意を決して、私はホテルに行った。


酔い潰れかかった相手を引きずるようにして、部屋を選び、中へ。


ここへ来る前に温泉に入ってきたはずなのに、緊張からか私の身体は汗ばんでいた。


後ろから抱きしめる腕を解いて


ちょっとシャワー浴びてくる。

酔いも回ってるだろうし、眠たければ寝ててくれていいからね。


そう言い残して、私は風呂場へ行った。



ここまで来てはみたものの。

これから私は、あの人と身体を重ねるのだろうか。

この10年、一切そういう事はなかったのに。


しかし、こういう場所に来たという事はそういう事があってもおかしくないのか。

むしろ、いっそそうなれば昔の気持ちに踏ん切りがつくのだろうか…


シャワーを浴びながら、そんな事がグルグルと頭を過ぎっていた。


とりあえず風呂場から出て、身体を拭いて部屋へ。


ソファーに腰掛けると、彼も隣に腰掛けて私の方へ目をやる。


私は行きがけに買っておいたチューハイを煽るように飲んでいた。


大丈夫?悪酔いするよ


無理…素面じゃ乗り切れない…


そう言いながら酒を煽る私の手を止めて、こう言った。


もっと早くこうしておけばよかった。

充分なくらい気持ち伝えてくれてて、分かってたはずなのに。

時間かけすぎたね…



それからは、お察しの通りだった。



想いを伝えて、これ以上はと閉じ込めて。

あれから10年も経とうとしている時。

せめて今、私が一人だったら。

何で今なんだろう。何であの時じゃなかったのかな。


それから私の気持ちは再燃していく事となる。


例えるならば。

一羽の蝶が蜘蛛の糸に引っかかったかのように

抜けられない沼へと落ちて行った。