あれは・・・(完) | 【著者M】

あれは・・・(完)

「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!?見えますか!?」


目を開けると冬の空とお巡りさんの顔が見えてきた。

道路脇に停められた車の屋根から激しく放たれる赤い光。
私はそこでやっと事態に気づいた。


「何があったんですか!?」
険しい顔で声を上げるお巡りさん。
私はその顔を見ながら嘘を考えた。


「見たんです」


「何を見たんですか!?」


「顔の中心が黒くて、まるで目玉みたいな犬の顔を・・・見たんです」

私の言葉にあきれた様子で、その後すぐにパトカーは去った。



そして、私は歩道の片隅で呟く。


「どうせ信じてはくれないだろう・・・」