私立中学と道徳の授業 | 中学受験の小箱 by 元私立中学教師 yamesen

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塾とは別の角度から学校選択のヒントを書いています。

 小学校の道徳に評価が導入されました。中学校では来年度から始まります。現場にいるこどもや教師をどうやって励ますことができるかと案じています。

 教師は、人間が安易に評価することのできない大切なことがあると知っているからこそ仕事をしているはずです。そうでなければ成績なんかこわくてつけられません。
 評価できることに限定して評価しているという謙虚さがあるはずです。
 算数で0点を取っても、その子を100点の子と比べて軽んじていいわけではありません(公立小学校では100点の子を教員のために利用することもあります)。

 道徳は、社会の中での善悪を知って行動することです。
 道徳は数値では評価しませんが、自分のいないところで誰かが知っている範囲の言動だけで、自分をその人に「あなたはこんな人だ」と上から決めつけられて、さらに文章に残されるのは気持ちがいいものではありません。

 同じ言葉でも、Aさんに言われれば素直に受け止められるけれど、Bさんに言われると「ちょっとちがう」と思うことがあります。こどもと担任の関係も同じでしょう。

 ほめことばならいいという人がいるかもしれませんが、私は「あなたは道徳的だ」といわれたらいやです。自分がそうでないことを感じているので(そもそも「道徳的」というのはほめことばではない気もします)。

 道徳における私の評価の重点と元同僚の評価の重点はかなり違うでしょう。教科の評価より大きくぶれます。
 そうでなくても私立の場合は、学校ごとでかなり評価する軸は変わってくるはずです。学校によって、そのこどもがどんな社会の担い手になって欲しいかという願いは違います。道徳こそ、学校の姿勢が反映されます。

 道徳の授業=宗教の授業ということもあります。さらに、その濃さも学校によって違います。

 青年期の6年間その価値観の中で過ごせば、受け入れるにせよ、反発するにせよ、その後のものの見方に大きく影響します。
 学校選択はお子さんを無視してはいけませんが、どんな子に育って欲しいかという保護者の気持ちも大切なのです。
 中学入試は「選ぶ」という積極的な行為なので、さまざまな学校の価値観をよく見極めて、こちらが「選ぶ」のです。
 
 当然ですが、志望大学合格率の高い学校に通えば、必ず志望大学に合格するとはいえません。志望大学合格率の高い予備校を選ぶのが賢明です。
 そうではないというのなら、その学校は大学受験予備校に限りなく近いのです。そして大学に合格することがよいことという価値観が支配的だとも考えられるのです。