教員が生徒の結婚披露宴に招かれると、しばしばスピーチを頼まれます。喜んでお役に立ちましょう。教員で断る人はいないと思われます。
教員用にヒントをメモしておきます。教員以外のどなたにも応用していただけます。
①自己紹介はていねいに。
ここは学校ではありません。教員だということを知っているのは生徒とその親、同級生だけです。たった数名しかいないのです。
悪い例)「ただいまご紹介にあずかりました○○です」。
良い例)「○○県○○市の○○高校で○○さんの○年生の時に担任をしていた○○です。授業は○○を担当しておりました。当時○○さんは○○委員として活躍していました」。
②言って欲しいこと、言って欲しくないことを予めリサーチする。
スピーチを受けた時点で確認します。一生の大事なので特に言って欲しくないことを伝えてもらうことが大事です。
強調してほしいことがあればそれも聴いておきます(ここは「ご自由に」と言われることが多い)。例をあげてスピーチを作りやすくなり、一石二鳥です。具体的なエピソードを交えてそれを組み立てるのはスピーチする側なので、これをしても、別にサプライズ感が減るわけではありません。
③結びの言葉は簡潔に。
とかく、教員は教訓を言ったり、気の利いた(と自分で思っている)フレーズを使ってみたりしがちです(格言も好き)。それ以上に、同じ言葉を繰り返して念を押す人が多いのです。すっきりさわやかに結びます。
悪い例)「……この言葉を辞書で引くと……」
「心からおめでとうと申しあげたいと思います。おめでとう、本当におめでとう、もうひとこと言わせてください。○○さん、××さん、ご結婚おめでとうございます」。
良い例)「○○さん、××さん、どうぞお幸せに」
以上ですが、くれぐれも長くならないように必ず練習しておきます。
私がある元同僚の結婚式に招かれた時、驚いた挨拶がありました。彼の父上が親族代表でこんな挨拶をしたのです。その方はある私立大学の国文学の教授でした。
新郎は山田太郎。新婦は鈴木幸子としておきます。
……幸子さんは、太郎と結婚して、「山田幸子」になるわけですが、二人で協力して人生を築くのです。「山田」の「山」と「鈴木」の「木」を組み合わせて「山木太郎・山木幸子」として新たなスタートとしてほしい。いや「鈴木」の「鈴」と「山田」の「田」を組み合わせて「鈴田太郎・鈴田幸子」でもいいのです。……
まあどちらにしても「お幸せに」ですが、これが『披露宴のスピーチ・親族編』というような本の例文そのままだったのでした。
生徒さんをがっかりさせないようにこれだけは避けましょう。