家村和幸編著 並木書房
闘戦経
武士道精神の原点を読み解く

九百年前に書かれた兵法書『闘戦経』。

孫子と表裏をなす純日本の兵法書の全訳である。

著者日く
『孫子』は優れた戦いの理論書であり、古くから日本の武将の用兵思想や統帥に多大な影響を与えてきました。

しかし、文と武を切り離し、全ての戦いを「詭道」として権謀術数を奨励する古代シナの兵法書だけでは、日本人本来の精神的な崇高さや美徳を損なう虞れがありました。

そこで、これを補うため、日本古来の「武」の知恵と「和」の精神に基づく「文武一元」を説く『闘戦経』が生み出されたのです-と。

日本の兵法、戦略戦術は近代以前はシナの『孫子』の影響を受け、多くの武士は模範としてきた。

明治以後の武人は、クラウゼヴィッツの『戦争論』から多くの影響を受けてきたが、日本には日本の風土に根ざした思想と兵法があったのだ。

シナでは政治と軍事は別ものと考え、別々の学問として発展してきたが、『闘戦経』は文武一元論である。

後半では、『孫子』と『闘戦経』を学んだ唯一の武将として楠木正成の用兵と戦闘を解説しながら、武士道精神から国の在り方にまで話は及び、兵法書の域を超える兵法書なのである。

日本に伝わる武将の生き様は第一級の軍事史であり、日本の精神風土に培われた『闘戦経』こそが、混沌とした日本を救済する人生訓溢れる指南書でもある。
評・鈴木信行維新政党・新風代表