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【原案】「痴漢犯罪生産システム」(太田出版)より
テロップには著者が表示されていない。
それは、著者が痴漢えん罪被害者であり、実体験を本にまとめたものだからであろうか。著者は判明したが、ここでも伏せておくことにする。
【脚本】清水有生
【監督】淡野健
【法律監修】 笠井治
(東京リベルテ律事務所)


真面目で清廉潔白な小学校教師(村上弘明)が、学校から帰る電車の中で、痴漢と言われる。

実直な彼は、やってないものは、やってない。キチンと説明すれば分かって貰える。と次の駅で電車を降り女性と対面する。正義漢の彼には、犯人でもないのに逃げる。という選択肢は存在しないのだ。

ホームでも、あくまでも「この人に痴漢された」と言い張る女性。
そこに現れる駅員。駅員室に連行される。
さらには警察を呼ばれる。
村上「なぜ警察を?」
駅員「お宅、詳しく聞かれると困ることでもあるの?」
村上「そんなこと、あるわけないじゃないですか。行けば良いんでしょ。行って話しますよ。ちゃんと」
自分はやってないんだから、話せば分かって貰えると信じている無垢で世間知らずな小学校の先生。

痴漢えん罪で、駅員事務所に行き、更に警察署まで行くなんて、初期対応として最悪である。
真面目な人ほど、最悪な対応を取る。

警察の取調べで、頭から犯人扱いされ「お前がやったんだろう」と自白を迫られる村上。
頭から村上を犯人扱いして締め上げる{悪い刑事}は、石倉三郎。なかなか良い配役である。

石倉「ねぇ先生、このまま否認し続けてると、警察に勾留されちゃうんだよ。うちに帰れないんだよ。分かってんの?それで、裁判で有罪になるわけよ。なあ。一体どうなる?世間は喜ぶよねえ。小学校の先生が痴漢したってさ。な。え。もちろん、学校はクビだろうね。」
村上「冗談じゃない」
石倉「だからさあ。今ここで罪を認めちゃえば、大事(おおごと)にならないんだよ。な。うちにもまっすぐ帰れるし、学校にも連絡されないよ。後で罰金払って、それで終わりだ。罰金たって、せいぜい5万。それでジエンド。な。交通違反ヤッタのと同じで済んじゃうんだからさ」
村上「わたしは、やってもいないことを、やったとはいえません」

★石倉刑事、あきらかな利益誘導による自白強要だ。
さらに、中身も間違えている。
ここで罪を認めても、検事さんに自白調書作って貰い、略式裁判手続きの同意書にサインしないと帰れないんじゃないか。
さらに、略式罰金受けたら、それは前科が付く。交通違反と同じじゃない。

石倉刑事にの懐柔に乗らず帰ろうとする村上。
帰れない、と制止する石倉。
そこで初めて、村上は、駅のホームで私人による現行犯逮捕されていたことを知る。
刑事訴訟法
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

★何かおかしいと思ったら、

その1
石倉刑事はガシガシ取り調べているけど、弁解録取書を作ろうとしていない。

刑事訴訟法
第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、(以下略)
第二百四条 検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、(以下略)
第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、(以下略)
弁解の機会を与えたら、その弁解を記録に残さなければならない。それが、弁解録取書だ。

警察時報によると
弁解録取書は,弁解の機会を与えた結果を記録するものであり,取調べの結果を記録するものではない。」

つまり、ガシガシ取調べをする前に、まず弁解を聞いて、それを弁解録取書に記録しなければならないのに、石倉刑事は、それをしていないのだ。

その2
逮捕された被疑者村上をガシガシ取り調べているけど、黙秘権の告知をしていない。
だから、村上は、自分が逮捕されたことに気がつかなかったんだ。
刑事訴訟法
第百九十八条(略)
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

ついでに確認しておくと、弁解録取の際には、法文上、黙秘権の告知をしなくてもいい。
実務上は、ほとんど、黙秘権の告知をしているのが現状だが。


自分が逮捕されたと知った村上
村上「弁護士を呼んでください」
石倉「弁護士?なんて弁護士?」
弁護士の知り合いなんかいない村上は途方に暮れる。

原案本は、2001年6月に出版された(amazon情報)。ドラマは、2002年6月19日放送だ。

村上は、この時点では被疑者だ。
被告人に対する国選弁護制度は、むかーしから存在していたが、被疑者に対する国選弁護制度が法律化されたのはごく最近のこと。
司法制度改革審議会が「被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべき」と明記した「意見書」をまとめ内閣に提出した日が、奇しくも2001年6月12日だ。本の出版と重なる。
その意見書を受けて、被疑者に対する国選弁護制度が法律として整備されたのは2003年であり、その施行は2006年5月1日まで待たなければならない(さらに詳しく言うと、2006年には重大事件にしか被疑者国選が導入されず、比較的軽微な事件に適用されるようになったのは2009年。全ての事件にまで拡大されたのは、つい最近2018年6月1日のことだ。

つまり、モデルとなった事件が起こった時には、まだ審議会意見書もできてなければ、それに続く立法化もされていない。
ドラマが放映された翌2002年も法制化されていない。
本件は痴漢事件で、スカートの中に手を入れたとされる案件なので、強制わいせつ罪の適用が考えられる。同罪なら、2009年から被疑者国選の対象となった。仮に、迷惑防止条例違反だと2018年以降ということになる。

以上の通り、このドラマの時点で、村上は被疑者国選弁護制度を頼ることはできない。
自分の知っている弁護士に、私選弁護を依頼するしかない。
しかし、村上のように正義を絵に描いたような人物は、今までの人生で弁護士に会ったことも無かったであろう。当然、知り合いの弁護士なんか居ない。

そういう人のために当番弁護士制度がある。
ドラマ放映の2002年当時、すでに当番弁護士制度は実施されていた。
だから、村上は、石倉に「どの弁護士?」と聞かれたときに、「当番弁護士を呼んでくれ」と言えば良かった。
しかし、歩く正義である村上は、当番弁護士制度を知らなかったのであろう。石倉刑事は知っていたけど、あえて教えなかったのか(意地悪)。

モデルとなった本は、出版の年月は分かるが、実際の事件の年月までは分からないので、当番弁護士制度があったのか、まだ始まってなかったのか判然としない。

しかし、当番弁護士制度がなかったとしても、この法律、条文はあったはずだ。
意外と知られてない条文。弁護人選任の申出権
刑事訴訟法
第七十八条 勾引又は勾留された被告人は、裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者に弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
2 前項の申出を受けた裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者は、直ちに被告人の指定した弁護士、弁護士法人又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。被告人が二人以上の弁護士又は二以上の弁護士法人若しくは弁護士会を指定して前項の申出をしたときは、そのうちの一人の弁護士又は一の弁護士法人若しくは弁護士会にこれを通知すれば足りる。
この規定は、逮捕された被疑者にも準用される
第二百九条 第七十四条、第七十五条及び第七十八条の規定は、逮捕状による逮捕についてこれを準用する。
刑訴法78条の刑事施設の定義はここにあって、逮捕された者がいる警察署も当てはまる。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(刑事施設)
第三条 刑事施設は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
一(略)
二 刑事訴訟法の規定により、逮捕された者であって、留置されるもの(以下略)
逮捕された村上は、たとえ知り合いの弁護士がいなくても、この条文を使って、例えば「東京弁護士会を指定し、弁護人の選任を申出る」ことができたのだ。
もちろん、村上は、こんな法律知らなかったであろう。
村上は、駅のホームで私人による現行犯逮捕され、警察の取調室に直行した。警察の留置室(被疑者が寝泊まりする部屋)に行けば、この条文を説明した掲示板があったはずだが、それを見る機会が、まだ与えられていなかった。残念。

偶然、別の事件での石倉の捜査方法が度を超している。と弁護士がクレームを言いに来た。
それを、トイレに行く途中か何かで、これまた偶然に目撃する村上。
「さっき来ていた弁護士さんを呼んでください」
村上に、弁護士との細い糸が繋がった瞬間である。


接見室にて・・・まず窓の穴が気になるね。

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丸い枠組みはなく、一枚仕様。手抜きだな。

本論に戻ろう。
弁護士(田中美里)「自分には疚しいところはない。と言って、駅事務室に行き、警察まで来てしまった。それが最初の失敗ね」
村上「それじゃあ、あの場から逃げるべきだったと・・・」
田中「堂々と身分を証明するものを見せて立ち去るべきだった(概要)」
村上「そんな。男として、逃げるわけには行きませんよ」(それは、男女関係ないでしょう)
田中「あなた、ほんと痴漢してないの?」
村上「してませんよ」
田中「そのこと、どうやって証明できる?」
村上「私は、そんな人間じゃない」
(略)
田中「自分は善人だ。だから悪いことなんかするわけない。そんな子どもみたいな論理が、ここで通用するわけ無いでしょ。これだから、学校の先生は世間知らずって言われるのよ。」
田中「最初に言っておきますけど、この裁判はとても厳しい裁判になるわよ。容疑を否認すれば、勾留は長くなるし、裁判になれば、マスコミだって黙ってないでしょう。結果、裁判に勝って、あなたの無実が証明されれば良いけど、負ければ、あなたが負う傷は大きくなるわ。きっと教師はクビね。それでも、あなた、裁判で戦う気、あるの?
罪を認めて罰金払えば、事件は闇の中ね。明日からまた教壇に立てるのよ。どっちがあなたにとって有利か、よく考えることね」と言って鞄を手に、立ち去ろうとする田中美里。
村上「待ってください。私はやってないんです。やってないことを、やったと認めるのはおかしいです。たとえそれが、私にとって有利なことだとしても、私は嘘はつけません。たとえ自分が傷を負っても、やってないものは、やってない。そう言い続けたい。それは、私が子どもたちに教えてきたことですから。だから、だから私は、戦います。宜しくお願いします。」
田中は村上の弁護を引き受けることになった。

★前半、赤い文字よりも前の部分、田中の弁護士としての発言は、至極まっとうだ。正しい。
そして、村上は、正直の上に馬鹿がつく善人ぶりだ。疑う、ということを知らない。

問題は、赤い文字のトコロだ。再掲する。
罪を認めて罰金払えば、事件は闇の中ね。明日からまた教壇に立てるのよ。どっちがあなたにとって有利か、よく考えることね
よく考えることね。と言っているが、実態は、罪を認めるように考えを改めなさい。と言っているのと同じだ。これはイカンだろう。

こういうときに参照するのは、皆大好き弁護士職務基本規程だったよね。
(依頼者の意思の尊重) 
第二十二条 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。(略)
(刑事弁護の心構え) 
第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。 

「わたしはやってない。無実だ。争う。」
と言っている依頼者に対し、自白を求めるのは弁護人として絶対的なNGだ。
弁護士会に知れたら、最低でも国選弁護人名簿からの抹消。普通に考えて、懲戒処分相当だ。

ただ、それは、田中美里が本気で、村上に自白を求めていた場合だ。田中は帰ろうとするが、村上の決意を聞き、弁護を引き受けた。
困難な裁判になる。田中は、村上の決意を確認したかったのではないか。田中弁護士なりの「片眼鏡のテスト」だったのではないか?

※この意味が分からない人は
映画「情婦」
原作:アガサクリスティー「検察側の証人」
監督・脚本:ビリーワイルダー
主演:タイロンパワー、マレーネデートリッヒ
を是非、ご鑑賞されたい。

しかし、このテストはあまりお勧めできるものでは無い。
たまたま、村上が極端に馬鹿正直だったから、「認めることなんかできません。」と反論したが、仮に中途半端な馬鹿だったら、「刑事さんだけじゃなく、弁護士さんまでもがそういうなら、これは自白した方が良いだろう。わかった、自白しよう」と考えてしまうかも知れない。
そうなったら、田中弁護士は懲戒モノだ。


知らせを聞いて駆けつけた妻(石野眞子)
夫婦には、2人の子どもが居た。
長女は受験を控えていた。
名門私立高校が目標だ。
しかし、父親が痴漢で逮捕されたとなると、名門私立高校は娘の入学を認めないだろう。
娘を大事に思う石野眞子は、自白して穏便に済ませるように、村上を説得する。
石野眞子は弁護士ではないから、皆大好き弁護士職務基本規程が通用しない。
石野眞子を責めることはできない。
しかし、逮捕され苦境に立たされながらも、否認して戦い続けようとする村上には、辛い言葉だ。

村上「おれは戦う。たとえ泥にまみれても。真実が明らかになるまで戦う。分かってくれ、玲子」
眞子「あなたは何も分かってないわ。泥にまみれるのはあなただけじゃないのよ。」
悲しげな顔をして接見室を出る眞子。


翌朝、石倉刑事は、自分で作ったストーリーで村上の自白調書を作成し、読み上げて署名させようとする。
村上「そんなのデタラメですよ。・・・だいたい私はそんな供述してないし、それじゃ捏造じゃないですか」
と署名を拒否する村上。


★閑話休題
修習生の時に、指導担当の弁護士から聞いた話。
同期の〇〇検事は、取調べ修習のとき、取調べ前にあらかじめ調書を作っておいて、それに署名させていたんだ。今、ちょうど地検にいるけど、ヤツの調書は全部不同意にすることにしている。


署名を拒否した村上は、時間だ。と言われ、裁判所に護送される。勾留質問を受けるためだ。

★あれあれ?おかしいぞ。
警察から被疑者が送られる先は、裁判所ではなく、検察庁じゃないか?
そして、勾留質問のために、被疑者を裁判所に送るのは検察官だ。
刑事訴訟法
第二百三条 司法警察員は、(略)留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。(以下略)
第二百四条 検察官は、(略)留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。(以下略)
第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、(略)留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。(以下略)


おかしいけれど、とにかく勾留質問を受ける。
裁判官役の見た目が定年間近。ベテラン過ぎる。のは置いといて
裁判官「あなたの容疑は・・・・で、間違いありませんか」
村上「いいえ、私はやってません。あの日、私は電車に乗っていたとき」
裁判官:遮って「否認ですね」
村上「ええ」
裁判官「はい、次」

自動発券機登場。ってところかな。

村上の心の声「覚悟はしていたものの、これで10日間は、妻子や5年1組の子どもたちに会えないと思うと、どうにも、やりきれない思いでした」

村上君、きみ、勾留は認められたけど、接見禁止まで付いたの?そこは描かれていないよ。
勾留裁判官も、「はい、次」と言っただけだから、接見禁止は付けてないんじゃないの?
そこんとこ、どうなの?法律監修の弁護士さん??

弁護士接見の場面。
田中弁護士:帰り際に「そうだ!今日、奥さん、接見にきました?」
村上「いいえ」
田中「そう」

★やっぱり接見禁止付いてないじゃないか。

それにしても、勾留質問の説明とか、接見禁止のこととか、取調べに対処する方法とか、黙秘権とか、被疑者ノートとか、大事なことを何も言わない弁護士だなあ。
監督が、わざと、そういうシーンをカットしてるのかなあ。

眞子ちゃんと自宅で相談する田中弁護士
「ハッキリ申し上げます。ご主人の無実を証明するのは、難しいことです。この種の裁判は被告が不利というデータもあります。」

★刑事事件一般論として有罪率99.9%というのは勇名になっている。
ところが、いわゆる痴漢えん罪事件での無罪判決は意外と多い。データで見れば、一般事件よりも無罪率の高い類型のハズだ。田中弁護士、どんなデータを見てきたんだ?
そして、法律監修の弁護士さんは?

弁護士さんは、取調べに対処する方法を教えてくれなかったが、頑固に正直者であるのが欠点でもあり、長所でもある村上は、過酷な取調べに堪えて、否認を貫き通した。
田中弁護士に取っては僥倖である。

否認のまま、逮捕から13日目に村上は起訴された。

否認のまま(自白調書がなくても)起訴できるなら、しゃかりきになって、ガシガシ取調べをして、自白を強要する必要は無いんじゃないか?

★13日目で計算は合っているのか?
通常は、逮捕で警察の持ち時間48時間、検事の持ち時間24時間、プラス勾留10日間で、大雑把に13日と言っている。
しかし、本件では、学校から帰宅途中の夕刻に逮捕され、翌朝には勾留質問を受け、勾留された。
勾留満期は、逮捕から11日目じゃないのかな。
どうですか、法律監修の弁護士さん。
13日目、ということは、勾留延長された。ってことでしょうか(ドラマに出てこないだけで)。

直ちに、田中弁護士が保釈請求をし、保釈金100万円で保釈された。

★これ否認事件だよね。
勾留裁判も、あっさり認められた事件だよね。
保釈、認められるの?無理じゃないすか?
どうですか。法律監修の弁護士さん。
保釈金100万円は、お安くないですか?
2003年のドラマ。今から16年前。
それでも、相場は200万円位じゃないかな。
否認してると高くなって250から300でもおかしくない。

保釈されたので、早速、学校に出勤する村上。
校長先生「なにかと学校には、居づらいでしょう。自宅で待機したらどうですか」

起訴休職が認められるのか?
という問題が発生しそうな展開だ。
しかし、5年1組の担任を外されて授業もないのに、出勤することにした村上。
(深く掘り下げたいところだが、刑事問題ではなく、労働問題になるから、ここでは遠慮しておく)


この後、法律監修しなければならないのは、被害者女性の証人尋問シーンと、判決言い渡しのみ。
証人尋問が始まるのは、録画時間1時間52分(CM等含む)の内、52分経過時点。

残り1時間の内、証人尋問以外の時間は、ミステリーとしての謎解き。
タイトルに「殺人連鎖」って付いている位だから、単なる痴漢えん罪事件ではなく、いろいろ複雑な事件なのだ。

法律監修に無関係だから、単純に説明しよう。
被害女性は、あることで村上に恨みを抱いていた。
自作自演の痴漢被害で村上を陥れようとしていたのだ。
複雑な殺人事件を解決する中で、その事実が判明。
なんだかんだで改心した被害女性が、自作自演を証言して村上は無罪になる。これが約1時間。

では、被害者の証人尋問(最初に、被害状況を証言した場面。2回目に改心して自作自演を証言する場面は監修に値しない)に注目してみよう。


初公判から、いきなり被害者の証人尋問。
それはかなり異例だ。
通常は、冒頭手続き・・・
人定質問や黙秘権の告知、公訴事実の読み上げ、被告人、弁護人の罪状認否、検察官の冒頭陳述、検察官の証拠請求、それに対する弁護人意見、同意証拠の取調べ。
程度で、次回以降の進行を協議して、証人尋問の順番や、持ち時間などを決めて、初公判は終わる。

村上の心の声
初めての公判は、予想外の展開でした。
普通、このような痴漢犯罪の場合、被害者は人前で証言することを嫌い、自ら法廷に出てくることは滅多にないものですが、被害者は、検察側の証人として出廷してきたのです」

★予想外の展開というのは、正しい。
前述の通り、第一回公判から証人尋問が行われるのは異例だからだ。(ただ、実際に第一回公判から証人尋問まで行うなら、裁判官、検察官、弁護人の三者協議で、事前に決まっていたはずなので、驚くには値しない)

この手の痴漢事件で、被害女性の話を一切聞かないで裁判が成り立つわけがない。
検察官は、被害女性から被害状況を聞き取り供述調書に記録し、それを証拠請求したはずだ。
その証拠請求に対し、弁護人が不同意と意見を述べた。そうすると、その供述調書は証拠採用されない。

今まで、いろんなドラマを題材に、証人尋問のお作法について法律監修してきたが、ここは、証人尋問をするか否か、という前段階の問題で、たぶん、初めて取り上げるのではないかと思う。
とても難解な問題が山積みで、全部説明しきることなど不可能だ(本が一冊書ける)。なるべく簡単、単純に行こう。

まず基本を押さえよう。
刑事訴訟法
第三百二十条 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。

凶器や死体など、物(ぶつ)としての証拠は別として、人の言葉を証拠にするときは「公判期日における供述」を基本とし、「書面を証拠とすることはできない。
これを、口頭主義という。

口頭主義は、民事訴訟法にも取り入れられているが、刑事訴訟法ほどの厳格さはない。口頭主義以外でも、例えば証明の程度については、民事訴訟では「証拠の優越」で足りるが、刑事訴訟では「合理的な疑いがない」ことが要求されるなど、各種の場面で刑事訴訟の方が厳格さを求めている。
それは、こう言ってはイケないのかも知れないが、民事訴訟で取り扱うのが、たかだか私権であるのに対して、刑事訴訟では犯罪事実が争われ、有罪になれば被告人に刑罰が科され、場合によっては生命まで奪われることもある、という「対象となる権利」の重大性の観点があるだろう。

我思うに、口頭主義(書面を証拠とすることを原則禁止)が民事訴訟よりも刑事訴訟の方が厳格なのは、上記以外に書面の作成過程にあるのでは無かろうか。
当事者(民事訴訟で言えば、原告本人、被告本人、刑事訴訟で言えば、被告人)の供述を記録した書面(民事では一般的に「陳述書」、刑事では「供述調書」)の作成方法に決定的な違いがある。

民事訴訟では、訴状や準備書面という書面は、依頼者から事実関係を聞き取った代理人弁護士が作成し(依頼者のチェックを受けた後)裁判所に提出されるのが常である。
そして、依頼者本人が見たり聞いたり体験した事実を証拠にするには、法廷で本人が自らの言葉で裁判官に伝えるか、陳述書という書面にまとめて書証として証拠提出する。(前者が口頭主義)
陳述書は、依頼人本人が、自ら見て、聞いて、体験した事実を自分の言葉で書くことができる。民事裁判で勝訴するのに必要な事実を過不足無く書くことができる。自分で書き上げた後、弁護士のチェックを受け、裁判官に誤解を与えかねない表現はないか、法律に当てはめるのに適切な言葉遣いか、本来は依頼者が体験したはずなのに陳述書に記載し忘れた事実はないか、などを検討した上で、証拠とすることができる。
もっと有り体に言えば、弁護士が依頼者から聞き取った事実を、弁護士なりに(法律専門家として)咀嚼して、弁護士が代筆し、依頼者のチェックを受けた上で、依頼者が自分で書いた体裁で証拠として提出されることもある(そんなことは、民事裁判官は、お見通しである)。

これに比較して、刑事裁判では、被告人(起訴される前の被疑者)を検事さんが取調べ、被疑者の答えの中から、検事さんに都合の良い部分をつまみ食いして書面に記録し、被疑者に読み聞かせて、間違いが無いと署名押印(指印)させて供述調書という証拠になる。
その過程では、検事さんが組み立てた事件の筋書きと違う事実を被疑者が供述した場合、検事さんが(恫喝や、利益誘導や、誤導を用いて)被疑者の記憶違いを「正しい方向に」修正させて、調書を作成することができる。
あるいは、被疑者が述べた事実を、検事さんに有利なようにニュアンスを変えることも可能であるし、実は被疑者が供述していない事実を潜り込ませることも可能である。
その作成は密室で行われ、弁護人がチェックすることはできない。

この刑事訴訟における被疑者の供述を証拠にする過程を、民事訴訟と比較してみると、真逆であることが分かるであろう。
検事と被疑者は、訴追する側と訴追される側。対立関係にある。
その片方の当事者である被疑者の供述を、対立当事者の検事が証拠化する。
これが如何に異常なことであるか。
民事裁判で、原告の言い分を、被告代理人がとりまとめて証拠にして裁判所に提出することを考えてみて欲しい。普通に「そんな馬鹿な!」と思うであろう。
それが、刑事訴訟では、常態化しているのである。

だからこそ、刑事訴訟においては、口頭主義が強く守られ、供述調書という書面を証拠とすることに慎重になるべきなのである。
供述証拠はなるべく証拠とせずに、尋問を中心に進行すべきなのである。
他方、弁護人が被疑者から聞き取り書面化したもの(いわゆる弁面調書)は、もっと活用されて良いと思う。

ここで、今の実務で疑問なのは、
対立当事者である検察官が密室で作成した供述調書。
そこに、被疑者が犯行を自白したことが書かれているとしよう。
他方、公判廷という公の場で、裁判官の面前で、被告人が、供述調書に書かれていることは嘘です。私はやってません。ととうとうと述べる。
書面と口頭。180度、真逆な証拠が出てきた。
どちらかが嘘で、どちらかが本当だ。
こんなときに、往々にして、裁判官は、自分の面前で語られた事実よりも、密室で作られた書面を信用する。
口頭主義とは何なのか。
裁判官は、自分の目の前で、どうどうと嘘をつかれている。自分が小馬鹿にされている。と考えているのだろうか。裁判官は、そんなに自信が無いのであろうか。
ま、それはさておいてだ。

以上のことは、主に被告人の供述調書に当てはまることであり、証人の供述調書には無関係かも知れない。そこは、まだ、我にも結論が出せていないので、ご了承頂きたい。


再掲
刑事訴訟法
第三百二十条 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。

321条から328条は、いろいろ難しいから省略。
とりあえず、326条で、弁護人が同意すれば、供述調書を証拠として採用することができる。
刑事訴訟法
第三百二十六条 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

ところが、田中弁護人は、被害者の供述調書の証拠請求を同意しなかった(と思われる)。
326条以外の規定も適用できず、320条の原則どおり、書面を証拠とすることができない。
そうなると、被害者本人を証人として法廷に呼び出し、証言して貰う他、方法がない。

弁護人が被害者の供述調書を不同意とするのは、否認事件の王道であるが、形式的に漫然と不同意とするべきではない。
被害者調書の中に、①被告人の記憶と異なる嘘が記載されている場合に、それを弾劾するため、②調書に書かれていないが、被害者が知っているはずの事実を聞き出すため、などの明確な目的がある場合に限定すべきである。それすら、上手くいく保証は無い。上手くいく自信がなければ、諦めるのも選択肢の一つだ。
なぜならば、本件のような事案で、被害者を法廷に呼び出し、公開の法廷で被害状況を被害者に根掘り葉掘り聞くことは、被害者を2重に傷つける危険があるからだ。
その場合、被害者の供述証拠に、被告人に不利な記載があることは受け止めて、その他の証拠で勝負する作戦をとることになる。困難なことである。
(最近は、遮蔽措置をとることも可能ではある。別室での映像尋問という方法もある。条文は自分で探せ)
ということで、被害者が証人に呼ばれないことも、しばしばあるので、
村上の普通、このような痴漢犯罪の場合、被害者は人前で証言することを嫌い、自ら法廷に出てくることは滅多にないものですが」は、あながち間違いとも言い切れない。
ただ「滅多にない」は言い過ぎ。


ドラマに戻る

田中弁護士が供述調書の証拠採用に不同意意見を述べたのであろう(推測)、被害者の証人尋問が実施されることになった。

検察官の主尋問はドラマ上は省略
田中弁護人の反対尋問から始まる。

田中(被害者調書と思われる書類を見ながら)「被告があなたのスカートに手を入れてきたのは,左手で間違いありませんね」と①自分の左手をかざす。
被害者「はい。左手です。ショルダーバッグで手を隠しながら、触ってきたんです」
田中「おかしいですねぇ。被告は、確かに当日肩かえらショルダーバッグを下げては居ましたが、書きかけの通知表を鞄に入れており、万が一のことを考えて、左手で鞄を抱えるように持っていたと証言しています。
②つまり、この姿勢です」
田中弁護士は、手に持っていた被害者調書?を抱えるような仕草をする。
田中「被告は、はたして、この姿勢で、あなたのスカートに手を入れることができますかね」
被害者「だったら、右手です。右手の間違いです」
田中弁護人「右手には当日、被告が子どもたちから貰った誕生日祝いの花束があったはずですが。」
被害者「花束ですか?」
田中弁護人「あなたの供述にもありますよ。頭の上でっはなの匂いがしていたと」
被害者「あー。そうでした」
田中弁護人「あなたの頭の上えで花束を持った手が、どうやってあなたのスカートに入るんですか」
被害者「バッグなんか、抱えていませんでした。三沢先生が嘘をついているんです。(涙)」
田中弁護人「証人の身長はいくつですか?」
被害者「156センチです」(ミキちゃんと一緒だ)
田中弁護士「被告は178センチの長身です。しかも、あなたは当時膝下15センチのコートを着ていた。単純に、被告があなたのスカートの中に手を入れるには、③このような姿勢で膝を曲げて,身を低くしなければなりません。しかし、④花束は、この高さにあります(と被害者調書を頭上に掲げてみせる)。この高さは、周りの人たちの頭上、もしくは、その下になります。
つまり、当時200%の車内で、花束をそこまで低くするのは、物理的にできないと思いますが、どうですか。
被害者「わかりません。あのときのことを思い出そうとすると、今でも恐くて思い出せないんです(涙)。私よく分かりません(涙)。
田中弁護人「質問を終わります。」

先ず実体的な評価、次に法律監修をすることにしよう。

この反対尋問を聞いたら、被害者の証言はボロボロで信用できずに、村上は無罪になるのではないか。と思う読者の方も多いのではなかろうか。

それについては、尋問後、田中弁護士、村上、眞子ちゃん3人が、田中の事務所で、法廷を振りかえる場面を見てみよう。
村上「彼女の証言は、2転3転して信憑性がなかったですよ。それに矛盾だらけです。裁判長には、かなり、こちらが心証を良くしたんじゃないでしょうか。」
田中弁護人「それはどうかしらね。こういう裁判では、最後の決めては、被害者の涙よ。供述なんて、恐くて思い出せない、って言われちゃえば、裁判長は簡単に同情しちゃうモン。」
村上「そんなもんですか」
田中「なんとか、真犯人の目撃者を見付けなくちゃね」

村上が素人的に見ると、被害者の反対尋問は成功し、村上に有利に裁判が進み始めているのではないか。
これに水を差す田中弁護士。結局は、涙なのよ。

この程度の反対尋問で無罪判決が取れるほど、実際の刑事裁判は甘くない。
結局は涙。というのも、そういう側面もある。

だとしたら、田中弁護士は、被害者が涙も流せないほど、完膚なきまでに叩きつぶす必要があったのではないか。田中弁護士の証人尋問を検証してみよう。


まず、細かい点から、刑事事件では、被告ではなく、被告人。法律上の正確な用語を使うところから、裁判官の弁護人への信頼関係が生まれる。
この弁護士は、その程度の刑事訴訟法の用語も満足に使えないのか。と見下されたら、それだけで大きな損失だ。
次に、被告人とよぶのも、適当ではない。
被告人は、訴訟手続き上のあくまでも記号に過ぎない。
そこに存在するのは、生きていて人格を持ってる人間である。裁判官に無機質な裁判をさせず、被告人をひとりの人間として取り扱って貰うには、少なくとも弁護人は、被告人のことを名前で呼ぼう。村上さん。と呼ぼう。
役名で言えば、三沢だから、三沢さん、あるいは、三沢先生と呼ぼう。小さなことからコツコツと。

次に、田中弁護士は、事件当時の村上の行動を、自分で再現して見せて尋問をした。①から④。
これは許されるのか。
おそらく、この条文の適用が可能なのではないか。
刑事訴訟規則
(図面等の利用・法第三百四条等)
第百九十九条の十二 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置を利用して尋問することができる。
ただし、田中は、そのときの村上の体勢や動きを証人に問いただし、上手に説明できないときに、証人の供述を明確化するために必要がありますから、弁護人がその体勢を再現し証人に確認して貰いたいと思います。裁判長の許可を求めます。
と手続きを取る必要がある。これが証人尋問のお作法だ。

再掲
被害者「はい。左手です。ショルダーバッグで手を隠しながら、触ってきたんです」
田中「おかしいですねぇ。被告は、確かに当日肩かえらショルダーバッグを下げては居ましたが、書きかけの通知表を鞄に入れており、万が一のことを考えて、左手で鞄を抱えるように持っていたと証言しています。」

田中弁護士は、村上が左手で触ることは不自然だ。できっこない。ということを明らかにして、被害者の証言を弾劾したいようだ。

そうであれば、
被害者「はい。左手です。ショルダーバッグで手を隠しながら、触ってきたんです」
この被害者証言を放置せず、その手が右手ではなく、左手だったことを、ピン留めするべきであった。

田中「村上さんがあなたを触ってきたのが左手だと分かったのは、ショルダーバッグで手を隠しながら触ってきたからですね」
被害者「はい、そうです」
田中「村上さんは、左肩にショルダーバッグを掛けていたんですね」
被害者「はい」
田中「あなたは、村上さんの左肩にショルダーバッグがあることを、あなた自身の目で確認した」
被害者「そうです」
田中「村上さんは、そのショルダーバッグを利用して、左手を隠すようにして、あなたを触った。」
被害者「そのとおりです」

と念を押してから、次の質問に行く。
このお作法は、今まで何度も確認してきたことだ。

ところが、次が、なんだか怪しい。
田中「おかしいですねぇ。被告は、確かに当日肩かえらショルダーバッグを下げては居ましたが、書きかけの通知表を鞄に入れており、万が一のことを考えて、左手で鞄を抱えるように持っていたと証言しています。」

まず、被害者の証人尋問の前に、被告人質問を行ったのだろうか。
第一回公判で証人尋問を実施するだけでも異例なのに、その前に被告人質問をするのは、異例中の異例だ。ドラマでは、そのような場面は何もでてこない。
じゃ、「左手で鞄を抱えるように持っていたと証言しています。」この証言とは何なのか?
証言とは、証人が公判廷で事実を話すことを言う。
まず、まだ公判廷で被告人質問は行われていないから、村上の証言は存在しない。
仮に、村上の被告人質問があったとしても、村上は証人ではなく、被告人だから証言とは呼ばない。被告人供述という。
そこんとこ、法律監修の弁護士さんのご見解は?

おそらく、被告人村上の供述調書に、そのようなことが記載されてるのであろう。
その供述調書を利用できる根拠は
刑事訴訟法
第三百二十八条 第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。
この規定かな。

しかし、この村上「証言」は、村上が一方的に申し立てているだけで、目撃者や物的証拠によって裏付けられたものではない。村上が嘘を言っているかもしれない。
これを持ち出して、左手で触ることは不可能だ。と決めつけることなんかできない。
弁護方針の作戦ミスだ。
反対尋問を甘く見すぎている。
本来なら、これだけでは、左手で触ることはできない。と言い切れず、反対尋問は失敗に終わったはずだ。

このように、決め手がない場合は、その問題点について反対尋問しない方が良い。
ムダな反対尋問は、主尋問(証人がもともと言いたかったこと)を強固にするだけだ。