「300(スリーハンドレッド)」 | やまたくの音吐朗々Diary

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300

公開中の映画「300(スリーハンドレッド)」を観賞。

監督・脚本はザック・スナイダー。製作総指揮・原作はフランク・ミラ。出演はジェラルド・バトラー、レナ・ヘディー、デイビッド・ウェナム、ドミニク・ウェスト、ビンセント・リーガンほか。

紀元前480年。スパルタ王レオニダスのもとに、各地を侵攻し続けているペルシア帝国の使者がやって来て、「土地と水を差し出さなければ国を滅ぼす」と最後通告。が、レオニダスは、その使者を殺めると、ペルシア軍を迎え撃つ決意を固める。ペルシア軍100万の大軍に対して、スパルタの兵士はわずか300人。だが、幼少のころから鍛え抜かれた選りすぐりの精鋭300人は、伝説的な戦いをくり広げるのだった……。

全編にわたり、戦闘シーンがくり返され、血しぶきや肉片が飛び散るこの映画。(私を含め)血なまぐさい映画が得意でない方のお口には合わないかと思いきや……いやいやどうして面白い!

スパルタの男たちは、生まれると同時に戦うことだけのために生きることを強いられる。生まれながらに体の弱い者は殺され、男は幼少期から戦うための戦術を身に付けさせられる。過酷な軍事訓練の最後にはひとりで荒野に投げ出され、見事にサバイブした者だけが男として認められる。死をも恐れない精鋭300人の表情には、彼らが幼少期から培ってきた自信と誇りが刻まれている。

基本は分かりやすいヒーロー物語ながら、それでも、300人の兵士の信念の固さとまっすぐさには、心揺さぶられるものがある。国や家族を守るためには命さえ惜しまない覚悟——そんなスパルタの兵士の勇敢さが本作の魅力のひとつである。

そしてふたつ目にして最大の魅力は——映像と演出にある。

誇りに満ちた300人の活躍ぶりを、この映画は彩度を落としたセピア調の映像でつづる。セピア調のスクリーンのなかでは、スパルタの兵士がまとうマントの赤と、血しぶきの赤が、(くすんではいるが)印象的な美しさを残す。戦争や苦痛の象徴である血を、礼賛や批判としてではなく、ひとつの映像美として表現している。

300人の屈強な男たちの肉体も見逃せない。隆々と盛り上がる筋肉の美しさは、ギリシア彫刻のそれであり、さらに、圧倒的な戦術能力をもつスパルタの兵士300人が、一心同体となった陣形により100万の大軍をけ散らすサマも、これまた美しく、痛快だ。

また、戦闘シーンに多投されるCGとスロー&クイックモーションを組み合わせた特殊画像は、斬新かつセンス満点! 戦闘シーンのリアリティは、いわゆる“グロさ”ではなく、あくまでもアニメ的な路線で表現しているため、飛び散る血しぶきや肉片に、不快さや恐怖を感じることはない。確信犯的とも言える過剰演出は、高度なショーマンシップととらえるべきだろう。

そうしたショーマンシップは、人間離れした(300人以外の)キャラクターにも表れている。とくに、『北斗の拳』に登場するキャラクターを、さらに見た目不格好&キョーレツにした「なんだコイツ!」的な輩が次々と登場する中盤以降の旺盛なサービス精神には感服(思わず笑ってしまう!)。好き嫌いはかなりはっきり分かれそうだが、一度ツボにハマると抜け出しがたい魅力がある。

屈強な男たちの血しぶき飛び散る闘いの物語を、CGを駆使しつつビジュアル重視で描いた映画、それが「300(スリーハンドレッド)」。ヒロイックかつ単純明快(でも楽しめる)な物語は、おそらく製作者側の狙い通り。その分、観賞者は、スクリーンに映し出されるクリエイティブかつユニークな映像を安心して楽しむことができる。

古代史というモチーフをガチガチに描くのではなく、エンターテインメントというフィルターを通すことで、大きな戦果を手にしたこの痛快作は、“男性的な強さとは何か?”を教えてくれるという点においても評価に値する1本である。

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