皆さん、今日は安倍元総理が日本の防衛政策に果たした役割と、その姿勢についてお話ししたいと思います。

安倍元総理は、日本の防衛政策において重要な役割を果たしました。彼の取り組みは、古来から日本人が持っていた「自国を守る」という精神を取り戻すことを目指していました。特に、ロシアのウクライナ侵攻を受けて「自国の防衛は自分たちで」という意識が再認識されたことを背景に、安倍元総理は日米同盟の強化や日本の国防力の強化に力を入れました。

第二次政権以降、防衛費は毎年増額され、2020年にはGDP比で2%にまで防衛費を増額すべきだと訴え、核兵器の議論も必要だと提唱しました。

当時の自衛隊の弾薬量は極めて少なく、有事には一週間も持たない状況でした。防衛予算が不足し、装備の購入が困難な状態だったため、安倍元総理は防衛体制の強化を急務と考えました。

また、尖閣諸島防衛のために自衛隊の体制を急速に強化し、陸・海・空の自衛官による首相へのブリーフィングを定例化しました。これまでの慣習を破り、現場の声を直接聞く体制を整えたのです。

総理大臣が最高指揮官であることを理解していなかった民主党の菅首相や、「学べば学ぶほど安全保障の重要性がわかった」と述べた鳩山首相がいた中で、安倍元総理は真に最高指揮官としての覚悟と責任感を持ち続けました。

防衛大学校の卒業式には、自民党の大会出席を優先しながらも、従来の首相が参加しなかった恒例の帽子投げにも列席しました。卒業式の祝辞では、自らの思いを込めて日本の防衛に従事する人々に語りかけました。

安倍晋三首相 平成29年度防衛大卒業式訓示全文
2018.03.20

「平和は人から与えられるものではない。勝ちとるものだ」

本日、伝統ある防衛大学校の卒業式にあたり、これからのわが国の防衛の中枢を担う諸君に心からのお祝いを申し上げます。卒業おめでとう。
 
諸君の誠にりりしく、希望に満ちあふれた姿に接し、自衛隊の最高指揮官として心強く、大変、頼もしく思います。真に国民のための自衛隊たれ。自衛隊創設以来、このすばらしい理念を胸に、先輩たちは今、この瞬間も荒波を恐れず、乱気流を乗り越え、泥にまみれながらも、極度の緊張感に耐え、強い誇りをもって任務を立派に果たしています。
 平和は決して人から与えられるものではありません。われわれの手で勝ちとるものであります。自らの手で自らを守る気概なき国を誰も守ってくれるはずはない。安全保障政策の根幹となるのは、わが国自身の努力に他なりません。そして、わが国の平和の最終的な支えが自衛隊です。平和を求める日本の揺るぎない意志と能力を明確に示すものであります。
 諸君は本日をもって先輩たちの仲間入りをします。この困難な任務につく道を自らの意志で進み、自衛官となる諸君は日本の誇りです。私は諸君の先頭に立って、諸君とともに日本の平和を守り抜く決意であります。
 昨年、北朝鮮は2度にわたりわが国上空を飛び越えるミサイル発射を強行しました。いかなる挑発にも屈することはない。この思いで、24時間、365日、警戒にあたる隊員諸君がいます。海の上ではイージス艦が来る日も来る日も荒波に耐え、大しけの海にもひるまず、最高度の態勢を維持しています。
 PAC3の部隊は弾道ミサイル防衛の最後の砦、その重圧が終わりの見えない緊張を極限にまで高めます。発射の事前察知は極めて難しく、ひとたび発射されれば、わが国まではわずか10分。初動に1秒の遅れも許されません。そうした中、隊員諸君は常に、ミサイル発射直後から、その動きを完全に把握し、国民の安全確保のため、万全の態勢をとってくれました。わが国の危機管理には一分の隙もないことを明確に示してくれたのです。
 北朝鮮は国際社会の制裁をかいくぐって、洋上で船から船への積み替えによる密輸も続けています。護衛艦やP3C哨戒機は広大な周辺海域で闇夜に目をこらし、疑わしい船舶の動向を追い続け、幾度となく違反行為を未然に防いでくれました。自衛隊が収集した情報は国連や関係各国と共有され、国際的なネットワークにより、違反行為の抑止に大きく寄与しています。
 北朝鮮の政策を変えさせる。核・ミサイル開発を放棄させる。このために必要なことは、国際社会が一致団結して北朝鮮が具体的行動をとるまで最大限の圧力をかけていくことです。この確固たる立場は決して揺らぐことはありません。厳しい現実を直視し、困難な状況のもとで士気高く任務を果たす隊員諸君に、この機会に、改めて深甚なる敬意を表したいと思います。
 先ほど国分(良成)学校長からご紹介があったように、本日はホームカミングデーとして昭和50年に防衛大学校を卒業したOBの皆さんもお集まりです。皆さんが任官された当時、自衛隊に対する視線は、いまだ厳しいものがありました。当時の防衛白書にはこう書いてあります。「依然として自衛隊に対する否定的態度も国民の一部に根強く存在している」。皆さんも在職中、心ない批判にさらされたかもしれません。しかし皆さんは、これに屈することなく、立派に責務を果たし、平和な日本を私たちに引き継いでくれました。
 事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂につとめ、もって国民の負託にこたえる。この宣誓の言葉に違うことなく、常に国民のため、黙々と任務に精励してきた皆さんの姿は、多くの国民の目に焼き付いています。今日、実に9割の国民が、自衛隊によい印象を持っています。これは皆さんの努力のたまものでありましょう。内閣総理大臣として心から御礼申し上げます。
 卒業生諸君、そしてご臨席の皆さま、大きな仕事を成し遂げ、本日、懐かしき第二のふるさと、ここ小原台に戻ってこられたOBの皆さんへ心からの感謝と敬意を表し、改めて大きな拍手を送りたいと思います。
 6年前、私は再び総理大臣に就任し、安全保障政策の立て直しを誓いました。わが国として初めてとなる国家安全保障戦略のもと、新たな防衛計画の大綱を策定し、10年間、一貫して削減が続いていた防衛費を増加させていく方針を徹底しました。しかし、日本を取り巻く安全保障環境は当時、われわれが想定したよりも格段に早いスピードで厳しさを増しています。このため、わが国の防衛の指針である防衛計画の大綱について、再び見直すこととしました。
 見直しにあたっては、何よりも現実から目をそらすことなく、真正面から向き合うことが不可欠です。今や、サイバー空間や宇宙空間など、新たな領域で優位性を持つことがわが国の防衛に死活的に重要になっています。もはや陸海空という従来からの区分にとらわれた発想のままでは、あらゆる脅威からこの国を守り抜くことはできない。
 これまで進めてきた南西地域の防衛態勢の強化や弾道ミサイル防衛の強化にとどまらず、サイバー、宇宙といった新たな領域・分野について本格的に取り組んでいく必要があると考えています。専守防衛は当然の前提としながら、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めてまいります。
 年々、大規模化する自然災害の現場にも必ず諸君の先輩たちの姿があります。昨年7月の九州北部豪雨では道路が寸断され、河川が決壊する中、ヘリコプターによる空からの救助が、500名あまりの命を救いました。断続的な豪雨が続く深夜に、山奥の民家から救助のSOSがだされました。
 夜は視界不良のうえ、木や電柱に接触すれば墜落の危険もある。そうした中で、隊員諸君はヘリの翼と木々の距離を、わずか2メートルに保ちながらホバリング降下を続け、住民を救い出しました。裏山では土砂崩れが続き、いつ家が飲み込まれてもおかしくない状況だった。救助のヘリの中で住民の一人は、涙を流しながらこういったそうであります。来てくれると信じていました。
 すべては国民のため、任務を全力で全うし、黙々と汗を流す自衛隊員の姿は日本国民の誇りであります。諸君には常に国民のそばにあって、安心と勇気を与える存在になってもらいたいと思います。
 日本海からはるか1万2,000キロのかなた、海上交通の要衝、アフリカ・ソマリア沖アデン湾、近年、民間船舶が襲撃され、乗っ取られる事案が発生しています。ある船長からの手紙を紹介したいと思います。
 イラン・イラク戦争や湾岸戦争の時代、日本船舶には自衛隊の護衛がなく、船長は当時、乗組員として航行したときの状況を、こう語っています。
 他の日本船が被害を受けたとのニュースを聞き、とても心細く、恐ろしく、無線機を握る私の手は震えていました。あれから30年、船長となって臨んだ航海では、不審ボートの接近を受け、船内には緊張が走りました。しかし、今回は自衛隊がいる。護衛艦おおなみのエスコートに、不審船は追尾をあきらめました。自国による護衛ほど心強く、頼りになるものはありません。
 船長はこのように続けています。私たちの命が守られていることを実感しました。おおなみによる護衛の後、別れ際には、乗組員が目を潤ませながら、タオルやヘルメットを大きく振っていたそうであります。世界平和と国際貢献に活躍する自衛隊の姿をこのようにたたえ、手紙は締めくくられていました。日本の誇りです。
 今、この瞬間もソマリア沖アデン湾で、ジブチで、そして南スーダンで、過酷な環境をものともせず、わが国の顔として立派に任務を遂行する自衛隊の諸君がいます。諸君にはかけがえのない平和の守り神として、精強なる自衛隊を作り上げてほしいと願います。
 本日ここには、カンボジア、インドネシア、ラオス、モンゴル、ミャンマー、フィリピン、タイ、東ティモール、ベトナムからの留学生の皆さんもいます。ラオスからは初めて卒業生を送り出すことになります。
 留学生の諸君、語学の壁もあったでしょう。さまざまな困難を乗り越え、立派に卒業した諸君は母国の誇りであり、わが国の誇りであります。ここ防衛大学校で学んだことは、そのすべてを母国のために使ってほしい。皆さんの帰りを待つ国民のために生かしてもらいたい。
 すべては国民のため、この理念は共通です。皆さんは日本のかけがえのない友人であります。皆さんの国に戻っても、仲間と互いに切磋琢磨し、励まし合った日々を心に刻み、両国の絆をつむぐ中心的な役割を果たしていってもらうことを願っています。
 本年は明治維新から150年の節目にあたります。先人たちは世界に目を向け、日本の良さと伝統を失うことなく、優れた知識、技術、制度を吸収しながら、近代国家への変革へと歩み出しました。諸君は将来、わが国の防衛を中枢で支える立場につきます。世界を曇りのない眼で見つめ、新たな技術への関心を旺盛にし、既存の思考の枠組みを超えようとする柔軟な発想で今後、ふりかかる課題に取り組んでいってもらいたい。
 礎ここに築かん、新たなる日の本のため。わが国の未来は不断の努力によって作られるものであります。日本の平和と繁栄はひとえに諸君一人一人の双肩にかかっている。
 ご家族の皆さま、大切なお子さまを隊員として送り出していただいたことに、自衛隊の最高指揮官として心から感謝申し上げます。彼らの、凜々しくも頼もしい姿をどうかごらんください。これもひとえに、すばらしいご家族の背中をしっかりとみて育ってきた、その素地があったからこそ今の彼らがあります。本当にありがとうございます。大切なご家族をお預かりする以上、しっかりと任務を遂行できるよう万全を期すことをお約束いたします。
 最後になりましたが、学生の教育に尽力されてこられた国分学校長はじめ、教職員の方々に敬意を表するとともに、平素から防衛大学校にご理解とご協力をいただいているご来賓、ご家族の皆さまに心より感謝申し上げます。卒業生諸君の今後ますますの活躍、そして防衛大学校の一層の発展を祈念して、私の訓示といたします。
 平成30年3月18日、自衛隊最高指揮官、内閣総理大臣、安倍


彼は防衛大学校の卒業式で、従来の首相が時間の都合で参加しなかった恒例の帽子投げにも列席し、卒業生たちの誇りとする姿を見守りました。また、自衛官に対しても従来より一等級高い勲章を授与し、名誉を尊重する姿勢を示しました。

安倍元総理の防衛政策は、日本だけでなく国際的な影響力も強化しました。彼は、旧武器輸出三原則を緩和し、日本の防衛産業の発展と共に、輸出国との同盟関係の強化も図りました。特にトランプ政権の国防戦略策定の中心人物であったエルブリッジ・コルビー元国防副次官補は、「日本は徐々にではなく、即座にベッドから飛び起きなければならない。防衛費は3倍にしなければならない」と警鐘を鳴らしました。

安倍元総理は、大局的な外交戦略として、クアッド(日米豪印)や国内での防衛拡充を進め、日本の国防の深化を図りました。オーストラリア、インド、フィリピン、イギリスとの防衛協力も大きく進化させました。それまでオマケのように扱われていた日本が、国際社会において中心軸となり、アメリカの政界や軍からも重要な役割を期待されるようになったのです。
しかし、現政権においては、防衛費に関する政策が大きく変わってしまいました。岸田政権は、防衛費を含む様々な予算をGDP比2%に含めてしまい、安倍元総理が目指した純粋な防衛費増額の目標が改悪された形になっています。財務省の影響を受け、防衛費が他の予算と混ぜ合わされることで、日本が自国を守る力が再び低下する恐れがあるのです。
最後に、安倍元総理が築いたレガシーを守り、さらに発展させる政治家が今後現れることを切に願います。彼が示した「国を守る」という強い意志を忘れず、私たち国民もその精神を受け継いでいく必要があるのではないでしょうか。