近藤勇 直筆の「英雄論」初公開 東山・霊山歴史館

新選組局長として有名な幕末の剣豪、近藤勇が「英雄論」を記した直筆の漢詩が、京都市東山区の霊山歴史館で初公開され、注目を集めている。「まことに英雄の心中を理解できるならば、英雄ではないことが英雄である」との内容が達筆で書かれており、読書家でもあった近藤の実直な人柄が伝わる。

■京で発見 商家へ借金の返礼?

 縦136センチ、横60センチの紙に七言絶句の詩形で書かれ、掛け軸に仕立てられている。広島県の医師が京都市内の古美術店で見つけ、霊山歴史館に鑑定を依頼。木村幸比古学芸課長は、数点見つかっている近藤の他の漢詩と筆跡や落款が酷似することから真筆とした。

 漢詩は、前半で「人に知られず暮らすべき。議論するばかりの俗人と同じではいけない」と姿勢を論じ、後半は「英雄」の文字を3度繰り返している。詩の脇に添えられた「有感作」の言葉から本心を表現した詩とみられ、「剣客士 近藤書」と記されていた。

 木村学芸課長は「目立とうとせず、行動する生きざまの大切さを説くことで、議論に熱心だった当時の倒幕派の志士を皮肉ったのではないか」とみる。

 同館によると、近藤が文久3(1863)年に京都入りし、市中警備を担う新選組の拝命を受けるまでの間に、給金がなく、商家から軍資金を借りていた時期があり、今回の漢詩も借金の返礼として書かれた可能性があるという。

 特別展「龍馬と土佐の衝撃」(12月26日まで)に合わせて公開する。土佐勤王党盟主の武市半平太が切腹時に使った短刀や、その時の血痕が残る襦袢(じゅばん)など幕末の史料約100点も並んでいる。

 月曜休館。霊山歴史館TEL075(531)3773。


【 2011年10月27日 12時24分 】京都新聞