30歳OL 高橋美帆の婚活物語
弟の結婚に焦った美帆が婚活に奮闘します。
周りにイイ男っていないし。
マッチングアプリって危ないよね。
結婚相談所ってどうなの?
出会いを探して右往左往。
完全にフィクションの話になります。
でも、実際にありそうなエピソードを満載して、日々婚活に奮闘している方々に共感してもらえるようなお話にしていきたいと思っております。
初めから読んでくださる方はこちら↓
私の婚活物語
「イケメン佐野くんのお誘い」
【3】
相変わらず爽やかに微笑む佐野くんの顔から視線を外しながら、不自然に瞬きを繰り返す私。
だって、どんな顔したらいいか分からないじゃない。
「そ、そうなんだ?」
そんな変な返事しかできなかった。
それからも、うるさい動悸を押さえつつ、お目当てのレストランへ向かった。
佐野くんお勧めのビストロはオーナーが一人で切り盛りしているとあって、こじんまりしているけれども、とても雰囲気がある素敵なお店だった。
どことなく、フランスの片田舎にある洒落たレストランを思い起こさせる、木のぬくもりを活かした造りになっていた。
店に入ると、オープンキッチンで調理をしていただろうオーナーが顔を上げて私たちを見た。
「いらっしゃい」
「こんばんは」
佐野さんが片手を上げる。
「ああ、いつもどうも」
肩までありそうな髪を後ろで束ねた比較的若いシェフ兼オーナーだった。三十歳半ばくらいだろうか。
こんな若いのに、自分のお店を持てるなんて凄い。
佐野さんは勝手知ったると言うように、空いていた窓際のテーブル席に向かう。
「ここいい?」
「どうぞ」
オーナーの返事を待って、私に奥に座るように指し示す。
「常連なのね」
座りながら、何気なく言った。
「うん、まあね」
サラッとそう言って、佐野くんが私の向かいに座った。
いつも誰と来てるんだろう?
オーナーはきっと知ってるわね。私を見ても驚きもしなかった。
そうね、毎回違う女性を連れているのかもしれないな。
初めに頼んだ佐野くんお勧めの軽いワインはとても飲みやすくて、美味しかった。
私はもともと食べ物の好き嫌いはほとんどない。佐野くんが私の好みを聞きつつ、適当に頼んでくれる。
「ね、美味しいだろ?」
「うん。すごく美味しい。本当のフランスのビストロにいるみたい」
「高橋さん。フランス行ったことあるの?」
「うん。何回か」
「へえ、すごい」
「佐野くんは?海外旅行とかするの?」
そんな、まあ、確信に触れないけれど、お互いの趣味の話題で話は弾んだ。
あっと言う間に2時間ほどが経っていた。
もう、夜の11時近い。
このままずっといる訳にもいかないし。このまま……いや、だめでしょ。
ただの同僚だし。
楽しいな。楽しいと、時間が過ぎるのって早いんだ。久しぶりにそう思った。
でも、ああ、そうだ。
肝心の話を聞いていない。
「そういえば、佐野くん。なんか私に話したいことあるって言ってなかった?」
思わず気になっていたことが口をついて出ていた。
「え?何だっけ?」
出た、プレイボーイってこんなもん?
「ほら、戸越さんの奥さんがほんわかした人だったとか言ってたじゃない?」
「うん」
「佐野くんもそんな人がいいとかなんとか」
「ああ」
そうよ。思い出した?
「ああ、そうそう。いや、違う。俺はぽてっとした人じゃなく」
ぽてっとしたって……ちょっと失礼じゃない?普段だったら、絶対女性に対してそんなこと言わないだろうけど。
今はお酒も回って、口が軽くなっているのかも。
「そんなに太っていたわけじゃないんでしょ?」
「ああ、うん。そんなでもない。ちょっとふっくらって感じ。そうそう、可愛い人だったんだよ」
ああ、フォローしてる。
「で、佐野くんはどんな人がいいの?」
「俺はね、外見はまあ、なんでもいいんだけど」
それは嘘でしょ。外見何でもいい人がぽてっととか言わないでしょ。
「うん?」
一応、先を促してみた。
「性格は、大人しい人がいいかなあ。優しくて気がついて」
「はあ」
控えめな人がいいんだな。今どき、そんな人がいるかしら?
「美人で派手な人は苦手なの?」
「そうだな、あんまり強い女性はちょっとね」
「そうなんだ」
「男はみんなそうじゃないかな?」
「でも、最近は引っ張ってくれる女性がいいって男の人も多いよね」
「うーん、そんなにいるかなあ。少なくとも俺は遠慮したいな」
「ふーん」
で?私に聞きたいことって何?
私がそれっきり黙っていると、佐野さんがポツポツと話し出した。
「だからさ、高橋さんみたいな人はモテると思うんだ」
「ん?それってどういう意味?」
「高橋さんは大人しそうだし、気が利くし」
そう言われて、私は慌てて自分の顔の前で両手を振った。
「いや、私そんなに大人しくないし、気も利かないから」
「そんなことないよ。物静かなのに、ちゃんと俺を補佐してくれてるし」
「それは、仕事だから」
そう言うと、佐野くんはハタッと私と視線を合わせた。
え?なに?
「そうなんだ。俺……高橋さんは、なんかちょっと特別に俺に親切にしてくれてるように思ってた」
はい?何ですかそれ?何アピール?
はあ、モテる男は違うね。
「はは、うぬぼれすぎ」
ちょっとおどけるようにして、そう返した。
「そっかー。俺の勘違いか」
ちょっと酔っぱらっているような佐野くんは、少し俯いて苦笑していた。
「私、もう、帰らないと。終電もなくなっちゃう」
ふと、時計を見ると、12時近くになっていた。
お店も12時までだ。
慌てる私を見て、観念したように佐野くんがオーナーを呼んで会計を済ませている。
一応、私も払うと言ったけど、佐野くんがごちそうしてくれた。
「次回は奢ってもらうから」
そんなことを言っていた。
本当に次回はあるのかな?
~ to be continued ~
実は私、夫と二人で結婚相談所を開業しているんです。
元MRと薬剤師による心身のお悩みに寄り添う結婚相談所です。
例えば、口臭、脇汗、PMS、喫煙などなど。
もちろん、医療従事者の勤務環境も心得ています。
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