痴漢えん罪事件の法律監修の途中で、
別のドラマを見ていたら、冒頭から・・・・・

満員電車のシーン
高校生とおぼしき美少女(竹富聖花)
その後ろに、いかにも怪しい中年男(津田寛治)
電車が終点の富岡駅に着いたとき
少女は中年男の腕を掴んで
「この人、痴漢です。」
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原作 柚月裕子「検事の死命」(宝島社刊)
あれ?検事の死命なんて大げさなタイトルだから、てっきり殺人事件かと思っていたのに、これも電車の中の痴漢事件かよ。

ということで、連続(電車内)痴漢えん罪事件の発生とあいなりました。

このドラマの法律監修
野元学二君
大学のゼミの後輩だ。弁護士をしていたが、俳優の道を志し、一時期弁護士登録を抹消。俳優業に専念。
野元学二の芸名で、NHKの裁判員ドラマ「てのひらのメモ」(スーちゃんの遺作)で裁判官役(右陪席)を演じた。
その後イギリス留学などを経験し、役者の道を邁進するが、今は弁護士登録を復活させ、二足のわらじを履く。
弁護士 野元学二
俳優 ノモガクジ
本作品でも、ノモガクジとして裁判官を演じている。

さて、後輩の法律監修の法律監修だと、忖度するべきか、より厳しく糾弾すべきか。


事件は富岡駅で起きた。
富岡って日本海側かと思っていたら、とんだ方向音痴で、実際には東日本大震災で駅舎が流されてしまったほど、太平洋側だった。福島県の浜通りだ。
福島県双葉郡富岡町大字仏浜字釜田
管轄裁判所は、地裁なら福島地方裁判所いわき支部、簡裁なら富岡簡易裁判所だ。
ドラマでは、米崎地方裁判所・簡易裁判所の管轄と言うことになっている。架空の裁判所だ。米崎県米崎市という架空の都市だ。

主人公の佐方検事は上川隆也。真面目で一本気の正義漢を演じさせたらピカイチだ。でも他の役はできない。
佐方検事付きの検察事務官増田陽子は、志田未來ちゃん。子どもと思っていたが、検察事務官になっていたんだね。

志田「最初の事件10時です。よくある痴漢事件です。パッパと片付けちゃいましょう」
上川「そんな事件はない。よくある事件なんてのはない。どんな事件にも関係者の人生がかかってる。」ほーら、バカ正直な検事だ。

10時になる。被疑者の弁解録取だ。
被疑者は、本多弘敏、私立慶明女子高校の教師。

弁解録取中の被疑者の足下映像
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はい、これNG
後輩だから、厳しく糾弾するぞ。

これがNGな理由は何か?

正解はここにある。

夕べ、続きをかなり長く書いたのだが、アップに失敗し消えてしまった。
だから、ダイジェスト復元。許せ。


被疑者の本多弘敏は、本多家の娘婿。
本多家は、地元では、歴史、由緒、経済力、政治力の全てを兼ね備えた名家だ。

本多家の当主、江波杏子。ど迫力である。
本多家の人間が、破廉恥が行為をするはずがありません。調べるまでもありません。今に分かります。
と上川を追い返す。

顧問弁護士は、今示談すれば、大事にはなりません。と江波杏子にご注進。
被疑者が容疑を否認しているのに、有罪を前提とする弁護活動を発案するのは、絶対的なNGだ。
このことは、下記で勉強済みだね。

江波杏子「示談はしません。この事件はえん罪です。事実がどうであれ、その線で進めて下さい。」
顧問弁護士「わかりました。」

真実は有罪であっても、無罪を獲得せよ。という厳命だ。地元の有力者は我が儘だね。
顧問弁護士は大変だね。
この事件でしくじったら、顧問弁護士クビだろう。

上川コンビは、帰りに富岡駅による。
駅員に事情聴取。
警察が来る前に本多がトイレに行った事実を聞き出す。急にお腹が痛いと言い出してトイレに行ったが、個室に入ることもなく、入念に手を洗っていただけだったと。

志田「でも、トイレくらいのことで嘘をつく必要があるでしょうか」
上川(科捜研の記録を見ながら)「逮捕直後に本多は手の付着物の採取をされている。鑑定結果は、被疑者の手から被害者の着衣の繊維は検出されなかった」
志田「じゃあクロってことですね。」
上川「いや、まだ兆しが見えてきただけだ」


痴漢犯は、元々スケベ人間であることが多い。
警察は、近くのレンタルビデオ店での借り出し履歴を調べたが、アダルト系の借り出し記録はなかった。
上川は、名家の人間が、アダルト系のVIDEOを借りるのに、近所の店を使うはずがない。捜査範囲を広げて捜査して欲しい。と警察に依頼する。
担当の生活安全課松岡課長(田山涼成)は、もうこれ以上の捜査はできません。と苦々しく断る。
そして警察署長に、上川検事には断って諦めて帰って貰ったと電話で報告する。
安堵する警察署長。
松岡課長は、本多がクロだったらどうするんですか。と聞くと、署長は、心配するな。たかが条例違反だ。と軽くあしらう。
署長から、たかが条例違反だ、と言われたことに苛立ちを隠せない松岡課長。
その署長室には、本多家の顧問弁護士がいた。
本多家からの圧力に署長が屈していたのだ。
どんな圧力があったのだろう。それとも賄賂か?
江波杏子の調べるまでもありません。今に分かります。とは、こういうことだったのか。

確かに、痴漢はスケベ人間で、スケベなAVを借りることもあるだろう。しかし、スケベでAVを借りる人が全員痴漢をするわけではない。こういう人格捜査がえん罪を引き起こす原因の一つと思われる
法律監修の野元君、この捜査方法を、どう考える?

警察の協力がえられなかったので、上川と志田が手分けして、エリア内のビデオ店を虱潰しに捜査して回る。
検事さんって、そんなに暇なのか。
空振りばかりが続き、ここで最後ですね。と2人で1軒のビデオ店に乗り込む。

上川検事も、人格捜査に拘るのかよ!

店員に、本多の利用履歴を尋ねていると、近くで聞いていた客が、いきなり走って店を出て行く。
追いかける上川。追いついて取り押さえる上川。
いつもデスクワークしている割には、運動能力が高いじゃないか。バカ正直な正義感が役に立ったのか?

男はバーのマスターで、常連客の本多から頼まれて、痴漢AVを自分名義で借りて、本多に又貸ししていたのだ。
人格証明に成功?

上川は、再度、生活安全課を訪れ、本多が痴漢AVを借りていたことの証拠を掴んだと報告する。
そして、
「痴漢は常習性の高い傾向にあります。他に余罪が見付けられれば、今回の事件を裏付ける材料になる。その手掛かりがないか、日誌や調書を調べさせて頂きたいんです。」
★まだ、人格捜査を続けようとする上川

松岡課長「できないものは、できないんです」
上川「なぜですか」
松岡課長「いい加減にしてください。どうかしてますよ。たかが条例違反じゃないですか。」
上川「たかが・・・もしクロだったら、犯人を野に放つことになるんですよ。どうしても見せて頂けませんか。分かりました。別の方法を考えます」
警察署を出て行く上川ら。
自分が署長と同じ「たかが条例違反」と言ったことを後悔する松岡課長。上川らを追いかける。
松岡課長「あんた、俺たちが協力しない理由、分かってるんですよね。なのになんで、いつまでも諦めない。なぜ、この事案に拘るんだ。」
★つまり松岡課長も、本多家から圧力がかかっていることを知っているのだ。

上川「拘っているわけではありません。我々検察の仕事は、罪をまっとうに裁くことです。そのために、全てを洗いざらい調べ尽くして、起訴か不起訴かを判断します。どんな事案にも違いはありません。」
松岡課長「待ってください。先月、上郷町の空き巣事件、あれもあなたの担当でしたね。別件の裏付け捜査なら、私に止める理由はありません」

★松岡課長も、署長の「たかが条例違反」という言葉に反感を感じ、他方、上川の熱意に押された結果だろう。

上川「ありがとうございます。」
二人で膨大な資料を洗い直す。

資料の中から、本件に良く似た痴漢事件を見付ける。犯人は挙がっていない。
被害者に会い、数枚の写真から犯人の顔を特定して貰った。本多だった。
確信を持つ上川検事。

★口頭で証言を貰っただけでは、形に残らないでしょう。検事調書を作りなさい。後で面倒なことになるよ。

★あれ?
余罪を、犯罪立証の証拠に使ってはダメなんじゃなかった?

これは難問だから、ここでは保留にしておこう。


そんな日に、霞ヶ関赤レンガに異動が決まっている検事正から、転勤前に一度会いたいと夕食の誘いが入る。

★霞ヶ関に赤レンガでできた建物がある。
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旧法務省庁舎だ。かなり古い建物だ。重要文化財に指定され、資料館などに使われている。
現在は、赤レンガの裏手に高層ビルが建ち、法務省、検察庁(東京地検、東京高検、最高検)は、そちらに移転している。
赤レンガに異動。というのは、実際に赤レンガに勤務するという意味ではなく(それでは、資料館の館長になってしまう)、裏手のビル、東京地検等の中央に異動になるという意味で、栄転を意味する。

刑事部長と二人で料亭に行くと、検事正と衆議院議員大河内(寺田農)が居た。
衆議院議員は自分の知り合いの話として、痴漢で逮捕され起訴され、無罪にはなったが一生を棒に振った男の話をする。実際に無実だったのかは分からないが、たかが条例違反で一生を棒にふるようなことなのか。と。
これは、明らかに、本多事件から手を引け。という圧力だ。
議員は、追い打ちを掛ける。
私の後援会長から、君に是非、よろしく伝えてくれと言われた。という。後援会長は本多敦子(江波杏子)だ。
露骨な圧力である。
上川「本多弘敏の件に、便宜を図れと仰っているのでしょうか」
議員「解釈は任せる」
上川「だとしたら、ご期待には添えません。私は起訴すべきだと考えています。」
検事正「佐方。口を慎め」
上川「お言葉ですが、私は、罪をまっとうに裁かせることが、己の仕事だと思っています。」
部長「佐方!」
議員「威勢が良いのは結構だが、あまり跳ねると池から飛び出す。ま、せいぜい気をつけろ」
検事正「本多弘敏の件は、不起訴にすべき事案だ。私が決裁印を押すことは、断じてない。」

栄転する検事正の経歴に傷を付けてはならない。という忖度もあるのだろう。

★ただ、部長は伊武雅刀。検事正は山崎銀之丞。伊武雅刀より実年齢で12歳若い。ドラマの中では、20歳くらい若く見える(伊武雅刀が老けすぎ?)。
検察庁は、年功序列(正確には司法試験合格年度順)の社会だから、このような逆転現象は絶対にあり得ない。
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★あれ?
福島県、もとい、米崎県レベルの規模の検察庁の場合、起訴決裁は、検事正じゃなくて、次席検事がするんじゃないかな。
検事正は、いちいち全部の事件に関わってられないぞ。
だから検事正の決裁印は不要だ。
野元君、どうだろう?


料亭を出て、小料理屋で飲み直す部長と上川。
部長「心証はクロなんだな?」
上川「はい」
部長「片や被疑者は富と名声を備えたデカい後ろ盾を持ってる。片や被害者は富も名声も人脈もない。社会的信用も、権威という点でも、どちらが有理化は明白だ。勝てるのか?」
上川「さあ。ですが、失うものがないからこそ、真実を貫く。そんな人間もいると思います。明日、起訴状を提出してきます」
部長「それが何を意味するのか、分かっているのか。青臭いこと言うな。つまらない意地で、上を敵に回すようなことになれば、検察社会で生きていけなくなるぞ。諦めろ。お前を、ここで死なすような真似は、俺はできない。」
上川「お言葉ですが、ここで屈して検察に残っても、検事としては死んだも同然です。」
部長「検事の死命をかけるってわけか」
上川「部長にご迷惑はおかけしません」

★ここが、バカ正直で一本気な上川検事が、正義を貫くために、検事の死命をかける。っていう、このドラマの核心部分なんだね。

でも、刑事部の検事が検事正の指示に反して暴走したら、必ず部長に迷惑がかかるよ。迷惑はおかけしません。って無責任な言葉だなあ。


翌日、本多弘敏の起訴状を持って決裁印を貰いに検事正室にいく上川。
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★上川検事。決裁貰いに行くなら、事件記録一切を持って、これこれ、こういう捜査をして、こういう証拠が集まりましたから、この起訴状で起訴したいと思います。決裁をお願いします。っていうんだろう。
起訴状1枚だけ持って行って、決裁くださいはダメだろう。どう思う。野元君。

夕べの流れから、当然、決裁を断る検事正。

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上川「では、あれは単なる飾りですか?秋霜烈日の白バッチを与えられている我々が権力に屈したら、人々は何を信じれば良いんですか。」
上川「決裁印が頂けないなら、私の一存で起訴状をだします。」
検事正「それなら、辞表も一緒に出せ」

刑事訴訟法
第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。
検察庁法
第四条 検察官は、刑事について、公訴を行い(以下略)

検察官が公訴提起するのに、上司の決裁が必要だ。とは規定されていない。
内部規約にあるかもしれないが未調査。
以下、wikiより

地位

検察官はそれぞれが検察権を行使する独任制官庁である。検察庁は検察官の事務を統括する官署にすぎない。検察官は刑事裁判における訴追官として審級を通じた意思統一が必要であることから、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統に服する(検察官一体の原則)。
独任制でありながら、検察官一体の原則に縛られる。という矛盾した官庁である。
独任制なんだから、決済なしでも、ひとりの判断で起訴できるはず。
でも一体の原則があるから、組織の意向には従わなければならない。
面倒くさいから、検察官にはならなかった。

そこに入室してくる伊武雅刀部長。
部長「佐方。お前には無理だ。」
部長「検事正、実は先ほど、高検の次席検事と話しまして、私の大学の先輩にあたります。今回の件を相談したところ、クロなら起訴すべし。後はなんとかする。そう言って頂きました。」
検事正「大河内先生の顔を潰すつもりか」
部長「裁判でクロと判断されれば、もはや白くしろとは言えないでしょう。」
検事正「負ければ、えん罪で本多家を起訴したことになる。君たちのクビだけじゃすまんぞ。」
部長「検事正は、たしか本日、出張のご予定でしたよね。今回の起訴手続きは、検事正が出張中に起こった暴挙です。責任は私が負うことになるでしょう。」
検事正「勝手にしろ。今の話は何も聞かなかったことにする」

ここでドラマの放送時間もほぼ半分。
これから法廷闘争に入るんだけど、本当に、クロを立証できるのだろうか?

冷静に考えて
①被疑者は否認している。
②被疑者は町の有力者の家系にある。
③被害者=目撃者は一介の女子高生
他に目撃者はいない。女子高生以外の証拠は
④痴漢AVを借りていた人格立証
⑤過去に痴漢の余罪(未証明。証人あり)
の2つがあるだけだ。
⑥トイレに行って手を洗った不審な行動
もある。
さて、この材料で、検事の死命をかける起訴を維持できるのか。有罪に持ち込めるのか。
はなはだ疑問だ。
検事正と喧嘩をし、国会議員のメンツを潰し、上川と伊武雅刀は、泥船に乗ってしまったのではないか。これが正直な感想だ。

上川が、被害者の女子高生に電話をして、起訴したことを伝える。
上川「君にも法廷で証言して貰うことになる。詳しいことが決まったら、また、連絡する。」

痴漢えん罪殺人連鎖では、
この種の事件で被害者が法廷で証言するのは、非常に珍しいことだ。とされていたが
このドラマでは、検事が当然のように「君にも法廷で証言して貰うことになる」と言っているよ。
どっちが本当なの?

検事は、事前に、女子高生の供述調書を作成しているはずだ。そこには、女子高生の被害状況が詳細に記載されている。それが証拠採用されるのは、被告人にとって不利だ。できれば証拠採用されたくない。
検事が女子高生の供述調書を証拠請求してきたときに、弁護人は証拠採用に不同意意見を述べることができる。そうなると、証拠採用されない。
しかし、検事は、女子高生の証人申請をする。まず間違いなく採用される。
女子高生が法廷に出てきて何を話すか。
供述調書と同じことを話されたら、不同意にした意味がない。もっと激烈な被害感情を吐露するかも知れない。危険だ。
しかし、女子高生の供述調書に、嘘や、不自然な事実が書かれていたら、その点を反対尋問で追及して、女子高生の証言の信用性を貶めることも考えられる。
分かれ目は、反対尋問の材料があるか否かだ。
有効な反対尋問の材料が無い場合、供述調書を同意しておいた方がケガが少ない。という判断もある。
そうなると女子高生は証人に呼ばれない。
上川検事が、当然のように証人に出て貰う。と言ったのは、ちょっと勇み足だったかも知れない。


文字数の関係で、最後まで書き切れないから、ここで一応確定させて、アップ。
公判については、次号を待て!