夜話 301 思い出の八木書店 | 善知鳥吉左の八女夜話

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福岡県八女にまつわる歴史、人物伝などを書いていきます。

夜話301思い出の八木書店


久しぶりに早寝した.、といっても例により着いたばかりの古本目録に目を通していた。

「Мさんから電話バイ」の息子の声でとびおきた。

Мさんは善知鳥のパソコンの先生。

「何事ならん」と緊張したら「タモリのなんとか番組で神田の古本屋街の案内をやっている」とのお知らせ。

Мさんは一月ほど前には同じタモリの番組で菊坂町のタドン坂案内をDVDにとってくれた。戦時中善知鳥は坂下に下宿していた。                       
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古本屋街の番組で声かけてくれたのは、いつも思い出話に神田の古本屋街のことを善知鳥がしゃべっているからのご配慮。

早速テレビに向かった。

カメラが三省堂のあたりから古本屋街の看板を流した。

いきなり「八木書店」の看板が流れた。文字通り筆書きの「八木書店」の看板。

たちまちその看板は消えて、なんとかという地図専門古書店のなかにカメラは入った。

善知鳥はキツネにつつまれた心地。

ほんのさっきまで布団のなかで手にしていたのは、その八木書店の古書目録だったのである。

厚さ一・五センチもある、近代文学特集と副題がついている。

善知鳥はこんなとき「年とったおかげ」と大いに喜ぶ。

すべての周りの現象は刻んだ時がもたらすもの。若いもんと生きてる時間が違う。経験がものいうのが老人力。(経験があさいパソコンは別)

善知鳥と八木書店は黄檗僧独立から始まった。

上京したら例によって神田古書店まわり。

八女市山内にいたこともある黄檗僧天間独立の研究書を求めて「八木書店』を初めて訪ねた。四十年まえのこと。

善知鳥は店員の返事応対でその店の信用度を試すことにしている。

そのときの若い店員は「独立だけのものは店には無いが、これの後半は彼の伝記になつている」と言って『深見玄岱の研究』を探してくれた。深見玄岱は独立の書の弟子だった。同書で玄岱が献じた独立の木像が埼玉の平林寺にあることも知った。八木書店は大いに気に入った。

その本は店員のいうとおり独立研究の最高のものになった。

「八木書店」は上京のたびに訪ねる古本屋になった。

千葉俊郎の「石橋忍月全集」と「石橋忍月研究」もここからが出た。

いずれも謹呈として善知鳥に届いた。著者の配慮である。

いらい出版案内・古書目録が届くようになった。

「タモリ・八木書店・Мさんの親切」とつづく糸は確かに時のきざみがより合っている。

若い者にはこの経験の糸は細くてたよりにならない。

老人は楽しい。(敬称略)