京都市右京区のフォトジャーナリスト村山康文さん(42)が11月12日から、ベトナム戦争の傷跡を伝える写真展を韓国・ソウルで開く。米国に次ぐ延べ32万人を派兵し、特需によって経済発展の礎を築いた韓国では近年、同戦争の風化が進んでいるという。村山さんは「ベトナム戦争は終わっていない。そう思わせる現実を韓国の若者に伝えたい」としている。

 村山さんは14年間で32回、ベトナムに渡航し、枯葉剤の影響や格差社会などベトナム戦争の傷跡を写真に収めてきた。取材で韓国兵とベトナム女性の間に生まれ、差別される子ども「ライタイハン」の問題に突き当たり、戦争の記憶が薄れつつある韓国で写真展を計画した。

 韓国・ソウルの繁華街にある市営ギャラリーに飛び込みで企画を持ち込み、「若者が知らない事実を伝えようとする試みが興味深い」と館長の賛意を得た。会場費14万円もギャラリー側が負担を申し出た。

 写真展では、枯葉剤の影響で顔が変形した子どもや地雷で脚を失ったお年寄り、ライタイハンの今など、60点でベトナムの今を紹介する。強力に派兵を進めた当時の朴正煕(パクチョンヒ)大統領の墓に参る老夫婦の写真も展示し、韓国にとってのベトナム戦争の意味を問いかける。

 写真展は20日まで。村山さんは「歴史教科書で教えない事実を若い韓国人に伝えたい」と話している。

【 2011年10月28日 15時41分 】京都新聞