人の心を一つにするには、何が必要でしょうか。言葉をもって、よく説き聞かせることでしょうか。あるいは規則を設けて、これを守らせることでしょうか。もちろん複数の人が集まって何かをする時、いずれも必要なことです。しかし一方、言葉への反感や規則への反論が生ずることもまた否めません。
ではいったい、ほかにどんな方法があるのでしょうか。大胆なお話をすれば、私はずばり、〈お祭り〉をすることではないかと思っています。つまり、言葉を超越した儀式が必要だという意味です。お寺でも神社でもお祭りで心を寄せ合い、お供えのお下がりをみんなでいただく直会(宴会)をすれば、黙っていても人は仲よくなります。だから、お祭りには人を夢中にさせる何かがあるのです。〈政〉とは〈まつりごと〉だというではありませんか。
しかし、お祭りは年に一度か二度しかありません。どうすればよいのでしょう。実は、お寺にも神社にも〈ご祈祷〉があるのは、そのためなのです。みんなで集まってご祈祷を受けることもまた、お祭りだということです。特に、会社の社長さんはこのことをしっかりと認識していただきたいと思います。
一昨日、ある土建業社の方々30人以上があさか大師に寄り合い、一同で工事安全と商売繁昌のご祈祷を受けました(写真)。
私は土建業社とはご縁が多く、このようなご祈祷をどれほど経験してきたか数知れません。そして、いずれの会社も事故がなく、あっても小難に留まり、つつがなく業務をまっとうしています。それは取りも直さず、ご祈祷というお祭りによって、みんなの心が一つにまとまるからなのです。
一昨日の方々も、最初から最後まで合掌を止めることなく、とても真剣でした。そして、皆様がすがすがしい気持ちでお帰りになりました。チームワークもよく、私は「この会社は必ず発展するだろう」と思いました。これは社長さんがどんなに言葉で説いても、決して成し遂げられることではありません。
お正月の初詣以来、これほどに本堂が埋まったことはなかっただけに、私もまた満ち足りた一日になりました。この気持がお寺の力となり、その力がまた、次の力を呼ぶのです。以心伝心は人もお寺も同じです。そして、心を一つにする方法でもあるのです。