ほねつぎを後世に残したいとはどういうことか。
今や接骨院はコンビニより多い店舗数、柔道整復師も国家資格であり、
無くなるはずがないではないか。
そう思われる方も多いかと思います。
私の言うほねつぎは資格者や業者のことでなく、
文字通り骨を接ぐ技術です。
私がお世話になった鍼灸師の方が何人かいらっしゃいますが、
そのうちの一人、昭和57年当時お世話になった10歳程年上の鍼灸師の先生が
当時こんなことを言っていました。
「脱臼や骨折、特に骨折を整復するのは骨接ぎの先生に上手い人がいる。」
「おかしな折れ方しとっても絶妙に接ぐ、そのほうが治りもいいし元のように戻る。」
「整形の医師より余程上手い人がいるのに。」と
その時はただふーんと聞いただけでした。
今は何を言われていたか少しはわかります。昭和45年の柔道整復師法
第17条に『柔道整復師は医師の同意を得た場合の他、脱臼または骨折の患部に施術してはならない。』とあります。応急処置は出来ますが。
この法律以前はおそらく普通にできていたのでしょう。
私が子供のころ、骨折、脱臼、捻挫、突き指はほねつぎへ行くものと思っていました。
昭和54年、高校生の時、柔道の先輩が、練習中に道場の畳の上で急に動けなくなり
「〇〇ほねつぎ呼んできてくれ」、1年坊の私は全力疾走で呼びに行く。
ほねつぎの先生は元は柔道家かというような大柄で、のっしのっしと歩いてきて、
「誰も治せんのか。情けない。」と言いながら、先輩の横へ座ってなにやらよいしょっと
畳の上で動けなくなっていた先輩は、起き上がって肩を回して一息、肩の脱臼でした。
ほねつぎの先生はその先輩に「学校の帰りに(接骨院に)寄れよ。」
そして、周りの私たちに「脱臼くらい治せるようにせいよ。」 と言って、
お金をとらずにのっしのっしと帰っていきました。(勿論学校の帰りに払うんですけどね)
このころはまだ骨を接ぐ人が残っていました。
あれからもう40年でしょうか。
今、柔道整復師の養成校は増え、業者数も相当増えましたが、
あの時のほねつぎの先生のように、
ものの数秒でちょちょいのチョイと脱臼をはめてしまうような方がどれだけいるでしょうか?
前述の法律により柔道整復師の真骨頂であるほねつぎの技術を使うことが事実上
制限されることになりました。
技術というものは使わなければ廃れます。
先人の伝えた素晴らしいほねつぎの技術を失うことは日本の損失です。
ちなみに私は柔道整復師ではありません。念のため