです。ダイニングが椅子でリビングが畳座、ということの方が多い気がしますが、でもダイニングが掘り炬燵でも全然「あり」ですよね。

 

以前にもご説明したことがありますが、居室に畳座と椅子座が混在する時、その「目線の高さ」をなるべく揃えたいと考えます。なので今回もこの畳レベルは椅子の高さ。掘り炬燵と言うより、周囲の畳が高くなった状態です。

 

そうすることで目線が揃い、なおかつ相対的にこの畳ダイニングの天井高さは低くなって空間に落ち着きが生まれますね。畳の下は収納にも出来るし、堀り炬燵を仕舞えばもうひとつのゲストルームにすることも可能ですよ。

 

普段は開けっ放しでしょうが、ゲストルーム使用も想定して二枚引戸も設置しました。ちなみに掘り炬燵西側のカウンターも下に足を入れられて、食事の時間以外はちょっとした書斎コーナー的にも使えるようにしています。

 

このご家族にはまだお子さんは1人でしたが、将来的な想定も含め子ども室は2つ用意し、内ひとつは当面リビングの延長でフリースペースに。お庭代わりのバルコニーデッキにはL・Dの他にここからも出られますね。

 

LDKが2階で子供部屋が1階、というのは出来れば避けたいですよね。やはり2階に来て「ただいま」と言ってから自室へ、という風にしたい。小さいお子さんなら尚更で、部屋が射るまではLDKの延長にしておけますから。

 

また、このお宅では玄関のシューズクロークを充実させました。ここがいわば納戸を兼ねていて、それ以外の収納は各室に必要な分を確保する、という考え方です。ご夫妻の寝室やキッチン廻りの収納も「その場」にて。

 

後ひとつ設計者の考えを述べるならば、それは階段の位置でしょうか。今回は2階LDKですので階段は玄関の近くに設け、LDKまでの移動距離が最短になるようにしましたが、LDKが1階だと全くその考え方が変わります。

 

無論お客さまの考え方にもよりますが、階段という上下移動の空間は結構な場所をとります。そしてLDKが1階ならば、そのスペースもLDKの一部になるよう考えたいところ。これは先述の子供部屋とも絡む話ですよね。

 

この間取りの階段は、踊り場部分を北側にちょっと飛び出させて、それが外観上のアクセントになるようにしています。踊り場というのは中二階ですのでその窓の位置も他とは違っていて、外観に変化がつきますから。

 

あ、インナーガレージを忘れていましたw。車を大事にされる方には「屋内」が大切なポイント、もし車いじりが趣味なら尚更ですね。車庫内の収納も確保、シューズクロークへの直接入口を設けることも可能でしょう。

 

また長くなりました、すいません。でも掘り炬燵やインナーガレージもしかり、また別のご家族には別のこだわりポイントがおありです。それらを言葉から絵に変換する作業は、まさに設計屋に与えられた大きな愉しみです。

 

via やまぐち空間計画
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