感染研がエアロゾル感染認める 飛沫、接触の報告書から一転


国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=同研究所提供
 

新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所(感染研)は28日、ウイルスを含んだ

 

空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。

 

感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫(ひまつ)感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

 

 

 世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)などは昨春、主な感染経路としてエアロゾル感染と飛沫感染を挙げ、接触感染は起きにくいとする見解を示した。

 

しかし、感染研は今年1月13日に公表したオミクロン株についての報告書で、「現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と接触感染と考えられた」と記し、WHOなどと異なる説明をしていた。

 感染研は今月28日に公表した文書で、

主な感染経路として、

エアロゾル感染

▽飛沫感染

▽接触感染――の三つを紹介。「感染者が呼吸をすると粒子が放出され、大きな声を出したり、歌ったりすると、放出される粒子の量が増える。感染者との距離が近い(約1~2メートル以内)ほど感染する可能性が高く、距離が遠い(約1~2メートル以上)ほど感染する可能性は低くなる」と説明した。

 公開質問状をまとめた東北大の本堂毅准教授(科学技術社会論)は、エアロゾル感染を感染経路に位置づけた点を評価しつつも「世界では接触感染はまれと言われていることをはっきり国民に周知しなければ効果的な対策は広がらない」と指摘。

 

愛知県立大の清水宣明教授(感染制御学)も「ウイルスを含むエアロゾルで空間が汚染されているから換気が必要ということをしっかり伝えることが重要だ」と訴えている。【林奈緒美】

 

https://www.japan-who.or.jp/wp-content/uploads/2020/06/200513kgh8_1.pdf