30歳OL 高橋美帆の婚活物語
弟の結婚に焦った美帆が婚活に奮闘します。
周りにイイ男っていないし。
マッチングアプリって危ないよね。
結婚相談所ってどうなの?
出会いを探して右往左往。

完全にフィクションの話になります。

 

でも、実際にありそうなエピソードを満載して、日々婚活に奮闘している方々に共感してもらえるようなお話にしていきたいと思っております。

 

初めから読んでくださる方はこちら↓

 

 

私の婚活物語

 

「出会いはネットサークルで?」

【2】

 

週明けの月曜の朝、ぐっと握りこぶしに力を入れるようにして家を出た。結婚へ向けての出会いの為に、気合を入れる。
とりあえず、今日は会社に来るまでの間、周りの人を観察してみた。
どこかに私の結婚相手はいないかと。
私を惹きつけるような素敵な男性がいないかと。

――いなかった。

そりゃあ、そうよね。たった一日の通勤でそんな簡単に見つかるものではない。だいたい、今までずっと同じ時間の電車で通勤していて出会っていないんだから。
可能性は限りなく低い。

じゃあ、会社での出会い?
社内かあ……自分の机に向かいながら、キョロキョロと左右を見回してみた。
いつもの面々。変わりなし。新しい発見なし。
まるで、何もないことを確認するかのようにして、席に着いた。
そうねえ、会社での出会いは期待できそうもないかな。
佐野くんのような人に引っかかってしまったら、大変だしね。あっという間に数年を無駄にしてしまう。

私が自分の鞄から書類を取り出していると、目の前に座っている磯部さんと目が合った。
「あ、おはようございます」
慌てて挨拶をする。
「おはよう。高橋さん」
磯部さんがなぜか慈愛に満ちたような表情を私に向けている。
それって同情?え?同情されてる?
確かにね、磯部さんの家庭は上手くいってそう。共働きで忙しそうだけど。子供にも恵まれて、なんだかんだ文句を言いつつも幸せに暮らしているみたいだ。
私は独身の可哀そうな女の人なのかしら。佐野くんの件も会ったし。
ああ、でも、私の結婚相手の選択肢に、MRは無しだわ。
どんなに、格好良くて、優しくて、性格が良さそうで、高収入でも、なんとなく信用できない。
――まったく、佐野くんのせいでMRの印象が悪くなってしまっている。
まあ、それを払しょくできるほどの素敵な人に出会えたら、それはそれでいいんだけど。
そう思いながら、ぐるっとそのフロアにいるMRを見回した。

MRではなくて、開発や学術なんかどうなんだろう?
真面目?で高学歴。狙いどころかもしれない。
そうだ。ちょっと、いいんじゃない?うちの会社、悪くないし。
ぱあっと、頭の中に日差しが降りそそいだ。
よし、昼休みに何か仕事にかこつけて、学術のフロアに行ってみよう。
気合を入れるように握りこぶしを作るとガッツポーズをした。
向かいの席の磯部さんが、ちょっと驚いて不思議そうに私を見ていた。

午後の業務が始まる時間ギリギリに自分の席に戻ると、がくっと机に突っ伏した。
「はあああ」
溜息が自然と出てしまう。
行ってみた。昼休みに2階にある学術の部署を覗いてみた。
いやそう。仕事ができそうな人たちばかりだった。とっても素敵な人もいた。
でも、ことごとく既婚者。律儀に結婚指輪をしている人ばかり。
ただし、明らかにこちらから願い下げたい感じの人を除いて。

もう、会社では無理なのかな。
そんなあきらめが頭の中を支配し始める。

「どうしたの?」
磯部さんがどうしても好奇心を隠し切れない様子で話かけてきた。私のいつもと違う行動に、興味津々なのだろう。

「あ、どうもしないです」
「なに?佐野くんの結婚ショックがじわじわと?」
「違いますよ」
「冗談、冗談。でも、どう?高橋さんは結婚しない主義?」
「え?いえ。そんなことないですけど」
「ほら、今は独身主義とか言って、悠々自適に結婚しないで自分の生活を満喫する人っているじゃない」
「はあ、うん。そうですね」
「高橋さんは結婚したい派?」
これって、セクハラにならなんだろうか?いや、モラハラ?
「ええ。まあ、そうです」
まあ、磯部さんにそういうことを言ってもな。あまりにそんなハラスメントばっかり考えてると会話ができないのも事実だし。
「彼氏とかいるんでしょ?」
いや、やっぱりセクハラ。
「いえ、今、いないですよ」
「え?そうなの?」
本当に驚いたように目を見開いている。
「高橋さん、美人だし。絶対いると思ってた」
「褒めても何も出ないですよ」
「いや、本当に」
そう言って、磯部さんが拳を顎に当てて、考え込むようにする。
「磯部さん、誰かいい人いないですか?」
深刻そうな様子に思わずちょっとおチャラけて言ってみた。
「え?いい人?」
「そうですよ。誰か素敵な人紹介してくださいよ」
「ええっと、そうねえ」
ううーんと唸るようにしながら、さらに頭を抱えるようにしている。
「なかなか難しいわよね。紹介するって言うと、仕事も人柄も良い人じゃないといけないじゃない?」
「あ、うん。もちろんそうですよ」
笑いを取るように、目に力を入れて磯部さんを見る。
「ううーん。高橋さんだったら、引く手あまたじゃないの?」
「そんなはずある訳ないじゃないですか」
「そうかなあ」
「そうですよ。私、いくつだと思ってるんですか?」
「いくつ?」
「30歳です」
それを聞いて、磯部さんが微妙に眉間に皺を寄せた。
ああ、やっぱり、30っていうのはけっこうな歳だと思われるんだな。
「30かあ。そうねえ。いろいろ考えると急いでもいいかもねえ。けっこう同期は結婚している人も多いでしょう」
「そうなんです。学生時代から付き合っていた人なんかは、早く結婚しますから」
「ふうん」
「それに、就職したての年を逃すと、なかなか彼氏ってできないんですよ」
「そうなの?」
「出会いがなかなか無いじゃないですか」
「そうねえ」
その時、あっというように磯部さんが瞳を輝かせた。
「ねえ、ちょっと聞いたんだけど、マッチングアプリっていうの?ああいうのはどうなの?」
「マッチングアプリですか」
「そうそう、結構うまくいく人もいるっていうじゃない?知り合いのお嬢さんもそれでお婿さんを見つけてたわよ」
「そうなんですか」
たしかに、最近、マッチングアプリで彼氏彼女を見つけるって聞くけど。
それってなんか、危なくない?ちょっと怖いんだけど。
騙されたりするかもしれないし。
用心してやれば大丈夫なのかな。
「ま、私も誰かいないか、探してみるわ」
「ありがとうございます」
磯部さんは子持ちだから会社関係の人だけでなく、ママ友繋がりでもツテがあるかもしれない。
「よろしくお願いします」
とりあえず、頼んでおこう。

それにしても、マッチングアプリかあ。
どうなんだろう。

~ to be continued ~
 

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