20日の正御影供しょうみえくでは毎年、お大師さまの御影みえ(お姿の絵)に描かれた念珠・水瓶すいびょう木履ぼくり(木製のくつ)の三点を仙菓せんかのお供えと共に荘厳しています(写真上)。これは私の著書『弘法大師御影みえの秘密』(青山社刊・写真下)を上梓じょうしするにあたって、こうした法具を復元したことに由来します。

 

 

 

真言宗の僧侶は何をするにも、まずはお大師さまに礼拝します。しかし、その御影がどんな意味をなすのか、どんなご誓願をもってあのように残されたのか、まったく教えられていません。私はその一つひとつについて、自分の考えを発表しました。これはお大師さまに結縁した、私の人生の使命であると考えたのです。

これらの法具は、残念ながら高野山にも残っていません。江戸時代の目録には書かれていますが、御影堂みえどう(お大師さま居住の場所)にも霊宝館(宝物館)にも残っていません。これはとても残念なことです。

念珠は赤いので、よく瑪瑙めのうではないかといわれますが、中糸がいて見える以上、これは琥珀こはくに間違いありません。また、木履は福山の〈日本はきもの博物館〉にも所蔵されていないほど貴重なものです。興味のある方は、毎年3月21日(20日)の正御影供にご参詣ください。

お大師さまの本は数かぎりがありませんが、この御影について書かれた類例はきわめて希少です。私の著書にもご縁をいただけますれば、幸甚のかぎりであります。