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私がこれまでにつくった間取りを語るシリーズ、第11回です。今回は木造3階建、それもいわゆる「店舗併用住宅」をご紹介しましょう。1階が小さなパン屋さん、2・3階がオーナーの住居という構成です。
敷地は42坪ほどある角地です。しかしほとんど三角形に近い台形をしているので、そのとんがった部分が駐車場、真ん中の広い部分が建物という配置計画で検討をスタートしました。お店と家に駐車場1台ずつ、ですね。
ちょうど角地のため、一方の道路側にパン屋さんの出入口、もう一方に住居の玄関をもってきて、お店のお客さまからは家の方の姿が見えにくいようにしました。お店サイドから考えるならそういう配慮も必要かと。
パン屋さんは入口を入ったところに売場があり、別にイートインのコーナーもあります。そして南の方角には広いウッドデッキが。大きな樹が植わったここにも、気候の良い時期には座席があれば心地よさそうですよ。
レジは売場と客席の間にあって、その奥が厨房と倉庫です。そしてレジ奥で住居部分とつながっていますね。この出入口の位置はレジ・厨房・倉庫のレイアウトによって位置の調整ができる想定になっています。
店舗だけで考えるならばもっと窓をたくさん設けたいところですが、木造3階建の1階ですので、耐力壁の量がかなり必要になってくる。お店の広さを抜けを確保しながら構造的にも成立させる、ここが腕の見せどころ。
住宅部分の1階は玄関と階段のみ。2階にLDK(家族の間)+畳コーナー、そして水廻りと納戸。畳コーナーは来客宿泊用としても想定されているので建具がついていますが、きっと普段は開けっ放しでしょうね。
こちらご家族はリビングも「床座」のスタイルということで、このように畳コーナーと連続する形がむしろのぞましい。以前も書きましたが「床座」と「椅子座」の違いは間取りに大きく影響します。このリビングにソファは置きにくいのがおわかりいただけますでしょうか。
また、店舗併用住宅では出来ればあまり「生活感」をお店まわりに出したくはないはず。生活感の最たるものである物干し・布団干しは2階バルコニーでおこなう想定ですが、これもお店側からは見えないようにしました。
3階は寝室2つといずれ間仕切りする想定のフリースペースです。個室は寝るだけでいいというご要望を受けて面積は2階へ配分していますので、広くはありません。でもせめて屋根下を活用したく、ロフトを設けました。
ロフトについては賛否あって、大きくなったら使わないから無駄という方も。でも私としては、小さいお子さんの間だけでも使ってくれたらいいし、自分の部屋が2階建てというのはそれだけで楽しい。ロフト推奨派ですねw。
無論屋根の断熱や熱気抜きなど色々と検討すべき事項はあります。でも、ちゃんと検討して対策をすればよいだけの話で、屋根裏が単に天井裏というのは空間がもったいない。ちなみに私の自宅にも屋根裏は一切ありません。
でも無論、そのあたりはお客さまとの話し合い次第。予算を抑えながら店舗併用住宅を実現するために、空間の無駄は極力減らす。家族が集う場所を最も広く、心地よく。その点でご共感いただいたから出来た間取りです。
最後に店舗併用住宅の法的規制について。ここは違いましたが、第一種低層住居専用地域にある敷地では、店舗部分の面積が50㎡以下などの規制があります。ローンの面でも店舗付は扱いが違ったりするので要注意。
専用住宅をつくるのとも、店舗だけをつくるのとも違う、店舗併用住宅ならではの課題というのは色々あると思います。でも家の一部が小さなお店ってとても素敵だし、設計屋としてやり甲斐ある間取りだと感じる次第です。