ちょっと長いホラー天邪鬼は、別のシリーズの番外編である。
若い祈祷師はじつは若くない、時間を超越した存在。彼が主人公の怪異の話を多数用意している。
ただ、怪異とは説明のできるもので、読者は推理して怪異の正体をつきとめなければならない。
天邪鬼の正体は、地盤沈下である。農業や酒造りに地下水を汲み過ぎて、地盤沈下した。地面が水平ではないから、物がひっくり返る、人が躓く。はじめは小さいものから、しだいに大きいものがひっくり返るようになる。
自然現象と人の行いは関係ない。しかし、なにか悪いことが起きると、因果応報の連想がはたらく。あそこの家は道に外れたことをするから、不幸が起こる。罰が当たったのだ。罰が当たるという言い方も、すっかりしなくなった。
たいがいのひとは家父長制、一夫一婦制というルールを守って生きていくが、中にはルールを無視するものがある。
それが例外的なものなら目をつぶるが、常習的になされれば世間の目はあそこは道に外れたことをする家だという評価が下る。
その家で悪いことがあれば、道に外れた行いの報いだと後ろ指を指す。
倫理観がずるずるの家庭で育てば、その子どもの倫理観もずるずるになりがちである。不倫をする親の子も不倫しがちなのは、そういった倫理観を学んだせいだろう。もちろん、親を反面教師として親のようにはならない子もあるだろう。

私の祖父は長男だったが、次男に家を取られた。落ち度があったわけではなく、不正な手段だったらしい。

だから本家には不幸が続くと母は言っていた。次男が本家を乗っ取った報いだと思っていたかもしれない。


ちなみに万年青は家の繁栄を願って引っ越し祝いに贈られることが多い。

一年中青々としているので、縁起がいいという意味だろう。それがひっくり返っているということは、家が滅びる呪いを意味しているのか?