企業は経営理念を旗印に、変化する経営環境に対応した経営戦略を遂行しています。
その際、企業を取り巻く外部環境と自社の経営資源に対応した製品及びサービス等の事業運営を行いますが、外部環境の中でも市場環境、例えば製品の顧客はどんな人でどんなニーズがあるのか、市場の規模・将来性は期待できるのか、市場の特性や競争状況はどんな状況か等の動向把握は重要であり、その動向にフィットできなければ、製品の収益や成長の確保どころか、事業の存続すら危ういことになりかねません。
また、市場は日々変化するものであり、その構造変化に対応した経営戦略及び事業活動に落とし込んだマーケティング戦略が必要です。
今回、マーケティング戦略の目的とする製品及びサービスの売れる仕組みとはどのようなものかについて製造業等を中心とした物品販売のケースで概観し、更に物品とは財として異なる性質を有するサービスについても、売れる仕組みを考えてみたいと
思います。
🌱売れる仕組み(物品販売を中心としたマーケティング戦略の概要)
1.マーケティングとは売れる仕組みづくり
マーケティングとは、顧客が自発的に製品やサービスを購入し続ける仕組みを作る活動であり、マーケティングの基本フレームワークとして有名なのが「4P」分析で、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素を統合的に設計し(マーケティングミックスと称します)、顧客のニーズに応える仕組みを構築することです(現代マーケティングの父 ノースウエスタン大フィリップ・コトラー教授提唱)。
4Pマーケティングミックスについては後述のⅠの3項「マーケティング戦略の立案プロセス」で詳細を述べます。
2.マーケティングとセリング(販売)の違い
マーケティングはセリング(販売)とは全く異なる概念です。
マーケティングは、顧客が何を求めているか、ニーズにフィットした製品及びサービスを提供するためにどのようにするのかという顧客志向の対応です。従って、顧客の満足情報、クレーム、改善点等が企業と顧客の間で双方向に行き交うことになります。また、アプローチする顧客を定義する場合があり、自社製品及びサービスの顧客はどのような人々か、顧客数や地域構成等の市場規模、市場の将来性等を知り、ターゲットの性別や年齢等の顧客細分化を行ったりします。一方、セリングは、まず製品・サービスありきの発想で、製品情報等は一方的に顧客に伝達されます。顧客志向ではないという事になります。
セリングは今日の売上確保のための売り込む手段であるのに対して、マーケティングは将来の売上、利益のための売れる仕組みづくりと言えます。そのため、マーケティングは事業を行うために最低限必要な知識となり、多くの会社でターゲット顧客を定め、4Pミックスを入念に設計し、実行しています。
3.マーケティング戦略の立案プロセス
マーケティング戦略立案のプロセスを見てみましょう。
1)マーケティング環境分析と戦略課題の抽出
マーケティング戦略を立案する第一歩は自社を取り巻く環境の分析であり、環境分析の目的はマーケティング上の戦略課題を明らかにすることです。
①市場環境分析
a) マクロ環境分析
技術動向、人口動態、経済、政治
b)顧客分析
企業活動の出発点である顧客の購買人口、購買行動、流通形態分析
c)競合分析
成長している市場であれば需要創造型のマーケティングで良いのですが、成長が停滞している市場であれば競争状況の分析が欠かせません。
以上の分析から市場の機会と脅威を把握し、成功のカギとなる成功要因(Key Success Factor:以下KSF)を抽出します。
②経営資源分析
マーケティングを展開する上での機会と脅威、KSFにどのように対応できるか検討すべく、自社の経営資源を明らかにする必要があります。
そのために、自社の潜在能力を測る上での経営資源(経営戦略、企業文化、製品力、マーケティング力、マーケットシェア、人的資源、資金力等)を分析し、自社の強みと弱みを明らかにし、KSFへの適合性を検証します。
2)マーケティング戦略の立案
マーケティング上の戦略課題が明らかになれば、具体的に目標設定、市場ターゲティング、マーケティングミックスの立案を行います。尚、マーケティング戦略の立案プロセスは、企業規模の大小、販売製品やサービスの種類によって大きな違いは一般的にありません。
①マーケティング目標の設定
自社がマーケティングによって到達を目指す基準値を設定して自社組織のパフォーマンスを測定し、達成すれば新たな目標を設定することができます。設定に際しては、目標の具体性(例えば売上高、ブランド認知度)、事業戦略との整合性(例えば業界No1の売上高)、市場動向比較(例えばシェア)等に合致し、実現可能なもの(少し手が届かない程度)が良いでしょう。
②市場ターゲットの明確化
自社の強みと弱み明らかにし、KSFへの適合性を検証した後、その魅力的な市場のどこにアプローチするか市場を細分化し、ターゲット市場を決定します。また、ターゲット市場において、顧客は製品に何を求め、競合品は何を提供し、自社は何を提供すれば顧客満足につながり、持続的な競争優位を確立できるかという、自社製品の競争上のポジショニングを明確にしなければなりません。
a) 市場細分化とターゲット顧客の設定
市場細分化とターゲット顧客の設定は最も重要なマーケティング上の意思決定となります。顧客のニーズ、顧客の魅力度、顧客の購買行動等の分析から、どの顧客を重要視して狙うのか、その顧客は十分な売上・利益が見込めるか、その顧客に製品を的確に届けられるか、その顧客からの反応を分析できるか等を軸に、ターゲットを決定します。
b) 製品ポジショニング
ターゲット顧客を見据えながら、顧客ニーズに合致した製品開発を行います。製品ポジショニングの成功は、自社製品のイメージをどれだけ強烈に顧客に植えつけられるかにかかっています。全く同じような製品でも、顧客ニーズに合致したもので新たなイメージを与えることにより、爆発的な販売増につながる場合があります。
例えば、持ち運びに面倒な一眼レフカメラが主流だったカメラでも、旅先で手軽に写真が撮りたいというニーズに対して、レンズ付きフイルムという新たな製品ポジショニングを開拓した「写ルンです」(バカチョンカメラ)はこのニーズを捉え、爆発的に
売れました。
また、デジタルカメラ隆盛の中でも、ポラロイドを手軽に進化させた「チェキ」も同様です。最近ではデジタル技術を活かして自撮りができる「チェキ」も登場しています。一方、SNS映えを意識して写真写りを追求したミラーレスカメラは、手軽さとは全く異なる顧客ニーズに応えたもので、一定の需要があります。
③マーケティングミックス
優れた製品を開発しても、売れるとは限りません。マーケティングの4Pは、顧客が望む価値を持つ製品(Product)、製品や販売チャネルにふさわしい価格(Price)、製品をタイムリーに届ける流通(Place)、購買意欲を高めるためのプロモーション(Promotion)を絶妙に組み合わせ、有機的に統合させていくことで、売れる仕組みが出来上がり、持続的成長につながります。
a) 製品・サービス(Product)
自社が販売する製品やサービスの特性は何かを明確にします。同時に、製品やサービスはターゲット顧客のニーズを満たしたものでなくてはなりません。
(1) 特性
物品販売であれば製品の性能、品質、デザイン、製品名、包装パッケージ等に応じたマーケティングミックスが設計されるでしょう。一方、サービスは財として物品と異なり、取引はサービス機能の販売となり、生産と販売が同時に起こり、特定の場所と時間に提供され、返品はできない特性があります。形が見えないので、サービス提供側への信頼性が決め手になります(サービスの売れる仕組みについては後述のⅡで詳細を述べます)。
(2) 製品ライフサイクル
新製品の売上は、時間の推移に伴って導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階を経るので、各発展段階において戦略課題に対応したターゲティング、マーケティングミックス、マーケティング予算の実行が求められます。
(3) ブランド化
製品やサービスに大きな差がない場合、差を認識させるため製品をブランド化(製品力=ブランド)することによって製品の差別化を行い、企業はブランド・イメージを高める努力を行います。
例えば「ティファニー」の宝石は、単なる名前以上の様々な情報(名声、宣伝、口コミ等)が盛り込まれており、そのブランド・イメージ自体が他にない価値を生み出します。加えて、顧客にとって、ブランドのもたらす情報により購買決定が迅速かつ効率的に行われ、イメージが使用・経験の満足度を更に高めます。また、企業では、ブランドは商標権で法的保護、差別化ができ、ブランド・ロイヤリティ(銘柄への忠誠)によりプレミアム価格と高いマージンが得られます。
b) 価格政策(Price)
価格とは最もダイレクトに顧客に訴えることができるメッセージ手段と言えます。価格は原価とともに企業収益を規定する要因であり、マーケティングミックスの中で他の要素と整合性があり、企業の意思を反映した一貫した価格政策が必要です。価格政策はいろいろな要因に影響されます。
(1)製品ライフサイクル
(イ)新製品導入期
*開発コストの早期回収を狙い、当初は比較的高価格とし、需要拡大に伴い順次価格を下げ、バージョンを上げて値上げしていく価格政策(家電、スマホ等)
*市場導入期から低価格を押し出し、マーケットシェアの早期拡大を狙う価格政策(PayPay等のQRコード決済サービス)
(ロ)成長期
成長期になると売上増、原価低減、競争激化により、価格は横ばい若しくは低下傾向になります。また、成長維持のため、価格に敏感な顧客層取り込みのため、タイムリーな価格引き下げが検討されます。
(ハ)成熟期
市場成長が鈍化し、差別化困難、過剰生産等の要因も加わり、限られたパイの奪い合いとなって競争は価格政策が中心になります。
(2)価格設定
価格設定を行う場合は、原価、需要、競争の3要素が重要であり、3要素を同時に反映した価格設定が望ましいのですが、企業の意思により、いずれかに重点を置いたものでも良いでしょう。
C)流通政策(Place)
製品特性により、どのような流通チャネル(以下チャネル)で顧客へ製品をお届けするかは重要であり、優れたチャネルを構築すれば自社の大きな財産になり、長期的な競争優位を築けるでしょう。また、流通は他社に委託する外部資源であるため、構築には相当な時間とコストが必要となり、長期視点に立った検討が必要です。松下電器や資生堂は、独自の販売網を全国、全世界に展開できたから当初、成功したと言えましょう。
一朝一夕には構築できないチャネルであれば、時間を買う企業買収によってチャネルを獲得することは、企業買収の主要な目的の1つになります。
(1)チャネルの長さは、中間業者の数により4つに分類できます。
(イ)ゼロ段階(直接販売)
企業が直接顧客に販売するケースで、中間業者は存在しません。例としては通信版売(千趣会の雑貨販売)、訪問販売(化粧品、置き薬)、直営小売(ユニクロ、ガソリン)、生産財販売(船舶、鉄道、スパコン)等があります。
(ロ)1段階
企業と顧客の間に中間業者1つ(企業→大型小売業者→顧客)のケースで、大型小売業者がバイイングパワーを発揮して卸売業者を外し、メーカーと直接取引するケースです。例として家電、自動車販売等で見られるメーカー主導の系列化で進展してきましたが、近年ではコンビニ、スーパー、家電量販店等の小売主導による直接取引が増加中です。
(ハ)2段階
企業と顧客の間に中間業者2つ(企業→卸売業→小売業者→顧客)のケースで、消費財販売では最も多くみられる流通形態です。小売業者にとっては少量でもタイムリーに卸売業者が届けてくれ、メーカーにとっては広範囲な多数の小売業者に販売を拡大することができます。但し、卸売業の買取が基本なので値崩れが生じやすく、メーカーには流通マージンのコストが負荷されます。
(二)3段階
企業と顧客の間に中間業者3つ(企業→卸売業→二次卸→小売業者→顧客)のケースで、製品単価が低く、購買頻度が高く、小売店の数が多い食料品、雑貨等の最寄り品に多い流通形態です。2段階と同様、値崩れと流通マージンが発生します。
(2)チャネルの設計
チャネル設計にあたっては、製品を効果的かつ効率的に届けるべく、目標とする市場を決め、チャネル構築には莫大なコストが必要なため経営資源の確保が必要になります。その上で、以下の2項目を決定しなければなりません。
(イ)チャネルの長さ
女性用下着の通販業者セシールは、製品の特性により通販カタログによる直接販売網を構築しました。女性用下着の特性とは、試着できない、返品リスクが少ない、消耗品でリピーターが期待できる、現物展示が不要なので流通コストがかからない、カタログで多くの品揃えが可能等という分析により、チャネルをゼロ段階(直接販売)に決定しました。
(ハ)チャネルのエリア、チャネル選定
販売範囲を限定(例えば独占販売権付与等)するのか、チャネルの販売力によってチャネルを選定するのか、広範囲にわたってすべてのチャネルに委託するのかを決定する必要があります。
d)プロモーション(Promotion)
製品デザイン、店舗設計、価格設定、チャネル選定、購入、使用、アフターサービスに至る一連の販売活動で顧客と様々な形態でコミュニケーションが連続的に存在しており、顧客がどのような意思決定プロセスで製品を購入するかの変化をタイムリーに把握し、プロモーションというコミュニケーションツールによって販売アプローチ行います。
(1)プロモーションミックスの構築
(イ)顧客の購買決定プロセス
顧客が製品を購買するときにはニーズに対する動機があり、それを解明した上で、顧客に対して製品への注意を促し、興味を持たせ、欲求を喚起し、動機付けすべく、様々なプロモーションツールにより顧客にメッセージを伝え、購買に向かわせます。
(ロ)プロモーションミックスの策定
製品の特性、顧客の意思決定プロセスを考慮した上で、広告、販売促進、人的販売、パブリシティ、口コミ等のプロモーションミックスを策定する必要があります。尚、消費財(食料品、消耗品等)と生産財(医療用医薬品、医療機器、ロボット、鉄鋼、船舶、鉄道、スパコン、車等)ではプロモーションミックスは異なり、顧客が求める情報量の多寡により消費財では広告、生産財では人的販売が重要視されています。 また、顧客の意思決定へのアプローチ方法としてプッシュ戦略とプル戦略の2つがあります。
*プッシュ戦略
メーカーが、販売を請け負うチャネルに対して、販売面へのファイナンス支援(支援金)、販売方法指導、販売意欲換気(リベート等)で顧客へ販売をプッシュ(医療用医薬品等の生産財)
*プル戦略
メーカーが、顧客に対して広告等により直接働きかけ、顧客が製品やブランドを指名して購買する意欲を喚起(プル)(OTC等の
一般消費財)
(2)広告戦略
(イ)クリエイティブ戦略
顧客に伝えるべき製品コンセプトを決め、顧客に興味を持ってもらえる広告表現に落とし込み、広告媒体にのせる戦略
(ロ)メディア戦略
ターゲット顧客のプロフィール、数、エリアに合わせ、予算の範囲内で最も効果的なメディアミックスを探し当てることが重要で、新聞、雑誌、TV、ラジオ、看板、DM等それぞれに利点と限界があり、例えば、製品のコンセプト上でターゲット数やエリアが限定されていれば、費用対効果上、看板、DM、折り込みチラシ等の方が有利という場合があります。
④マーケティングミックスの事例
前項マーケティングミックス策定の具体的事例としてスターバックを見てみましょう。スターバックスは米国喫茶店チェーンで、4P戦略の成功事例です。
4P戦略の具体的内容は以下の通りで、全体的には高級感にこだわった差別化マーケティング戦略と言えます。
a) 製品(Product)
(1)コンセプト
(イ)オリジナルメニュー、高品質で安心感のあるコーヒー豆、多様なメニュー
(ロ)居心地の良い空間
(2)ブランディング
スターバックスは単なる製品提供だけでなく、体験やロイヤルティ(忠誠)醸成によるブランド化(ブランドロイヤルティマネジメントと称します)を行っていると思われます。
(イ)サードプレイス戦略
家庭、職場に次ぐくつろぎの場を提供し、快適な空間づくり、顧客との関係性構築によりブランド化しています。
(ロ)ロイヤルティプログラム
*Starbucks Rewards
公式アプリやスターバックスカードによるお買い物でStar(ポイント)が溜まり、eTiketやグッズ交換、会員ステージ特典が利用できるという囲い込みを行っています。
*SNS利活用
SNSのX(旧ツイッター)、インスタグラム、フェイスブックをフル活用し、口コミ網を拡大しています。
b) 価格(Price)
高級感を感じられる高価格設定(2杯目割引あり)
c) 流通(Place)
*人が集まる中心街の好立地に出店 高価な立地の高品質なコーヒー
*日本進出1号店は銀座
d)プロモーション(Promotion)
口コミを重視(TV CM等は行わない)(参照 Markething Lab:カリーグズ)(参照 MBAマネジメントブック:グロービス経営大学院)
3)経済性分析
マーケティング戦略で策定された戦略セットが現実的に遂行し得るか否かを経済性分析により明らかにする必要があります。
a)損益分析
(1)損益分岐点売上高の算出(次ページ 図参照)
売上・費用状況
:固定費A:5,000万円、変動費:2,000万円、売上高7,000万円
損益分岐点売上高=(目標利益+固定費)/(1-変動費/売上高)
売上高総利益率
=(0+5,000)/(1-2,000/7,000)
売上高総利益率
=7,000万円
上記固定費、変動費、売上高では、損益分岐売上高は7,000万円となります。
(2)販売価格シュミレーション(下記 図参照)
売上・費用・利益・単価状況:
A:固定費 5,000万円 d:販売単価 ?
B:売上高 7,000万円 e:製品1単位当たりの変動費 20万円
C:目標利益額 50万円 f:目標利益額Cの販売量 ?
前頁損益分岐点(利益ゼロ)の販売単価70万円、販売数量100個のケースを、利益50万円の販売単価にする場合のシュミレーション(値上)
販売単価=製品1単位の変動費e/(1-(目標利益額C+固定費A)/売上高B)
=20/(1-(50+5,000)/7,000)
=71.7949万円(値上率102.58%)
販売数量=7,000万円/71.7949万円=97.5個
利益50万円を稼ぐには、販売単価71.7949円(102.58%値上)、販売数量97.5個にする必要があり、上記の固定費、変動費(原価)、売上高、販売単価、利益水準でマーケティング目標を達成できるかを検討します。
b)必要市場シェア
マーケティング戦略で策定された戦略セットによる販売数量及び売上高で、どのぐらいの市場シェアを獲得できるのか、マーケティング目標にてらして
妥当なものなのかを検証します。
4)市場の絞り込み分析
マーケティング戦略で策定された戦略セットによる販売量は、市場需要部分のどの部分から奪取するのか、どの程度の競争相手から奪取するのか、自社の他の製品から需要を移行させるのかという需要取り込み先の分析を行い、加えて新規の需要を掘り起こす必要があるのか等を検討します。
5)実現可能性分析
最後に、以上のマーケティング戦略策定プロセスを通じて、マーケティング戦略が実現性の高いものか否か判明します。実現性に問題ないなら実行し、問題がありそうならフィードバックされてプロセスを見直し、実現性に無理があるのなら販売を中止せざるを得ないことになります。
🌱売れる仕組み(サービス業を中心としたサービスマーケティング戦略の概要)
サービスマーケティングは、サービスならではの特性を踏まえ、サービス業や製品の付加機能としてのサービスによるマーケティングミックスを有機的に結合することで売れる仕組みを構築し、持続的な成長を目指します。
1.サービスの特性
有形物である製品販売と異なり、無形のサービス販売は以下のような違いがあり、その特性を睨んだマーケティングミックスの構築が必要となります。
物品販売 サービス販売 サービス販売事例
・形 有形 無形 ・飲食業
・標準化 可能 困難 ・飲食業
高品質・標準化
出来れば、高品質
大量生産可能) ・MAC、スタバ
・生産と消費の 別個 同時 ・飲食業
同時性 提供と消費は同時
・保存性(在庫) できる できない ・飲食業
(在庫できない: 顧客来なければ提供不可
キャパシティ
制限あり)
・不可逆性(返品) 可能 できない ・飲食業
やり直し不可
すなわち、サービスという無形の価値を(高品質化、標準化して)、限られた時間と場所の中で、如何に効率良く(キャパシティ制限を標準化・スピードアップ・機械化等の効率化、場所拡大により)、多くの顧客にサービスを提供できれば他社との差別化が可能となり、持続的な成長ができます。
2.サービス業のマーケティング戦略
1)サービスマーケティングの概要
a) サービスマーケティング7P
サービスマーケティングでは、従来のマーケティング4P:①製品(Product)②価格(Price)③流通(Place)④プロモーション(Promotion)に3P:⑤参加者(People)⑥物的環境(Physical evidence)⑦サービスプロセス(Process of service assembly)を加えた7Pで戦略を組み立てます。
b) 3P
サービスマーケティング特有の3Pは以下の内容です。
⑤参加者(People):サービスの満足を提供する従業員
サービスは形の見えないサービス機能の販売ゆえにサービス提供側への信頼性が決め手になるので、従業員と顧客の関係が良好であれば顧客は満足を得られ、安定顧客(常連)としてリピートが期待できます。満足を求めている顧客と直接接する従業員のあり方は、サービスマーケティングの中核に位置すると言えましょう。
⑥物的環境(Physical evidence)
サービスが無形だけに、顧客はサービスを提供する空間や有形の提供物(パンフレットやレシート等)を体感することによってサービスを体感します。その体感は使用経験として口コミやSNS媒体等で拡散し、有力なプロモーションになり得ます。また、サービス業の特性であるキャパシティの制限も、物的環境であるサービス提供の空間を工夫することで課題解決することができます。
⑦サービスプロセス(Prpcess of service assembly)
サービスを提供するまでの過程をフローチャート(マニュアル)に落とし込み、生産性向上をはかる必要があります。サービスが無形だけに、高度・高品質なノウハウが詰まったサービスは標準化することによって高度、高品質サービスを大量生産、大量提供することができます。
c) 7P事例
高級レストランの事例でサービス7Pマーケティングを見てみましょう。
①製品
美味しくて特徴のある料理、豊富なメニュー
②価格
価値に応じた値段
③流通
ターゲット顧客に即したアクセスの店舗
④プロモーション
口コミを中心としたSNS戦略、会員制度(非広告化)
⑤参加者
*料理人、予約係、接客係、ソムリエの接客充実化
*従業員の満足度向上、動機付け
⑥物的環境
店の雰囲気(多店舗化)、パンフレット、SNS開設
⑦サービスプロセス等
*予約時(予約係)や来店から着席までの応対(接客係)、料理やワイン(ソムリエ)を選ぶプロセス等
*高度。高品質サービスを大量生産大量提供するためには、サービスプロセスのマニュアル化は欠かせません。
(参照 MBAマネジメントブック:グロービス経営大学院)
2)需要戦略と顧客満足化
企業が持続的成長を企図した売上拡大のためには市場の需要を創造し、獲得する必要があります。需要の拡大と獲得を行う需要戦略の中心課題は、如何に買い手である顧客の満足を維持、向上させていけるかと言えましょう。そこで、諸費者満足のメカニズムを考え、如何に顧客を満足させて再購入行動による企業支持を獲得し、更なる需要を喚起しつつ、持続的な売上拡大策につなげるかについて、事例を用いて説明したいと思います。
①顧客満足のピラミッド
慶大大学院の嶋口光輝教授は、顧客満足メカニズムとして「満足のピラミッド」構造仮設を提唱しています。
企業の提供するサービスは、満足の基礎を作る本質サービス及び本質機能(サービス)の上に積み上げられる表層機能(サービス)のピラミッドで構成され(下表左「顧客満足のピラミッド」参照)、本質機能はその属性の1つでも崩れたら不満になるが、表層機能はどれか1つ優れていれば他の悪さを代償し、顧客満足につながるとしています。
例えば、銀行サービスでは本質機能である(確実性:入力通りATMから出金)、安全性(預金が保護)、公平性(行員の接遇が公平)の1つでも許容水準以下であれば銀行に不満を持ち、最悪解約となります。一方、表層機能とみられる建物の雰囲気や行員のユニフォームが悪くても、行員の接遇が抜群に良ければ満足が得られます。もちろん、建物の雰囲気が良ければ益々満足します。
すなわち、本質機能は当たり前ですが、表層機能は上げれば上げるほど顧客満足が溢れ、差別化要因になるということになります。
顧客満足のピラミッド 自動車教習所の満足ピラミッド
②事例:自動車教習所の満足ピラミッド
少子高齢化及び若者の運転離れが進展する中で、自動車教習所は顧客満足の観点から、どのようなマーケティング展開で乗り切っているか事例を見てみましょう。
顧客満足のピラミッド 自動車教習所の満足ピラミッド
某自動車教習所は、学生を主とする自動車教習生を顧客として、以下の本質機能と表層機能により顧客満足を獲得し、持続的成長を遂げていると考えられます。
a)本質機能
(1)教習力
*長い歴史に裏打ちされた優れた教習ノウハウ
・繁忙期最短コース
・教習時間短縮
・新教習指導マニュアル
・スカイカメラによる自動車教習
・社員研修、メンター制度による人材育成
*広い敷地と充実した施設による教習
*卒業後の教習フォロー(0.5%以下の事故率)
*インターネットやタブレット活用による教習IT化(自宅学習可)
(2)高い合格率
優れた教習ノウハウによる高い試験合格率
b)表層機能
(1)接遇
*指導員の丁寧な教習
*スタッフの丁寧な接遇
(2)アメニティ
*季節感のあるイベントによるやる気を出させるサプライズ演出
*まるでホテルのような清潔な校舎
*屋根付き教習設備(二輪、車等)
*保育士による託児所
(3)巡回バス
主要駅を巡回する無料送迎バス
(4)地域貢献
地域の交通安全センターとしてニュースレター、街頭での交通安全活動、高齢者・企業・幼稚園児交通安全教室
長い歴史に裏付けられた教習力で高い試験合格率を維持することによって本質的な支持を獲得し、サービス業の基本である従業員の優れた接遇と教習所環境の良さが選ばれる源泉と考えられます。(間口)
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