無料化するクラウドの世界、その理由と注意点

http://blog.ameba.jp/ucs/entry/srventryinsertinput.do

2010年03月30日 16時00分 更新[大野隆司(ローランド・ベルガー),ITmedia]の記事。

<以下、私個人が勝手に解説している内容です。間違っているなら気軽にツッコミしてね。>

ザックリ書きますと、クラウド・コンピューティングの「「絶え間ない機能のバージョンアップ」「データセンターの堅牢さ」「簡単な導入作業」などは、ベンダーが考えているほど、利用者には訴求しない」何故なら全てのクラウド業者が、同様のサービスを売りにするから同サービスそのものに訴求効果がなくなり、コモディティ化が起こり、クラウドサービスは価格競争に入り、無料化していくだろうとの内容。

「コモディティ化」って何?って方は、以下参照。
 ↓
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/commoditize.html

コモディティ化と言うのを簡単に言うと「どの会社のものを買っても同じ」という状態。

今回の記事の言わんとするところは、上記のように「絶え間ない機能のバージョンアップ」「データセンターの堅牢さ」「簡単な導入作業」などは、クラウド業者が皆が訴えて営業しているから、価格競争で、無料になっていくでしょうとの話です。
※その他にも様々な要因はあるとも書いていますが。

これは、非常に鋭い視点なのですが、一部、その差別化の元になるのがどこも一緒ならば、そうなのでしょうが、実際は、少しづつ、その質に違いがあるのだから、無料化サービスも出て来てはいるだろうけど、言うほどの内容ではないと思う。

特に、「データセンターの堅牢さ」に関しては、場所の問題などやや考慮されているのかな?と思えるところもある。

例えば、日本企業で財務的なデータを海外DC(データセンター)と日本国内のDC(データセンター)のどちらに預けたいか?と回答を求めると多くの企業が日本国内のDCを選択すると思われる。
当然、その判断には、値段が最優先で来るが、同価格もしくは、適正価格での日本国内DCとしての利用値段で多少高いとした場合、ほぼ間違いなく日本国内のDCを選択するのではないかと思える。
これは、日本国内地理的安心感と法的適用性で日本企業の場合、国内DCの方を採用した際のリスクが海外より小さいと言う安心感があるからだ。
堅固性にしても変わらないといくら言われても、個人での使用とは違う訳であるからやはり日本国内のDCの方が高いと思うに違いない。

この点は、日本人だけではない身近にあることへの安心感の心理的要素もあるので、DCの差別化では十分に発揮されるのではなかろうか?
そうなると無料化というのは地理的要素ですでにあり、更に付帯価値を付ける事で十分にクラウド業者は他との強い差別化を計ることが可能になる。

また、「簡単な導入作業」も様々なサービス提供の仕方によって十分に差別化が可能で、そもそも企業にクラウドサービスを提供するには、それなりのコンサル的要素とロードマップを考えなくてはならず、導入までの分析と定着支援をサービスの一貫として行うならば、十分にそのサービスは差別化され、質の違いにより無料化は避けられる。

コモディティ化による価格の低下は、この場合、漫然と店頭売りを行っているような場合に発生するのではないか。
実際は、そのトータル的サービスをどう組み立てるかでクラウド業者の力量が問われる訳で、何でもかんでも安ければ良いと言うものではないのは、ユーザーも十分に承知している。
実際、安すぎるとそのセキュアな部分で不安も出てくる訳で、単純な電化製品などならばコモディティ化で選択は価格競争になり得る事もあるだろうが、ITサービスの場合は、「顧客の求める結果を出す!」と考えるならば、サービス形態は無数に存在しうるものだし、その質も十分に適正価格で提供できるはずである。

要は、コモディティ化になりうるのは、顧客の求めるサービス提供しえないクラウド業者は、価格競争に走り、安売り合戦に突入し、記事の最後に書かれている企業継続の問題にまで発展すると言える。

企業継続の問題に関しては、クラウドだから起こりうる訳でもなく、どの企業でも起きうるものである。クラウド業者=コモディティ化になる=無料化だから安全性に問題ありはやや短絡的な感じも見受けられる。

また、無料化にはそれなりの戦略があり、企業内での収益手法があるのだからその収益手法を個別に検証せずして、一般論的に無料化=企業継続の危険と言うのは、やや乱暴な言い回しにも思える。
※記事では、簡素に触れてはいるが一般論化しているので、説得性に掛ける。

最後に、記事の全般的な警鐘はクラウド業者は、もちろん開発者やIT関係者は耳を貸す必要はある。
コモディティ化の要因は、惰性的なサービス提供に事を発するのだから、それを打破しうるサービスとは何なのかを考えることを放棄した時点から始まるのだと意識を持たなくてはいけないからだ。