彼は俺の一つ年上で…
お互いの実家も近所で…
幼稚園に入る前から一緒に育った幼馴染み。
数え切れない程…
一緒に遊んで…
一緒にご飯を食べて…
一緒に風呂に入って…
数え切れない程…
喧嘩もした。
小学生の頃…
初めて映画館に連れて行ってくれたのも彼で…
バスの乗り方が分からない俺に…
「タクヤ!俺がやってるのをマネしろよ!」と…
彼はバスの料金入れボックスに小銭を入れずに…
間違えて両替にお金を入れて…
ジャラジャラ出てくる10円玉に驚いて…
照れ笑いをしていた。
小学生の頃…
一緒によく焼肉屋に行った。
床はコンクリートむき出しのボロッボロの焼肉屋。
彼は肉が好物で特にホルモンが好きだった。
すき焼きを食べた翌日は…
鍋に焦げ付いたお焦げを箸でこそいで美味しそうに食べていた。
「タクヤ!食べるか?」と…
俺は子供ながらにして丁重に断った。
小学と中学では同じ柔道部で…
中学の県大会の個人戦では二人で優勝を飾った。
中学に入学して…
ここでは話せない数知れずのヤンチャな事を二人でやっては学校を困らせた。
彼に貰った四つボタンの短ランを着て学び舎に身を置き…
その勇士は伝説になり…
その短ランは今でも実家に大切に保管している。
彼は高校を卒業すると同時に…
家族の反対を押し切ってボクサーになる為に家出をした。
その家出に付き合い…
猛吹雪の中…
東京に向かう夜行バスに乗り込む姿を見送った。
結局は…
厳格過ぎた祖父によりボクサーの夢は断たれた。
その後…
俺は東京に上京して…
それからの彼は…
カメラマンのアシスタントとして地方に飛び回ったり…
色んな街で色んな仕事をしていた。
岡山に戻る前に居た福井県では…
酔っぱらって喧嘩になりボコボコにされてボロ雑巾のようになった事を…
楽しい想い出のように話していたのが印象に残る。
何が原因で…
何がそうしたかは分からないけど…
たがが外れたかのように朝から晩まで浴びるほど酒を飲むようになり…
もう一人の兄貴のような存在で…
強くて格好良かった彼は…
久々に会った時には別人のようになっていた。
それでも…
俺にとっては幼馴染み。
世間が厄介者扱いしても…
大切な幼馴染み。
実家に帰ったら駆け付けて来てくれて…
一緒に楽しく酒を飲んだ。
昔の面影は無いけど…
幼馴染みは幼馴染み。
どんなに酔っぱらっていても青春の想い出話は尽きない。
一緒に居ると本当に楽しかった。
兄貴が実家に帰って子供達と花火をしていた時…
その花火の音が耳障りで…
酔った勢いで威勢良く文句を言いに来た彼は…
花火をやっていたのが俺の兄貴達と分かった途端に…
青ざめた。
青ざめて酔いも覚めた彼を見て…
お袋は笑ったらしい。
最後に一緒に酒を飲んだのは3年前。
大きい紙パックの焼酎を脇に抱えて…
おちょこに注いで飲む姿は…
滑稽だったけど…
それも…
もう見れない。
そう…
そんな幼馴染みの彼が…
突然…
本当に突然…
亡くなった。
まだ…
本当…
なんだか信じられない。
久々…
本当に久々…
声に出して泣いちゃったよ。
ただ…
親より先に逝くなんて…
本当に親不孝だぜ。
卓士…
ダメだよ。☆