賃金最低制度とは、「最低賃金法という法令によって国が賃金の最低額を定め、会社(以下使用者)は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度」のことを言います。
 仮に、公表された(毎年10月頃に最低賃金は公表されます)最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方で合意の上定めても、その合意は最低賃金法によって無効とされ、最低賃金額とみなされます。また、最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合は、使用者は労働者に対してその差額を支払わなければなりません。最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。両方が適用される労働者には、高い方の最低賃金以上の賃金を支払わなければならないので注意してください。

<地域別最低賃金>
【地域別最低賃金とは】
 産業や職種に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金のことで、都道府県ごと全部で47件が定められています。通常、最低賃金と言えばこちらを指します。
【適用される対象者は】
 パート、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に適用されます。
【違反すると】
 最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。

<特定最低賃金>
【特定最低賃金とは】
 特定の産業について設定されている賃金をいいます。地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要とされる産業について設定されており、令和7年3月31日時点で224件の最低賃金が定められています。北海道であれば、乳製品や製造業。宮城県であれば自動車や小売業に定めがあるそうです。
 【適用される対象者は】
 特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます(18歳未満または65歳以上の者、雇い入れ後一定期間未満の技能習得中の者、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する者などには適用されません)。
【違反すると】
 労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。


 なお、次の場合は個別に最低賃金の減額の特例が認められますが、都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。
 ①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
 ②試みの使用期間中の者
 ③基礎的な能等を内容とする認定職業訓練を受けている者
 ④軽易な業務に従事する者
 ⑤断続的労働に従事する者

 最低賃金の対象となるものは、毎月支払われる基本的な賃金となります。残業代やボーナスといったものは含まれません。以下に最低賃金の対象外とされるものを列挙します。


<最低賃金の対象外とされる賃金>
 ①臨時に支払われる賃金  
  →結婚手当など
 ②1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  →賞与など
 ③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
  →時間外割増賃金など
 ④所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金
  →休日割増賃金など
 ⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
  →深夜割増賃金など
 ⑥精皆勤手当・通勤手当・家族手当

 最低賃金は基本的には「時間額」で定められています。支給している賃金が最低賃金額以上となっているかは次のように確認をすることが出来ます。
<ケース1>時間給の場合  時間給≧最低賃金額
<ケース2>日給の場合  日給÷1日の所定労働時間数≧最低賃金額
<ケース3>月給の場合  月給÷1か月平均所定労働時間※1≧最低賃金額
 ※1 1か月平均所定労働時間=(365日(閏年は366日)-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間÷12か月
<ケース4>出来高払制その他請負制によって定められた場合
 出来高払制その他請負制によって計算された賃金総額を労働した総時間数で除した金額≧最低賃金額


 最低賃金を守らない場合は様々なリスクがあります。


 ①最低賃金法・労働基準法違反による罰則が適用されるリスク
 地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合は、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められており、特定最低賃金額以上の賃金を支払わない場合は、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
 ②未払い賃金を請求されるリスク
 最低賃金を下回る賃金支払いの場合、労働者から未払い分の賃金を請求される場合があります。最悪訴訟にまで発展してしまうこともあります。
 ③労働基準監督署からの是正勧告などのリスク
 労働者からの申告などにより労働基準監督署から調査を受けることがあります。この場合、正しく賃金が支払われているかどうか、各種の法定帳簿の提示が求められます。違反が判明した場合は「是正勧告」がなされ、その対応をしなければなりません。
 ④企業の信用下落のリスク
 前記の法令違反留まらず、企業の信用が下落するリスクがあります。

 賃金の引き上げには企業努力が必要になりますが、最低賃金引上げを図るうえで活用できる助成金として業務改善助成金があります。これは、生産性向上のための設備投資等(機械設備・コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行って、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されるというものです。
 そのほかにも、賃金引き上げで活用できる助成金として、キャリアアップ助成金・働き方開拓推進支援助成金・人材開発支援助成金などがあります。(元橋)

 

 

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