観に行きました。







平日のお昼に行ったのもあり、外は春だけど場内のお客さんを見渡すと頭髪雪山みたい(大きなお世話!)

さて、ここからは本編の話を。


         


人々が行き交う街を背景に、タイトルとクレジットが流れる。

このクレジットがとにかくすごくて、

「榎本健一 古川緑波 柳家金語楼」(昭和の三大喜劇王)から始まり、

「三木のり平 若水ヤエ子 森川信 由利徹 八波むと志 南利明 伴淳三郎 清川虹子」などゞ、

昭和の喜劇、演劇、演芸好きにはたまらない名前の羅列。

さすが「協力 喜劇人協会」だけあるなァ。


そして本編は、2階建の風呂無しアパート外の会話から始まる。

ご婦人同士の

「あそこのお店、コロッケ1円値上げして6円になったのよ」

「まぁ高い」

「あそこのコロッケ、じゃがいもばっかりでお肉なんてほんのちょこっとしか入ってないのにねぇ」

 (木琴と鉄琴と太鼓を合わせたような音が入る)→コメディっぽい音


このやり取りで、客席に最初の笑いが起きる。

64年前(1960年公開)の笑いが、現代でも日常会話の中の笑いとして通じるのが、すごい


またアパートの住人が出てくる中で、

スクリーンに映っただけで客席のおじさん笑いが起きてるのが「喜劇人の凄さだなぁ」と肌で感じた。さすが頭髪雪山の客席!素晴らしい!

そして、住人の中でも、やっぱり三木のり平さんはすごい。登場した時、1番客の笑い声が大きかった。

床屋でのシーンが1番笑ったなぁ。髪を切る椅子のバネが強すぎてひっくり返りそうになったり、あの動きの軽妙さがすごい!まさに科白!さすが"何はなくとも三木のり平"






また印象的だったのは、エノケンがうなぎやでウナギを掴もうとして掴めなくて、

そこから桶をひっくり返したりドタバタあって「あっツル、ツル、ツルツルツルツル〜♪」からの急にミュージカル調になるのが、

「あっ!『不適切にも程がある』だ!」と、何周もしてタイムリーな演出でした。



        



ここからは、印象に残った場面と台詞を。


・「肩揉みながら、懐具合が分かる」

・「"こうのしんすけ"って名前じゃあ、ここには住めないよ。このアパートの大家は落語が好きだから、住んでるヤツはみんな落語に関係する名前なんだよ」

・「"かねをくれたのむ"」の電報の読み間違え

(蚊を潰して)「エライ真っ黒な血だねェ、毒気がある人の血を吸ったんじゃないか?」

(知ったかぶりのやつを見て)「落語の『酢豆腐』じゃないんだから」

ハムで仕返しをする。

・「お嬢さまはオテンバのノータリンでございます」

(床屋で)火葬場で拾った剃刀で、髭を剃ろうとする

・「盲(めくら)は寝てると見えるけど、目が覚めると何も見えなくなる」

(安藤鶴夫をもじった名前で)「垂乳根仕立ての名前だねェ」

・カバンのように大きなそろばんを持ち歩く、借金の取り立て

・「バカでもチョンでも使い道があるもんだ」

・トニー谷のマーシー感(個人の感想です)

・「女を解放する為に13万円持ってこい」(今だと800万円ぐらい?)

ここから『猫の皿』のような展開へ。

・訛りすぎて何を言ってるか聞き取れない巡査


そして最後に大家のエノケンが「新しくこのアパートに引っ越してきたから」と、住人へ紹介したのは、なんと桂文楽!!!

桂文楽が桂文楽役で出演していました。

客席からは「おぉー!」「すげぇ」「本物だ」「最近見かけないねェ」なんて言葉が飛び交い、ざわめく劇場内。

スクリーンの中だけど、ご本人が舞台上に居る感覚がすごく楽しかった。


エンディングは、アパートから引きの画になり、新しい団地がどんどんと建っている映像に「終」の文字。


         


感想総括!

まさか桂文楽をスクリーンで観えるとは思わなくて"びっくりしたァもう"でした。

そして1つのシーンでエノケン、ロッパ、金語楼、伴淳三郎、三木のり平、森川信、八波むと志、若水ヤエ子などゞを一同に観えるのは、たまらない。すごい映画だったなぁ。観に行けて良かった!


喜劇映画は、日常のバカバカしい笑いに、ほんの少しの哀愁を感じられるのが、私は好きです。

そして劇場から出たら「あーお腹空いたなぁ〜」ってすっきりする。


やっぱり笑いがないと、生きていけないですネ。