「幹部は辞職しろ」「おれたちの納めた税金を返せ」--。5年間で約30億円にも上る不正経理が発覚した県庁には10日、県民から怒りや苦言の電話、メールが500件以上寄せられ、職員たちは対応に忙殺された。

 

 不正の調査を担当する行政改革推進室には、県民から抗議の電話がひっきりなしにかかり、職員らは事情説明や謝罪に追われた。不正経理額が突出して高く、逮捕者も出した農林水産部(支出ベース7億1600万円)と県土整備部(同8億6300万円)を含め、個別の課に直接電話がかかってくるケースもあったという。また、県庁前の交差点には右翼団体の街宣車が乗り付け、終日拡声機で批判し、県職員がうつむき加減で足早に通り過ぎる姿が見られた。

 

 森田健作知事は10日も記者団の取材に応じた。「聞いたところでは『税金返せ』などという大変なおしかりの内容だった。本当に申し訳ありません」と改めて謝罪。9日の記者会見では時に声を荒らげて職員への怒りをこらえきれなかった森田知事だが、苦情殺到の事態に終始、沈痛な表情だった。

◇ 国庫補助事業の多い2部で突出

 今回の内部調査で発覚した不正経理額は、推計値も加えて総額29億7914万円。これを部局ごとに比較すると、国庫補助事業の多い県土整備部と農林水産部で突出して多い。この2部で全体の約57%を占めている。県が独自の基準で定めた「使途不明金」(計1億1168万円)でも、両部が飛び抜けている。

 

 一方、健康福祉部、教育庁、総務部は2億円台で並んでいる。元職員3人の公金横領事件を手掛けた県警本部でも、1億4048万円の不正が発覚した。


◇ 県庁部局ごとの不正経理額と使途不明額


部局名           不正総額    使途不明額

総合企画部       6008万円     151万円

総務部        2億3603万円     941万円

健康福祉部    2億9219万円      58万円

環境生活部       7370万円      14万円

商工労働部       6786万円     303万円

農林水産部    7億4053万円    3413万円

県土整備部    9億4721万円    5774万円

教育庁       2億7332万円     191万円

行政委員会など     416万円       0

水道局         3348万円       0

企業庁          1693万円       0

病院局          9312万円     321万円

警察本部      1億4048万円       0

合計       29億7914万円  1億1168万円


<毎日新聞>